【音食同源】 第3回:ミックスナッツとミック・ジャガー「Let's Work」
週の始まり月曜日、さあ仕事だ仕事、と言ってみたところでこの寒さじゃやる気になりません。とはいえ、僕はフリーランスで出社の必要もないので取材がない限りは部屋でぬくぬくとしながらこうしてパソコンに向かっているわけで、どなた様にというわけでもなくなんだか申し訳ない気分にもなりつつも、地道に仕事しております。
寒い日にこそ身体を動かさなければと思うのですが、せいぜい椅子に腰かけたまま両足を上げて曲げ伸ばしする運動を10回する程度。ちょっくら外に出てランニングでもしてくっか、とはなりません。ご飯を食べに外に出るのもおっくうなので、まとめ買いしておいた「ミックスナッツお徳用サイズ 食塩無添加」をひたすらパクパクしていたのですが、これが美味い。いつもは酒のつまみにしているのであんまり考えてなかったものの、よく考えたらこれはダイエットに良いのかもしれない。冬の寒い時期は体を動かすかわりに食生活で健康を目指せば良いのではないか。また、最近カルディコーヒーやらスーパーやらで糖質を抑えた「ロカボナッツ」なる黄金比率のミックスナッツが売られているのを見ると、ますます「動かずしてダイエットする」ことを考えてしまいます。
そんなことを思っているうちに、ふと「ロック界イチ健康な人、スタイルが良い人は誰か?」という考えに至りました。そして真っ先に浮かんだのが、ミック・ジャガー。同時に、ザ・ローリング・ストーンズ「Start Me Up」のMVが頭に浮かんできました。キースの鳴らすイントロの音と共に、前傾姿勢から上半身を起こし両手両足を広げるミック・ジャガー。「英国の体操おじさん」と呼びたくなるこのMVで、ラジオ体操のごとく手足を動かし、右、左、と顔を振る姿は、僕の中で「ミック・ジャガーといえばこの動き」と感じさせてくれる定番アクションとして目に焼きついています。そして、見ているうちになんだか自分も体を動かしたくなり、ちょっとコンビニくらいまでは行ってみようかという気にさせてくれます。また、僕が初めて動くストーンズを見たのが、この曲を収録した1981年リリースのアルバム『Tattoo You』(『刺青の男』)を引っ提げて行われた全米ツアーの映画「Let's Spend the Night Together」でしたので、僕の中でミックはどちらかというと健康的でエネルギッシュなイメージなのです。
いつの時代もエネルギッシュなミックですが、1987年にリリースされた2ndソロ・アルバム『Primitive Cool』に収録された「Let's Work」のMVでは、色んな職業の方々と共にハイウェイをランニングしています。映像は合成なのですが、これが今でいう「雑コラ」風でなかなか面白いんです。医者に工事作業員、ウェイター、スーツのビジネスマンから葬儀屋さん、映画撮影班らしき人たちなど、とにかく働く人々がフィーチャーされ、そうした人々を引き連れたミックがひたすら歌いながら走っていきます。
当時のミックは44歳。そして、それから30年が経ち74歳になっているにも関わらず、ミックは2017年の今もステージに立ち続けて、“Let's Work”している。これはとてつもなくすごいことですよね。しかも、スタイルの良さが昔からほとんど変わっていないではありませんか。ダイエットのためにミックスナッツを食べるなんてことをする必要もなさそうです。酒、タバコもやらず、ミックが健康に気を遣ってこの30年を生きてきたのは確かでしょう。そして、自分の中に怠けそうな自分を見つけたときは、“Let's Work!”と自分自身にハッパをかけてきたのかもしれません。世界最高のロックバンドのフロントマンとしての誇りがあるからこそのストイックな生活を、少しでも見習いたいものです。