ア・ラ・ポテトの「じゃがバター味」というネーミングはズルい。
体質的に脂っぽいお菓子がダメになってからあまり食べなくなったのだが、昔、僕が小学生だった頃に狂った様に食べていたお菓子がある。
ア・ラ・ポテト じゃがバター味である。
(画像はカルビー公式ホームページより抜粋)
僕の記憶の中では、販売されている秋の間はどいつもこいつもア・ラ・ポテト じゃがバター味を食べていた。多分当時の僕の周辺での普及率は、令和のスマホ普及率とどっこいどっこいぐらいだったと思う。さらに、その人気は過大評価ではなく、実際超うまい。母親が初めて買ってきたのを食べたときの驚きは成人した今でもしっかり覚えている。厚切りのチップスに濃厚なバターの風味、塩味、コク... 全てが完璧だった。こりゃ売れるわ、と頷いてしまうほど、ひとつのお菓子として完成されていたと思う。
しかし、この商品がそこまで人気だった(という記憶が残るほど、僕の周りではポピュラーだった)のは、その味が原因の100%ではないと思う。端的に言って、「じゃがバター味」というネーミングに原因の一端があるのだと僕は思っている。「なんか美味しそうというイメージがあって、材料も作り方も簡単なのに、意外と食べたことがない」でお馴染みのじゃがバターをスナック感覚、というかスナック菓子として楽しめるとあれば、じゃがいもアンチ界隈やバターアンチ界隈の人、もしくはお菓子といえばアールグレイのお紅茶とセットというようなアッパークラスのお嬢様以外は大抵、この「じゃがバター味」というワードに興味をそそられるはずである。
でも、ここでよく考えてほしい。ア・ラ・ポテトを含むポテトチップス系のお菓子の原材料は何だろうか?当然、一瞬の思慮の必要すらなく、その答えはポテト=じゃがいもである。つまり、ア・ラ・ポテトじゃがバター味は、「じゃがいものお菓子のじゃがバター味」と言い換えることができる。なんとなく僕の言いたいことが理解して頂けただろか?
端的に僕の意見を言ってしまえば、それって要するにただのバター味なのでは?ということなのである。
だってそうだろう?じゃがいものお菓子なのだから、元からじゃがいもという要素が含まれているのは当然のことであり、じゃがいものお菓子であるから、商品名にポテトの名を堂々と冠しているのである。そのフレーバーの説明として、「じゃがバター」という名称をつけてしまえば、その追加要素の「じゃが」の部分は元来ア・ラ・ポテト自体が持つじゃがいも性に統合され、結果的にはバター味という新規要素のみがフレーバーの本質として残るはずなのである。
ごちゃごちゃ小難しい話をこねくり回すな説明下手が!という人のために簡単に説明すると、原材料がじゃがいもなら、じゃがバター味って要するにシンプルなバター味でしょ?ってことを言いたいのである、僕は。
ここで一旦「ア・ラ・ポテト じゃがバター味」ではなく「ア・ラ・ポテト バター味」だった場合をイメージしてほしい。果たして僕達消費者は、この商品に殺到して我先にと購入するだろうか?僕はNOだと思う。「バター味」では圧倒的に引きが無い。別にわざわざ買ってまで食べなくても良い感が出てしまっている。そういった意味で、本質的には同じでも「じゃが」の3文字をつけるだけで、(もちろん、じゃがバター味をじゃがバター味たらしめる僕達の知らない特有の製法などがある可能性を否定することはできないが)商品としての価値は大きく変わってくるのだ。
ネーミングに工夫を凝らすことで、商品のイメージをアップする、この「じゃがバター効果」の例として、別の商品を挙げたい。それが
ポテトチップス しあわせバタ~味である。
(画像はカルビー公式ホームページより抜粋)
再びカルビーのお菓子の話題で申し訳ない。別に僕はカルビーの回し者とかではなく、手近な引出しにそれぐらいしか例えがなかったのだ。話題を戻して、このしあわせバタ~味は、「バター」「はちみつ」「パセリ」「マスカルポーネチーズ」の4種類の食材を合わせた味。4合わせ=幸せということらしい。実に上手い。もしこれが、「ポテトチップス はちみつとバター、あとパセリとかマスカルポーネチーズ味」みたいなネーミングだったら、現在の人気は無いに違いない。「しあわせ」という、お菓子のフレーバーとしては抽象的だが確実にポジティブな表現をすることで、購買欲をそそってきやがるのだ。
最終的な僕の主張としては、「ネーミングって大事!」ということである。目を引いて興味を引くネーミングは、億千万の情報の奔流の中を生きる我々現代人のハートを鷲掴みにし、そのものの魅力も底上げしてくれるのだ!というようなことを、文系大学生~インドア一匹狼味~こと、引きこもりがち交友関係狭々男子大学生である僕は考えているのである。