映画「渋滞」
前からAmazonで「レンタル落ちDVD」を購入していた、黒土三男監督作品「渋滞」を今日午後観た。
1991年の作品。
脚本家・黒土三男さんとは、僕の東京でのドラマプロデューサーデビュー作「八月のラブソング」で御一緒した。
何度も浦安の御自宅にも伺い、二人で寿司をつまみながら、酒をぐでんぐでんになるまで飲んだ。
この映画の主演は「萩原健一」と「黒木瞳」。
二人の演じる夫婦と二人の子供たちが「千葉県浦安市」から「夫の実家」のある「四国」の「真鍋島」まで「車」で帰省する事になり、その道中で「大渋滞」に巻き込まれて、なかなか「実家」にたどり着かないという「ロードムービー」である。
やはり、「脚本」が巧い。
「人間の本当の幸せとは何なのか❓」「人間に襲いかかる『不条理』とは❓」というドラマに普遍な「問い」がきちんと織り込まれている。
僕も菅原文太主演・テレビドラマ版「幸福の黄色いハンカチ」の脚本を書いたのが、「山田洋次」「黒土三男」という事を知っていて、「八月のラブソング」の脚本を「共同テレビ」の「中山和記プロデューサー」を通して、お願いしたのだった。
そして、「木下惠介プロダクション」出身の「黒土三男監督」の「演出」も手堅い。
「見たい芝居」を「見たい映像」で見せてくれる。
その映像はどこか、「松竹映画」の巨匠「野村芳太郎監督」(「砂の器」「八つ墓村」「鬼畜」など、「松竹」で多くのヒット映画を撮った監督)の「画作り」に似ていて、落ち着き払っている。
そしてそして、「ショーケン」(萩原健一)の「存在感」が凄すぎる。
「男」を描かせたら、「黒土三男脚本」は素晴らしいと再確認する。
しかし、黒土三男さん本人にも、僕は酔っ払って言ってしまったが、「女」は描けていない。
「女」は「男」の「憧れの対象」として、「キャラクター造形」されている。
「女」の「心の醜さ」「心変わり」などは不得意なのだと思う。
だから、「男」の僕が映画を観ると、「萩原健一」はとっても魅力的なキャラクターになっている。
主演の「ショーケン」こと、「萩原健一」も「黒土三男さん」もこの世にいない。
なんか、不思議な心持ちで映画「渋滞」を観た昼下がりの一刻だった。
余談だが、黒土三男さんは僕と一緒にドラマの仕事をしている時、藤沢周平の「蝉しぐれ」の映画化を強く熱望していて、すでに「脚本」も書き上げていた。
映画「渋滞」の中、米原のバーに「萩原健一」は入る。
そこのアンニュイなママを演じるのが「かたせ梨乃」。
このママがタバコを燻らせながら、読んでいる本が藤沢周平「蝉しぐれ」の文庫本だった。