親孝行って、いい響きですね…。
児童養護施設、少年院出身の青年たちの自立生活をサポートをする団体 NPO法人スマイルリングでの毎日。青年たちとの心の物語をnoteします☺️
親孝行するのは良いことだ。
だから親孝行しよう…と、いつも思っていた。
10代の頃、とても親不孝だった私にとって、成長するにつれ、『親孝行する』と言う事が、自分の生活の中の目標みたいなものだった。
いろんなものを買ってプレゼントしたり、旅行に連れて行ったり、親が喜ぶな…と思う事は、一生懸命、何でもしてきたつもりだ。
そんな私だから、『子供は親孝行するべき』のような価値観が、私の中にはかなり強くあったと思う。
そんな私が、このNPO法人スマイルリングと言う団体と出会い、
複雑で…。時には…心がえぐられるような、とても残酷ですらある…様々な過去や事情を持つ青年たちと出会い、対話をしていく中で、
彼らには、どうしても言えない言葉があった。
それが、『親孝行しなさい。親孝行は大事だよ』と言う言葉だった。
私は親孝行をしている自分の事が好きだった。でもそれは、親孝行ができるぐらい、私は恵まれていたんだと言うことが、彼らと出会ってハッキリとわかったからだ。
親孝行したくても、それができない青年たちがいる。悪いのは彼らではなく、絶対に大人の方だ。
今朝、少しでも声を聞きたいと、『お母さん…』と電話をくれた少年院出身の青年。
2月に結婚した彼は、この間、お嫁さんの実家へ行ってきたそうだ。
そこで暖かく迎えられ、
『ああ…。◯◯ちゃんが、こんな風に育ったのは、こんな家で育てられたからなんだなぁって思いました…。あったかくて、優しくて、僕、何回もあくびしちゃったんです…』と言う。
『僕、絶対に結婚を反対されると思っていたんです。なのに、◯◯ちゃんのお母さん、優しく迎えてくれて…』
ひどい虐待を受けて育ってきた彼には、帰る家も、優しく迎えてくれる血の繋がった母もいない。
またお母さんができたねぇ。良かったねぇ…と言うと、あ!本当ですね!と素直に喜ぶ彼に、私も自然と
『お母さんに親孝行してあげるといいよ』と伝える事が出来た。
すると彼は、
『親孝行っていい響きですね…。自分が親孝行できるなんて思ってもみなかった…』
と、しみじみと言った。そして、
『親孝行ってどうしたらいいんですか?』
『何も、特別に高いものを買ってあげるとかじゃなくて、笑顔を見せてあげるだけでも、すごい親孝行なんだよ…』
と言うと、
『親孝行ってそういうものなんですか…。そうなんですか…』と。
こんなに心優しい、素敵な君よ。
君と出会えて本当に良かった。
君は本当に親孝行な息子だよ。
彼らには教わることばかりです。
NPO法人スマイルリング
理事 ののむら ちあき☺️