近藤晋さん
元・NHKの名プロデューサー、近藤晋(すすむ)さんとは二度ドラマで御一緒した。
一度目は連続ドラマ「永遠の仔」
二度目は連続ドラマ「天国への階段」
近藤晋さんと言えば、市川森一脚本の大河ドラマ「黄金の日日」、山田太一脚本の大河ドラマ「獅子の時代」、「男たちの旅路」、「シャツの店」など、僕が視聴者として、「テレビドラマ」を観て来て、「心に深く刻まれたドラマ」を数多くプロデュースしている。
特に、山田太一のドラマが大好きな僕にとって、近藤晋さんは憧れの存在だ。
あの山田太一さんが近藤晋さんの事を「テレビドラマ界で稀有な才能を持っているプロデューサー」と絶賛しているからからだ。
僕がドラマ「永遠の仔」のプロデューサーを担当する様に上司に言われた時、もう「永遠の仔」の企画は先に決まっていた。
僕もベストセラーになった原作は既に読んでいたが、もう一度、読み込み、ヒロインの「優希」役には女優の中谷美紀さんしか無いだろうと思い、近藤晋さんにキャスティングをお願いした。
そして、近藤さんは中谷美紀さんをちゃんと主役に据えてくれたのである。
この時の脚本は中島丈博さん。
共同テレビのプロデューサー・中山和記さんと仕事した時も思ったのだが、ドラマは「原作」「脚本」でその大方が決まる。
「29歳のクリスマス」「ニューヨーク恋物語」の脚本は鎌田敏夫さん(「男女7人夏物語」「俺たちの旅」など)、「金(きむ)の戦争」は早坂曉さん(「夢千代日記」「必殺シリーズ」など)が書いている。
どれも中山和記さんのプロデュース。
話は近藤晋さんに戻る。
近藤晋さんと二本目にやった「天国への階段」、主役は佐藤浩市さん、脚本は池端俊策さんほか。
近藤晋さんのプロデュース作品は今観ても色褪せない。
「男たちの旅路」のキャスティングの際、断り続ける鶴田浩二を東映京都撮影所の入口で毎日待ち続けて、口説き落としたという。
近藤晋さんはキャスティングが終わると、ほとんど撮影現場に来ない。
実はこれも「プロデューサーの一つのやり方」なのである。
撮影現場で「俳優」も揉めた時、プロデューサーはいない方がいい。
監督が「プロデューサーに訊いてみます」と逃げられるからだ。
その場にプロデューサーがいると「共倒れ」になる。
かつて、僕がチーフ・プロデューサーを担当し、部下の木村元子がプロデューサーを務めた連続ドラマ「凍りつく夏」の時の事だ。
西調布のロケ現場で、木村元子が僕にこう言った。
「現場に来ないで下さい。なんか揉め事が起こった時に電話しますから。現場にチーフ・プロデューサーがいると『逃げ道』が無くなりますから」
彼女の言う通り。
それから僕はロケ現場に行かなくなった。
休みを取って、子供と市民プールに泳ぎに行く。
しかし、脱衣所に置いてある携帯電話が気になって仕方がないのである。
つまり、僕の携帯電話に木村元子から電話がかかって来た時は、彼女だけでは問題を処理出来ず、最悪の事態になっている事を意味しているから。
でも、それは杞憂に終わった。
木村元子プロデューサーはそんな弱い人物では無く、全ての事を自分で解決してくれたから。
脚本家・山田太一さんとは御一緒出来なかったが、近藤晋プロデューサー、中山和記プロデューサーと仕事できた事を僕は誇りに思う。
そして、プロデューサーでは無いが、脚本家・遊川和彦さんと御一緒した事も。
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