助監督の時の記憶
ドラマの本番。
途中でキュー(合図)を出さなければならない時がある。
喫茶店で2人で会話するシーンの中で、ウェイトレスが注文を取り、注文した飲み物を持って来る場面では、ウェイトレスの目線の先でタイミングを見計らって、二回キューを出す。
ウェイトレスが来る「間」で、芝居の流れが変わる事も多いので、このキューでNGは出せない。
リビングのシーン。
テレビドラマでは、複数のカメラを使って、一連の流れで撮る。
いろんなシーンで助監督は、キャストの見える所でキューを出す。
一つでもキューのタイミングを外すと、NG。助監督をしていた僕はドキドキが止まらなかった。
収録日より前に、セット無しのリハーサルをやる場合がある。
スタジオでのリハーサルと違い、セット無しでのリハで芝居を固めていく。
セットの代わりに、ガムテープを床に貼り、畳やパイプ椅子を使う。俳優さんも衣裳には着替えない。
リハ室の片側にはテーブルが並べられ、監督、プロデューサー、助監督、カメラ、照明、美術など、各部署のチーフが顔を揃え、芝居の最終確認をする。
収録日前にリハーサルをする事の利点は、芝居を固める事、カット割りを固める事にあるだろう。
「リビングのシーン」もリハーサルをやれば、俳優さんそれぞれが、自分の芝居を身体で覚え、キューが要らなくなる事も多い。
このリハーサルは基本、スタジオ収録部分をやるのだが、ロケの重要なシーンをやる事もある。
俳優さんはもちろん、各部署のスタッフも本番までに準備が出来るので、良い部分はたくさんある。
最近は収録日前にリハーサルをやるドラマは少なくなってきた。
俳優さんの事務所からもらうスケジュールでは、収録スケジュールを組むので精一杯なのである。
この収録前リハーサルで、監督が付けた芝居にプロデューサーが異論を唱えた事がある。
小心者の僕は、監督とプロデューサーの間にバトルが始まるのではないかとヒヤヒヤしたが、監督はその意見も理解し、俳優さんと話して、より面白いシーンにしていった。僕はリハーサルの良さを深く感じていた。