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ドラマ「永遠の仔」と中谷美紀さん
忘れられないロケがある。
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連続ドラマ「永遠の仔」のクライマックスシーン。
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多摩川河川敷の神社が現場だ。ロケは夜間なので、夕方キャスト・スタッフが集まって記念撮影。
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子役の邑野未亜さん、勝地涼さん、浅利陽介さん、そして中谷美紀さん、椎名桔平さん、渡部篤郎さん、藤真利子さんを中心に百人余りでハイポーズ!
撮影は夜になってから始まった。
カット割りは100数十カット。カットの度にカメラ位置が変わり、照明が変わるので、ワンカット撮るのに想像以上に時間がかかる。
ロケ地が住宅街から離れているので、音の心配をする事無く、落ち着いて撮影が進められた。
渡部篤郎さんが母親の藤真利子さんに銃を持たせ、自らを撃つとても哀しい場面、中谷美紀さんと椎名桔平さんが現場に駆けつけ、止めようとするが・・・
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東急田園都市線の始発電車が走り始め、空が白くなって来た頃、ロケは終わった。
中谷美紀さんは、親から虐待を受け続けていた優希いう役に演じる為、撮影の4ヶ月間、自分の気持ちを抑え込んでいたのだろう。
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最後のカットに花堂純次監督のOKが出ると、スタッフが用意したビールを手に取り、満面の笑顔で「今P、ビール飲もうよー‼️」と僕にビールを渡してくれた。
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とてもとても魅力的な笑顔だった。
中谷美紀さん始め、役者さんたちと乾杯した僕の心も解き放たれていた。
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天童荒太さん
その数日後、原作には無いラストシーンを、原作者・天童荒太さんの許可を得て、撮影した。
主人公・優希がひたむきに生きていく姿を描きたかったからだ。
今までの生活からは解き放たれたかのように、ある漁港に優希はやって来る。
車に轢かれた男の子を背負って、村の診療所に駆け込む。
医師の指示でてきぱきと男の子の手当てをする優希。
その瞳にはもう「生きること」についての迷いは無かった。
「虐待を受けた事実」を心のどこかに持ちつつも、前を向いて歩き始めた優希。漁港にたたずむ優希の顔には優しくも強い笑みがあふれていた。
原作を読んで、主人公・優希は中谷美紀さんしかいないと思った僕の直感は間違っていなかった。
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近藤晋プロデューサー
その中谷美紀さんをキャスティングして下さった東北新社クリエイツの近藤晋プロデューサー、そして、想像以上の優希を演じ、創り出してくれた中谷美紀さんに、心の底から感謝している。
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もうあれから四半世紀の時が経つ。
「ドラマの撮影現場」はホンマにしんどいが、あの感動があるから、「麻薬」の様に病みつきになる。
もちろん、「麻薬」など、僕はやったことは無いのだが(笑)