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横山やすしさん
横山やすしさんが亡くなられる前に大学ノート3冊に書き綴った日記をまとめた本をAmazonの古本で手に入れた。
僕は生前、横山やすしさんとは何度かお会いしている。
いちばん印象的だったのは「11PM」のゲストに来られた時。生放送で、女優の十朱幸代さんとの対談だった。
横山やすしさんは夕方、控室に入られた。それはこの目で確認した。
ところがリハーサルで呼びに行っても、やすしさんは控室にいないのである。
ADがやすしさんの代役を務める。
本番が迫って来ても横山やすしさんの姿はどこにもないのである。
マネージャーとスタッフ全員で夜の南森町「よみうりテレビ」界隈を手分けして、走り回って探す。
どんどん、生放送の時間は迫って来る。
横山やすしさんは見つからない!
23:00を廻り、スタッフみんなが集まって、対談コーナーをどうするか、話し合うが解決策が無い。
横山やすしさんがいないと成立しないのである。
本番ぎりぎり、23:20横山やすしさんは泥酔して完全に千鳥足で姿を現わしたのである。
顔は完全に真っ赤。
やすしさんは、十朱幸代さんのことが好きだったのである。
十朱さんはやすしさんにとって憧れの存在だった。
照れくさくて、素面では対談が出来ないと思い、夕方からお酒を飲み始めたらしい。5時間以上!
残酷にも全国ネット「11PM」の生放送は進み、CMに入った。CM明けから、十朱幸代さんと横山やすしさんの対談コーナーである。
僕たちADが控室にやすしさんを呼びに行く。やすしさんは畳の上に倒れており、もう立ち上がれないほど酔いが回っていた。
仕方なく、ADの僕と同期の諏訪道彦がやすしさんの両手を肩に掛けて、全く動く気配の無い横山やすしさんのそんなに重くない身体をスタジオまで引き摺って行く。
そして、既にセットに座られている十朱幸代さんの向かいの席に座らせた。
生放送で、横山やすしさんは全く喋れなかった。呂律が回らないというレベルではなかった。
やすしさんは、憧れの十朱幸代さんに泥酔している事を散々怒られた。
次のCMに入ると、横山やすしさんは、諏訪と僕に引き摺られ、控室に。
やすしさんが可哀想だと思った、その時は。
でも、そんなどこかとても純粋な横山やすしさんの事を僕は好きになっていた。
こんな事もあった。
正月のお笑い特番で、師匠の横山ノックさんと横山やすしさんが漫才をする事に。
二人は漫才の寸前、3分位ネタ合わせをすると、さすが素晴らしい爆笑の漫才を見せてくれた。
ただ、あの普段は強面の横山やすしさんがノックさんにツッコミ切れていない感じがした。
ニコニコ笑っていて、とても優しく見える師匠・ノックさん。
やはり、師匠は怖い存在なのだろう。
だけど、横山やすしさんが師匠をとても愛し続けている事も確かに伝わって来た。
芸人の師弟関係は本当に良いものだと思った瞬間だった。
「2時のワイドショー」に出演の為、南森町のよみうりテレビに来ていた横山やすしさんがパーラー横の公衆電話で怒鳴りまくっているのを見た事がある。
誰も怖くて、そのそばを通れなかった。
怒り方は漫才をしている時と一緒で、両手・両足を自由自在に激しく動かしていた。
なんだかんだ言っても、僕は横山やすしさんが好きだった。
1996年1月21日、横山やすしこと、木村雄二51歳永眠。
生きていたら、今年80歳。
今の「やすきよ」の漫才が見たかった。
「いとしこいし」とはまた違った味の漫才なったのだろうなぁー
それももう実現はしない。でも観たい。
これは贅沢な悩みなのだろうか?
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横山やすしさんが最晩年に書いた日記を本に