ドライブ・マイ・カー
アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した事で話題を呼んでいる『ドライブ・マイ・カー』を見に行ったのでその感想をざっくばらんに書きたいと思います。
一番心に残っているシーン
全体を通じて一番心に残っているのは、家福とみさきが北海道に着いた直後にスクリーンが雪景色に覆われる中で15秒間ほど無音になるシーンです。
息を飲むことさえためらってしまうかのような緊張感が空間全体に張り詰められました。
北海道の地でこの後起こる家福とみさきのやり取りは、この映画で最も重要なシーンの一つでもあるので、この緊張感が良い導線になっていたなと後から思いました。
言語の壁を越えて
本作では数多くの言語(日本語、英語、フランス語、中国語、韓国語など)での言葉のやり取りが為されます。またその他にも手話によるコミュニケーションもあります。
作品内では舞台劇がそれら多種多様な言語をシームレスに接続する機能を果たしています。
異なる言語同士でコミュニケーションが進行するという日常生活では起こり得ない現象を目の前にして違和を覚えました。
言葉の持つ切断と接続という二つの顔の内、接続という顔に表現の可能性を追い求めたのではないでしょうか。
手話を取り入れた点も非常に興味深いものでした。映画館で本作を見た者としては、手話の最中に訪れる沈黙が緊張感を生み出し、伝達内容により注意が向けられた気持ちになりました。
光による表現
照明が上手いなと感じたシーンが2つほどありました。
1つ目は、家福と高槻が初めてバーで酒を飲むシーン。顔半分が青く照らされ、もう半分が暖色で照らされていました。2人がお互いのことをよく知らず、探り探り話し合っている様子が照明によって上手く表現されているなと思いました。
2つ目は、家福と高槻が後部座席にて音が2人に語った物語について話すシーン。家福の顔には影ができるように照明が当てられており、顔が暗くなるように照明が組まれています。対して高槻の方はスポットライトのように顔のみに光が当てられています。この照明の対比が二人の心情の違いをうまく捉えているように感じました。
最後に
まとまりのない文章となりましたが、一言でいうととても面白く歯ごたえのある映画でした。3時間と少し長いですが、肌感としては一瞬でした。
もしまだ見ていない方がいらっしゃったら是非見てみてください。