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【音食同源】 第4回:酸辣湯麺とニーノ・ロータ「ゴッドファーザー愛のテーマ」


昔は苦手だったのに、何かのきっかけで意外と好きになってしまう、さらにその反動でドップリハマってしまうものって結構あります。

9月から10月にかけて、グルメ雑誌の企画で10数軒の中華料理、ラーメン店で麺料理の取材をしたのですが(11月25日発売の雑誌『だいごみ』)、特集が「担々麺と酸辣湯麵」ということで、何軒か酸辣湯麵を食することになりました。

正直、これまでの人生で1度か2度しか食べたことのない酸辣湯麵。しかもその味の記憶は、「とにかく酸っぱくて嫌い」。もともと酸っぱいものが苦手な体質だけに、何かの機会に酸辣湯麵を食べたときに「これは無理だ」と思ってしまっていたようです。しかしながら、さすがにグルメ雑誌の企画だけのことはあります。そんなスーラーPTSDな人間でさえ乗り越えられるほどの味を提供できる店がラインナップされており、取材で足を運んだ店のすべてが見事に「これは美味い!」と唸る味でした。そもそもお前はどんだけマズい酸辣湯麵を食べてきたんだ?っていう話なんですけども。それ以来、僕はまんまと酸辣湯麵にハマってしまい、先日は別件の取材で会ったカメラマンさんから聞いた情報を頼りに成城学園前の「桂花」まで酸辣湯麵を食べるためだけに行ってしまいました。桂花ラーメンじゃないですよ、「中華料理 桂花(ケイファ)」というお店です。さらに、赤坂の名店「榮林」にまで足を伸ばしてしまうまでに。いずれも「美味い、美味すぎる」と感嘆の声を抑えるのに必死なほど美味でした。

そんな「食わず嫌い」は、料理のみならず音楽、映画にもあります。僕は好きな映画のTOP3が「ゴッドファーザー」「ゴッドファーザー2」「ゴッドファーザー3」という人間なのですが、当初は人に勧められても「長いし大仰な感じで見るのが面倒くせ~」という感じで、いくら「ゴッドファーザーを観たこともないのに映画を語るんじゃねえよ」となじられようが、「おまえにマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の哀愁がわかるか」と言われようと、まったく観る気が起きませんでした。しかし、意を決してシリーズをぶっ通して鑑賞した結果、僕の目から流れていたのは、退屈なあくびによる涙なんかじゃない、心の泉から湧き出るような感動の涙でした。そう、今はわかる、わかるぞ!マイケルの哀しみが、苦悩が、苛立ちが!フ、フレド~~!!

そうなんです。食わず嫌いはよくない。「名作は名作」「美味いものは美味い」。素直に人のおすすめを受け入れて一度口に、目にしてみること。そのことで、新しい世界が開けるきっかけになるかもしれません。今では、僕の部屋には「ゴッドファーザーシリーズ」3作のDVDが棚に並んでおり、これまで嫌というほどリピートされてきました。1作目で妹からの電話を受け飛び出していくソニー・コルレオーネが「サノバビッチ!」と吐き捨てるセリフの真似を何度したことでしょう。そして、ニーノ・ロータ作曲の「ゴッドファーザー愛のテーマ」に、何度心を震わせたことでしょう。

家族という酸っぱいような辛いようなスパイシーで面倒くさい存在をマフィア組織のストーリーになぞらえて表現してみせるその映像にピッタリなテーマ音楽です。そうです、良い作品には良い音楽が必ず寄り添っています。酸辣湯麵、「ゴッドファーザー」。一度その魅力に触れたらクセになること受けあいです。いずれも食わず嫌いをしている方は、まずはニーノ・ロータ「ゴッドファーザー愛のテーマ」をストリーミングサービスか何かで聴きながら、酸辣湯麵が美味しい店に足を運んでみてください。

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