クリームソーダ
1時間にも満たない昼寝の後、5日間我慢していた大好物のアイスを買いに行こうとテキトーな格好で家を出た。
17時37分。
いつもの駐車場でいつもの構図で空の写真を1枚撮る。
細い路地を車やバイク、自転車に気をつけながら歩く。
いつも音楽を聞いているから、気付かないこともあって。
あ、イヤホン忘れた。
ま、いいや、すぐ帰る。
今日は昨日やおとといに比べたら冬みたいな日だったから空が綺麗だ。
雲もね、白いペンキをはけに含ませてサーッと優しく撫でるように…すべらせたんじゃないか、って。
綺麗だ。
夕焼けを追いかけて西へ向かうのはやめよう。こないだ怖い思いをしたばっかりだ。
辺りが暗くなってきた。
明るい商店街は祝日の気分がまだ残ってる。
家に帰りたくないな…。
ひとり暮らしなのにね。
夜、ひとりで家にいると自分の置かれている状況やいろんな問題と向き合わずにはいられなくなって辛い。
大好きになったお笑い番組もあまり見ないからTVの前にレコードを飾ろう、なんて考えている。
ニュースはきっと2ヶ月ぐらい見ていない。
18時15分。
これまたテキトーに入ったカフェでクリームソーダを飲んでる。
緑色のソーダの中で泡がプツプツとしてるのを見るのが好き。
バニラアイスの底がシャリシャリになっているのが好き。
大人になっても何度も飲んでいるのにクリームソーダは懐かしい味がする。
このカフェ初めて入ったな。
いちごパフェやビーフシチューもおいしそう。
厨房から生クリームを作る泡立て器とボウルの音がする。
次はキャベツの千切り?
食器同士がぶつかりカチャカチャと音を立てている。
ピアノのBGMと相まってすごく落ち着く。
駅前に続く通りをこうして2階から眺めたことがなかった。
新鮮だ。
老夫妻かな?
向かい合って座り顔を近付けてひそひそと話している。奥さんの笑顔が見える。
それ以外はほとんどひとりの客でわたし以外は全員男性のようだ。
窓際の席はいいね。
外を見ようと少し窓に近づくとカラフルなビオラが植えられたプランターが見えた。
電車の音もする。
18時45分。
ラストオーダーはきっと19時30分だろう。
ホールでは背が高く痩せ型の若い男性がうるさくならない程度に元気よく注文を取ったりお会計の対応をしたり、コーヒーを運んだりしてる。
とても好感が持てるな。
居心地や雰囲気が気に入っても店員さんが冷たい感じだったりしたら、もう来ない。
19時。
クリームソーダは淡くて白っぽい緑に変わりグラスの底に2cm。
甘い飲み物は喉が渇くね。
春がもう来てる。私、この街に来て13年...。
10年間は半ば意地で住んでた。ある理由があって。
その想いはこないだ昇華させたからもう何処にでも行ける。
行きたい街?…どこだろ…。
地元には帰りたくないし帰らないと決めている。
ねぇ?長いでしょ?
誰にも、誰とも話せないから…話し相手がいないからこうなるんだ。
これでも短く書いてんだ。
本当は話したいよ…誰かと。
誰でもいい訳じゃないから厄介だね。
今度はあの喫茶店に青いクリームソーダを飲みに行こう。
2番目に働いた会社があった街に…。
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