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散り際にぽとりと落ちる線香花火



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いつもなら山の向こう側に期待する色
暗闇にじんわり滲むものが、
不思議に地面に向け赤く焼け落ちる

線香花火の消える間際に残る赤い球

毎朝鉄道が止まる瞬間
ぽとりと落ちた

地面を揺るがすような地響きもなく
光る波動が土に染み込む

複雑になりすぎて
抜け出せない迷路を広げる社会
出口が足りないんだ

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夜明け前、まだ陽が昇るまでには暫く時間がかかるくらいの時間の空に赤黒い山の稜線をよく眺める。今朝はそんな時間よりは、少し出遅れた夜明けの空。

この時間、いつもなら白く輝く太陽が典型的な空模様なのに、この日は赤味がかった色。
春は空気や景色そのものも桃色に染める。
春の景色を捕まえようとして撮影。

空の上の赤色ではなく、空の下、照らされる地面に近いところの赤色が特徴的な景色に出会った。

出掛ける前、今朝のテレビのニュースでは、人身事故で電車の路線が不通となっていた。右上にずっとテロップが出たままだった。
実は昨日も同じように人身事故で電車が不通となっていた。2日続いてのトラブルのようだ。人身事故。

「人身事故」という表現は個人的に嫌いだ。
人が亡くなったのも、トラブルで怪我したのも同列に扱われる曖昧な言葉だから。
人々の反応も、人身事故だと軽くあしらわれがち。

誰かかが「また人身事故か。。」などと声には出さずとも表情から感情が見えてくる。

もしかして人が一人亡くなっているとは思わないと、手を合わせるどころか、一被害者でしかない。

私は「人身事故」と聞くと心のなかで手を合わせることにしている。
多くの人たちがそうであって欲しい。

最初に電車が止まった瞬間、一つの命が失われた。本当かどうかはわからないが、そう感じた。
地面近くの赤色はたとえるなら、線香花火の火がすっと消えるその瞬間の最後の赤色。

線香花火の棒の先にある赤色の球体の色と空の色が重なり合う。

今目覚めたばかりの朝焼けなのに、まるで夜の闇に向かうような錯覚を感じる赤色。

線香花火なら、黒い灰になり、短時間の役目を終えた寂しさ。人間で言うなら、今日まで生きてきた人生の集大成がここで終わる、そんな終幕のようなものを感じた。

人間は社会が高度に発達すればするほど、様々な糸で絡まるように身動きが取れなくなる。

足に纏わりついた糸を切り落とすだけでは、単純に抜け出せない。体中、腕や首や様々なところに糸が複雑に絡まっている。

もっと単純に、何か一つが解決すれば、問題は全て終わり、誰もが幸せになれたらと願う。

どうか、人身事故という言葉には、正しい反応をしてほしい。あなたにとっての正しい反応を。


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