女優・室井滋さん
僕の大好きな女優さん、室井滋さん。
僕は「本能で演じる女優さん」だと思う。
彼女が主演の「心療内科医涼子」と「凍りつく夏」という2つの連続ドラマ、「フレンチポテトカップ」という単発ドラマで御一緒した。
「心療内科医涼子」の第1話のゲストは麻生祐未さんと藤田朋子さん。
麻生さんが本能による渾身の芝居をし、藤田さんにも「芝居の炎」が飛び火、めらめらと燃え始めた。
この2人が芝居にのめり込んで行ったので、室井さんにも火がついた。
第1話、ラス前の室井さんと藤田さんのシーンは、獅子と荒鷲が闘う様な雰囲気で満ちている。
一瞬たりとも目が離せない、お互いのエネルギーを爆発させた素晴らしいシーンになった。
プロデューサーも予想できなかった2人の「芝居による闘い」だった。それは誰もが出来るものではなかった。
室井さんのドラマでは、スタッフルームに「室井さん専用の冷蔵庫」が持ち込まれた。
その中には、室井さんがご飯を食べる時のお惣菜やお漬物が入っていた。室井さんは食べる事が本当に大好きなのである。
室井滋さんと初めてお会いした時、六本木の汁そばの美味しい店に行った。
料理を注文する時、プロデューサーの僕は気を遣って、「苦手な食べ物はありますか?」と訊いた。室井さんは、「道に落ちている虫でも食べます」とサラッと言われた。嘘では無さそうだった。
「フレンチポテトカップ」という単発ドラマで、ゲストの高嶋政伸さんが5種類の芝居のパターンを考えて現場に来るらしいとマネージャーから聞いた。
それはそれで、役作りのひとつのやり方だと思う。
相手の芝居を見て自由自在に演技をする室井さんは、その話を聞いて、共演の佐野史郎さんと二人でカラカラと笑われ、獲物を狙うハゲタカの目になっていた。
やはり、室井滋さんは「自主映画の女王」だけの事はある。
佐野史郎さんも唐十郎さんの「状況劇団」の出身。
二人とも、「芝居」は「生き物」だと思っている。
決して、アタマでは考えない。
日本の女優さんの中でも、数少ないコメディエンヌでもある室井さん。
その演技はドラマを観ている人たちの心を明るくする。室井さんにしか演じられない役柄がたくさんある。
室井さんは霊感が強い。どんなに疲れていて、車の中でぐっすり眠っていても、靖国神社の横を車が通ると、パッチリ目を覚ますそうだ。
好奇心旺盛な室井さんは事件を追いかけて、エッセイにする。だから、人とは違った「クスッと笑えるエッセイ」が書けるのかも知れない。
室井滋さんとの出会いにつくづく感謝している。
室井滋さんの所属事務所「ホットロード」の本間那津子社長(通称・ふぐママ)にもとっても可愛がってもらった。