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フォロワーの #2024年上半期自選十句をつぶやく から一人一句。【約百人百句】

表題の件について。
いつも年末分しかしていませんでしたが、今回は気が向いたので上半期もやってみようと思います。

今回は十人十句選んでコメント…という形式ではなく、投稿を発見したフォロワー全員に一句一言でやれたらなと思います。文章量に差があるかもしれませんが、文章の長さと愛の重さは比例しないと思うので(良い句は時に多くを語りたくない事もある)(逆に長いから駄目という事もない)長い短いで一喜一憂しないで頂けるとありがたいです。

==以下、毎回恒例の注意書き==

※鍵アカウントの方、以前いやと言っているのを見掛けた方へは直接リプライを送っています。(なのでここには載せていません)

X(旧Twitter)の仕様で検索をかけても出てこなかった方、鍵アカウント(非公開ツイート)の方、「自選五句」など別のタグを使用されている方(表記揺れ含む)、このnoteを書き始めた時点で未投稿だった方は入っていません。つまり、運です!
勝手に書くので勝手です。ご了承下さい。
(本当に勝手に書くので、執筆時点で相互フォローの方限定です。)

また、以前「無許可で句を載せられるのが嫌」とツイートしていたのを私が見た方(で、私が覚えている方)&Xで俳号を隠されている方は念の為除きました。(他サイトへ掲載されている方もサイト側に権利が移動しているかもしれない為省きました。ごめんなさい。)
載ってるけど嫌だよ!という方は削除しますのでご一報下さい。

なお、今回も句をクリックすると自選十句ツイートに飛べるようになっています。

↓↓私の自選十句も見て〜!!↓↓




※検索出た順です。

■ 7月2日12時更新分


図鑑より出られぬけもの山眠る げばげば

単純に図鑑の中のけものと考えても良いけど、既に絶滅してしまって現世にはもう存在しないけものを図鑑で眺めているような気がした。ニホンオオカミかもしれない。


さへづりの音楽準備室に鍵 四篠たんし

最後の「鍵」が魅力的。青春もさへづりも閉じ込めて。


アカウント消して四月の顔となる 伊藤映雪

現代らしい一句。アカウントを消せば簡単に新しい私になれるけれど、果たしてそれで良かったのだろうか。四月の顔は五月まで保っていられるのだろうか。


寒造神の吐息のあまきこと 葦屋蛙城

「寒造」「神の吐息」「あまきこと」すべての言葉が過不足なく響き合っていて、素晴らしい句。十七音以上のことを語らずとも良さが全部伝わる。これぞ俳句。


福神漬赤し牛日の銀座 みづちみわ

福神漬の赤のめでたさと銀座の特別感・高級感、そして福神漬の庶民っぽさのバランスが絶妙。この絶妙なバランスが「牛日」らしい。


やはらかき心のままに春ショール 冬野とも

かたい心では春ショールを纏えません。きっとそういうもの。春ショールのようにありたい。


春の水こんぺいとうのうすみどり 染野まさこ

取り合わせが綺麗。桃色や白のこんぺいとうではなく「うすみどり」を選んだところが「春の水」らしくて更に魅力的。


終バスの膝に小さき聖菓抱く ひなた和佳

牛舎、石鹸玉と迷いつつ聖菓を。「終バス」と「小さき」でどんな人物がどういう状況で「小さき聖菓」を選んだのか、想像と物語が
膨らんでくる。


沈み込む畳や何もかも寒し 充子

寒造の句も強く印象に残っているけど今回はこっち。「沈み込む畳や」の詠嘆がすごい。この詠嘆で、「何もかも寒し」が本当に伝わってくる。足裏の実感。一歩進む度に、沈む。寒い。


嚔して初めて僕の声を聞く ヒマラヤで平謝り

わかるぅ〜。この事実に気付いた後の虚無。それも冬らしい。


目が合へば気の良ささうなくまんばち 朝月沙都子

蜂を見つけるとどうしてもギョッ!っとしてしまうけど、目を合わせてみれば「気の良ささうなくまんばち」。この発見が可愛い。


洗い終え洗いまた終え朝ざくら 龍髭

台所仕事の実感。何という事もない日常に「朝ざくら」が咲いているだけで、心が少し軽くなるような、特別な朝になりそうな予感がする。


海を見る旅の計画アイスティー 立川猫丸

正直、本当に海を見に行くのかはこの句ではわからない。でも、行けたら良いね!って計画を立てるのはわくわくする。アイスティーの氷が、からんと音を立てている。


白鳥と知れば澄むなり沼のこゑ 沼野大統領

人間ってそういうところあるよね!


甘し甘し性格悪さうだつた河豚 イサク

そんな河豚も胃袋の中…。性格の良い人間ほど神様に好かれる、なんて人間は言いますが河豚ってどうなんでしょうね。とか言いながら食べていそう。人間。


紫陽花を歩けば空ってこんな匂い 月岡方円

「紫陽花を歩けば」という言葉選びが素敵。紫陽花の道、などではなく。紫陽花を歩くから空はこんな匂いなんだな。


太陽は平凡な星ふきのたう 佐藤直哉

取り合わせが絶妙。語らず、言葉そのままに味わいたいと思う一句。


雑煮椀ミニカー横に並びをり 卯月紫乃

大人たちがお箸や雑煮椀を綺麗に並べるのを見て、ミニカーも並べたくなったのかもしれない。お正月の楽しい一コマ。


入信は雪へ手を振るだけですよ たーとるQ

どういうこっちゃ、と思う。そんなふざけた宗教はある訳ないからフィクションだと思った。が、もしかしたら世界の何処かにはそういう宗教があるかもしれない。どうして人は信じるのだろうか。


ハンカチをきれいに折って返す恋 葉月庵郁斗

最後の「恋」が綺麗。好きな子のハンカチを借りたから返すのか、恋が終わったから返すハンカチなのか。私は失恋で読みたい。


吊るしたるバナナに声を掛けて寝る ぽっぽ@水須ゆき子

子を叱る、も好き。ぽっぽさんの句は毎回(短歌も)生活がちらりと見えてきて素敵だなと憧れている人の一人。この句はちょっと馬鹿馬鹿しいなと思えて、そんな所が好き。


未成年白鳥はくちょう未成年 コンフィ

癖になる謎句。私もまた、癖になってしまった一人。


直球の蜜柑育休取れぬ俺 天雅

私は家に帰ってきて奥さんに「何で育休取れないの!たまには休んで手伝ってよ!」と怒られている旦那さんを想像した。そんな事を言われても、仕事は休めないし育休は通らないし俺だって頑張っているんだよ…という言葉をグッと飲み込み、蜜柑を持つ手に力が入る。


バナナ食ふ初出勤の駐車場 星月彩也華

新社会人の初出勤を想像した。社会人ってこんな感じなのか…と思いながら初出勤の駐車場でバナナを食う新社会人。頑張ってくれ。


ホスピスにおはようの声初山河 さくら悠日

おはよう、おはよう、今年もよろしくね。そんな声の響くホスピスの窓から眺める初山河。優しく年が明ける。


この先は通らせまじと蜂の飛ぶ 細葉海蘭

蜂、こわ〜いと思うけど蜂だって必死。蜂の方が人間のこと怖いと思ってるよ。


草餅も買おうタケコプター貸して 鈴白菜実

タケコプターが出てきて、え!?現実じゃない!?と驚いた。当然の如く登場するタケコプター。草餅とタケコプターが並列に並ぶ世界なのかもしれない。


軽暖の白衣まぶしきヘリポート 花星壱和

最後の「ヘリポート」の登場が見事。「軽暖の白衣」の描写をしっかりした後に出てくるので、本当にそこに降り立ったような臨場感がある。


大笑いして山茶花の白く散り 木村弩凡

山茶花は散るもの。大笑いとの二物衝撃と、「白く」散るという描写が見事。因果のないものの因果が素敵。


あそこにも世界一優しいサンタ 麦のパパ

ここにもあそこにも。世界一優しい1日のサンタたち。


菜の花の底に居て会社が遠い 三浦海栗

以前感想を送った気がするけどやっぱりこの句が一番素敵。「菜の花の底」が素敵。菜の花が救い。


花は葉に死は詩に僕は君の目に 広瀬 康

(広瀬さんなのでアニメ俳句かもしれないと思いつつ)物語がありそうな一句。最後の「僕は君の目に」が救いかつ、もう「君の目」は「僕」なんだ、という切なさもある。


人の世はつらくてきれいライラック あなぐまはる

本当にそう。ライラックが眩しい。


アスパラガスですねと歯科衛生士 ふにふにヤンマー

謎句って謎なんだけど、その謎に惹かれてしまう。謎のまま。


黙祷の職場首振る扇風機 電柱

黙祷の職場で扇風機だけが動いている。この時間を共有している。


逢いには行けぬよ椿に見られゐて うからうから

どういう関係なのだろう。平安時代の逢瀬のような関係を連想する。こんな理由で断られたら、キュンと……いやそれでも会いに来い!って私なら言ってしまいそうだ。禁断の恋なのだろう。誰にも、椿にも知られてはいけない。


宇宙魚のバターソテーに春の星 露草うづら

どういうこと…!?宇宙に行った魚をバターソテーにして食べているのだろうか。現実的な句なのか、SFなのか…どちらで読んでも楽しい。春の星がまるごと包んでくれる。美味しそう。


影を描くための鉛筆カリフラワー ノセミコ

そうそう、鉛筆って何を描くかで種類を使い分けるんですよ。影(机)なら私は硬めの鉛筆を選びたいかな。そう思うとカリフラワーとの二物衝撃は絶妙に響き合っている感じがする。


三月のコアラ尻からずり落ちて いたまき芯

想像してふふっとなった。三月が絶妙。四月や五月ではやり過ぎだと思う。三月のコアラだから似合う落ち方。


残業の蛍光灯は薄暑臭い 迫久鯨

残業の蛍光灯は、日中の薄暑を帯びているから薄暑の匂いで臭いのだろうか。「薄暑」と言えば日中を想像しやすいけれど夜の風景に挑戦した点もすごい。嗅覚ってすごい。


風船を割れば氷河期来るのかも 沖原イヲ

本当に来ちゃったら、どうする?


許しあふための流氷なのだらう 眩む凡

そう言われたらそうかもしれない。しずかに流れつつ溶け合い、ひとつになる。


蜂刺しぬ淋しき吾に熱を足す 伊藤柚良

蜂に刺された事が無いので、刺された時にこんな事を考える余裕が私にあるのだろうか…とは思ってしまうけれど、「淋しき吾」だからこそ蜂が熱を足してくれたのだと思うと、ハッとする。


永き日のアロワナ古代まで泳ぐ 青井えのこ

電卓、金魚玉、囀、たんぽぽも素敵。時間を逆行して「古代まで」がアロワナらしい気がする。「永」の字との響き合いも美しい。


創生の神のごとくに練る納豆 藤 雪陽

選びながら思い出した。風のネプリだ!こちらのリンク先へたっぷりとこの句の感想書いてます。もう書いていた。何度読んでもすごい句。好き。


個展よかったねアスパラガスパスタ 平良嘉列乙

狼、吾子のうんちも良かったけれど今日はアスパラガスパスタ。「個展よかったね」から始まるのが成功していて流石。銀座で食べるちょっと良いパスタかもしれないと想像した。お洒落で美味しそう。食べたい。食べ物の季語は美味しそうなのが一番。


テーブルに逆さまの椅子花の朝 山城道霞

他の句と合わせて、営業前のレストランかなと読んだ。「花の朝」は毎朝が少しだけ特別になる季語だと思う。いつもの椅子も特別な視点になる。美味しいレストランの一日が始まる。


菜の花へ菜の花へほら風は青 となりの天然水

「菜の花へ菜の花へ」のリフレインからの「風は青」が心地よい春の空気。少しだけ踊りだしたくなる。


冬空を煮詰めてアンデルセンの夜 秋野しら露

「アンデルセンの夜」が素敵。そこに至るまでの「冬空を煮詰めて」も素敵。寒い冬の夜の中に、ほっとする温かさ・優しさを感じる。


戦争は止められぬまま赤ワイン 椿泰文

それでも毎日は来るし、ワインだって開けるし。今日を生きているし。


初山河仰ぐこちらも初山河 磐田 小

初山河を見ている時こちらもまた初山河なのだ…。やっほーって聞こえてきたら、やっほーって返したくなる。こっちもあっちも初山河。実におめでたい。


太箸や生涯に食ふ餅の数 樋口滑瓢

祝箸や柳箸ではなく「太箸」を持って思うのがたくましい。どれだけたくさん食べるのだろうか。山ひとつ分くらい食べて欲しい。


節分の焼おにぎりの網目かな 藤田ゆきまち

美味しそう。やっぱりお料理の句は美味しそうなのが一番。(本当に節分の日に食べたのかもしれないけど)「節分」と「焼おにぎり」の取り合わせが本当に美味しそうで良い。「かな」もしっかり効いていて、流石。


君をわらはないさへづりになりたい 高尾里甫

こういう素敵な句は語りたくないな。肩車、エビフライも魅力的。


このバスを降りれば四月馬鹿の街 冬島 直

大寒、獣交むも好き。でもこの句がおかしくて特に好き。町や村ではなく「街」なのが、皮肉を感じて更に良い。


不合格みんな歩いてゆくはやい 銀紙

昼寝人の句も好き。この句は悲しい。悲しいとか悔しいとか一言も書いていないのに、「みんな歩いてゆく」だけで伝わる虚しさがある。


古書店の梯子啄木忌の埃 岸来夢

その埃はきっと、きらきらしていたのだと思う。


妻といて程よき距離の炬燵かな クラウド坂の上

いうれいの句は下半期印象に残っていたので覚えていますよ!
程よき距離、近すぎず遠すぎず。恋人から家族になるとはそういう距離になるのかもしれないと独身なりに思う。


女子会の二次会とりあへず空豆 白猫のあくび

とりあえずで空豆選ぶかね!と思ったけど、二次会で、気心知れた女子会なら空豆を選ぶかもしれない。二次会だし。そんな仲の良さ、酔いの回った感じが良い。


喧嘩して蜜柑食べどき笑いどき たいらんど風人

上五では喧嘩しているのに下五では笑っている。その間に挟まれる蜜柑がお見事。


ゾウさんのジョウロのどかをみぎひだり きつネつき

可愛い。普通のジョウロではなく「ゾウさんのジョウロ」が良い。最初から最後まですべてがのどかな一句。


セーターのこの辺の目は憎いとき 清水縞午

編み上がるまで何日も掛かるセーター。そりゃ、愛しい日もあれば憎い時もある。そんな日々をひっくるめてセーターは完成した。これが愛だろう。


永き日の何もしないをする座椅子 雨野理多

「何もしないをする」って、難しい人には難しいらしい。最近の私は何かをするブームが来ているので、難しい。でも「何もしないをする」ことも立派な過ごし方だ。そんな「永き日」があって良いのだ。


うどん煮る関西震災忌の夜風 着流きるお

関東大震災は9月1日11時58分、お昼時に起きた。昼食を作っていた為火災も多かったらしい。そんな事を思い出しながら煮るうどんか。今年も震災があった。いろいろと考える事が多い。多くならざるを得ない。


秒針の音なく動く寒さかな オキザリス

秒針の音がしない時計って針がススーと動きますよね。あの動き、確かに「寒し」と言われたら寒しかもしれない。もしくは本当は秒針の音がする時計なのに、音に気が付かないくらいの「寒さ」なのかもしれない。


河豚ぎゅいと鳴く貧民に余生なし 桃園ユキチ

衝撃的、そして説得力のある取り合わせ。十七音のパワーをそのまま味わいたいので語らない。他に紙雛、ひらかなの句も好き。


啄木忌職とは飽きるものばかり 赤尾双葉

本当にそう。だけど生きるためには働かなければならない。この矛盾が毎日苦しい。割り切って生きていく事は難しい。


あじさいの影あじさいの葉におちて 沢 唯果

蜜柑の句も気になるけど素直な描写のこちらの句を。ただそれだけの事なのに美しい。それがあじさい。


牛飼いに焼きまで任せ花見酒 風早杏

「焼きまで」という事は、焼かれているのは牛飼いが飼っていた牛だろう。育てて、捌いて、切って、焼いて…自分はあとは食べるだけ。なんだか不思議な気持ち。花見酒がすすむ。


春雨に逆らい昇るほのおかな だん がらり

優しい春雨と激しいほのおの対比が艶やか。


まづ床の冷たさを知る今年かな 浅井智紀

「まづ」という事はおそらく一日の目覚めなのだろう。どんな状況で年を越したのか。酔っ払って床で眠ってしまったのか。床は冷たいけれど、今年も楽しい1年でありますように。


河豚吐き出すみづにいのちといふ臭み 樹海ソース

みづみ臭みがあるという気付き、そしてそれがいのちであるという気付き。二重の気付きが素敵。メロンソーダの句も好きだけどこちらは先日句具ネプリの感想で書いたのでこちらのリンクから読んで下さい!


教室をからっぽにして春惜しむ たまのねこ

からっぽの教室は先生の特権。春を惜しむ心もまた。


寒さとはマッチ何本分だろう 千代之人

マッチ売りの少女を思い出す。あの少女は何本のマッチを使ったのだろう。そんな事を思う寒い日。マッチで寒さを凌ぐには。


買物のメモにトイペと書く梅雨入 京野さち

「トイペ」の略し方がリアル。梅雨入との取り合わせも絶妙。トイペ、帰る時に濡らさないようにね。


夏の鴨しぴしぴ光るお尻ぽよ 亀田かつおぶし

ぽよが可愛くて天才。


柚子に名をつけて呼びたる柚子湯かな 菅井香永

可愛い。柚子湯の柚子はひとつひとつが小動物みたいで愛着が湧く気持ちにも共感。名前まで付けて。ひとつひとつ呼びかけながら丁寧に沈めて潰したい。


ラテの湯気蔓薔薇つたひ天窓へ 舞矢愛

美しい休日の午後の風景。湯気が辿り着く先が天窓なのうっとり。コーヒー、ブラックではなく「ラテ」なのも良い塩梅。


長所つてどこさアスパラガスに塩 常幸龍BCAD

投げるような口語、投げるように塩。こんな句も作るBCADさんが好き。


妹のあほ毛ぱやぱや卒業歌 丁鼻トゥエルブ

「あほ毛」「ぱやぱや」可愛い。でも卒業するんだな。人間の成長ってあっという間だな、という気持ちになる一句。


蛸焼きにくひこむ楊枝夕薄暑 西田月旦

千の傘の句も好きだけど以前感想を送った気がするので今回はこちら。「蛸焼き」と「夕薄暑」の取り合わせが美味しそう。「くひこむ楊枝」で繋がれているのも、更に更に美味しそう。(昨日ちょうど蛸焼きを食べていた事も相まって本当に美味しそうで仕方がない)


バリウムの午後を有給ラベンダー 蜘蛛野

ツイート「ラベ」で切れていてもったいない!
何度読んでも面白い句。ラベンダーの二物衝撃が絶妙。午後は優雅に過ごして欲しい。


おでん屋の椅子は自力で確保いざ 沢胡桃

最後の「いざ」が大成功。「自力で確保」という事は、一人で行っているのかと想像した。そう思うと「いざ」は「人の目を気にせず食べるぞ!」という心意気なのか。たくさん食べてね。


もう逢わぬ人の耳たぶ春の夢 看做しみず

「春の夢」は一見使いやすそうに見えてとても難しい季語だと私は思っているのだけど、この句はしっかり成功していてすごい。「耳たぶ」の描写が、ぼんやりとせず良い味を出しているのかもしれない。


■ 7月9日11時更新分


セーターなんか着てロックやめたんか 七瀬ゆきこ

官女ら、野蒜なども気になるけどやっぱりこの句。私の母も好きな句。最近某V系バンドの動画を見る事にハマっているのだけど確かに彼らはセーターなんか着ない。寒くてもエナメル素材の服を着てお腹や腕を出している。それを見るバンギャ達もセーターなんか着ない。


深みどりのクレヨンで描く冬の兵 杏乃みずな

兎の句、何度見ても大好き。だけど今回はこちら。私はこの句を読んで、雪の中の冬の兵を想像した。真っ白い雪の中に、ちょこんちょこんと配置されている深みどりの冬の兵。まるで、雪の間あいだにたくましく生えている草のような。争いは虚しい。されど生きる事は尊い。


信仰の自由さざんか散る理由 中村すじこ

降車ボタン、猫の子もかわいい。私は、信仰とは生き方だと思う。


履歴書の空欄昏し啄木忌 島田雪灯

私も履歴書(職歴欄)の空白を詠んだ句を数年前に作った事がある。「鷽鳴くや職歴欄の胡粉色」という句で、私は履歴書の明るさを詠んだのに対しこの句は「昏し」と暗さを詠んでいる。同じものを見ても人によって見え方が異なるのは改めて俳句の面白さだなと感じた印象的な一句だった。(そして「昏し」と見える視点が「啄木忌」らしくて素敵)


春の月柩の顔に眼鏡なく 青居 舞

普段眼鏡をかけている人がかけていないと、少し不思議な感じがする。柩を覗くと見慣れない顔がある。眼鏡がない。ああ、でも天国には眼鏡いらないのか、と気付く。天国で久しぶりに会った時、眼鏡がなくてもこの人だって気付けるかな、なんて思う。


降る雪の白さ心因性だらう 土井探花

好きな句で溢れている連作。この「降る雪」、もし患っていなければ何色だったのだろうと気になる。落ちたらすぐに溶けてしまうのも、心因性だろうか。


指差しで決まるリーダー春立ちぬ 相田えぬ

私はこの句に明るさを感じると同時に、なぜ子供の頃はそれが出来たのに大人になったら難しくなってしまったのだろうと感じた。先日の東京都知事選挙を思い出しつつ。私はいつも迷う。


囀や皇子眠りし丘の上 生田久孫子

サンテグジュペリ「星の王子さま」のような世界を想像した。それは「囀」という季語の持つ力だろう。


魚沼は田植時なり朝雀 高橋笑子

思わず「俳句はこういうのが良いんだよ」と言いたくなる一句。「魚沼」という地名選びと「朝雀」の豊かさが素敵。くどくど語るよりこの爽やかさを味わって欲しい。


女王様の口でぷはあと石鹸玉 紗羅ささら

(まず先に、句意とは全く違うだろうと思うので謝っておきます。)
私は仕事終わりのSM嬢(S専門の女性=女王様)が夜の仕事を終え、朝だれもいない公園で密かに石鹸玉を吹いている光景を想像した。本当に好きでこの仕事をしているのか、そうではないけれどお金の為にやっているのか。それは女王様にしかわからない。


へこたれて帰省やリニアモーターカー 里山子

前半の温度感と「リニアモーターカー」の勢いのギャップが面白い。こっちはへこたれているのにリニアモーターカーは容赦ない。これぞ帰省、という感じがする。元気が出そう。


買初の空飛べさうなスニーカー 朝霧さら

まず句群が群として素敵。連作として編んでます…?
新年の季語はやはり明るい句が一番と思うのですが、この句はしっかり明るい。明るさの中に、きちんと詩があるのが素晴らしい。結構それは難しい事だと思う。


口づけをした格好の昼寝かな けーい◯

下五のオチの付け方が滑稽。そして、確かに昼寝ってそうなるよなと思わせる納得力。それによって「かな」が効いていると思う。見事。


人の踏むあとを踏みゆく花見かな 音羽凜

花見なのに、作中主体は足元を見ているなと感じた。それもまた人間の「花見」であると思う。蜜柑、アイドルの句も気になる。



以上、下半期もよろしくお願い致します!



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