アフリカ・ナイロビ
ケニア・ナイロビ。郊外に出るとすぐにキリンの群れが僕の乗っているワゴン車と並走しているのが見え始める。
アフリカに来たんだなぁーと実感する。
舗装された道は未舗装になり、車は白い砂煙を上げて、一路アンボセリ国立公園へ。その道中でも、象を見たり、インパラを見たり。
3〜4時間走っただろうか。車はアンボセリのホテルに到着した。
部屋は丸いコテージ。シャワーとトイレにシングルベッド。
少し早めの夕食を済ませ、焚き火が燃えているスペースへ。
ここはマサイマラ国立公園のホテルと違って、ホテルの周りに「高圧電線」が張り巡らされており、動物は入って来れない。
焚き火にあたりながら、ギター奏者の演奏に耳を傾ける。アフリカの音楽だ。
お酒に酔って、音楽に酔う。酒と音楽のハーモニー。
一人旅の僕には本当に至福の時間がゆったりと過ぎていく様に思えた。
目の前には雄大なキリマンジャロ山がくっきりと見えている。この山は朝と夕方しか、その姿を現さない。
動物たちも暑い昼間は一切活動はしない。
キリマンジャロ山が雲の中から姿を見せる朝夕に彼らは動き出すのだ。
あの手塚治虫はアフリカを訪れたことはあるのだろうか?
目の前にある景色は、「ジャングル大帝」に出て来るサバンナの画そのものだった。いつ、レオが飛び出して来てもおかしくはない。
ギターの演奏も終わって、それぞれの部屋に戻る観光客。
僕も部屋に戻って、手紙を書き始めた。
その頃、足繁く通っていた大阪・京橋のエスカイアークラブ。ずっと指名していたバニーガール宛の手紙だ。
アフリカ、ケニアのアンボセリ国立公園から大阪・京橋の彼女への手紙。
帰国して店に行ったら、手紙は届いていた。その彼女とは何故か京都・河原町で一回だけデートした。その後、付き合った記憶が無い。今、彼女はどうしているのだろうか。
話が脱線したが、アンボセリ国立公園。翌朝は朝3時に起きて、「バルーンサファリ」へ。気球に乗って、空から朝活発に動いている動物たちを見るのだ。
飛行機と違って、ゆっくりと地面を離れる気球。
巨大なバーナーで空を飛ぶ。時々するバーナーの燃焼音以外は無音。まるで地上を走る様々な動物たちを追いかける様に飛んで行く。
上から俯瞰で見る動物たちは格別だ。空からでないと、こんなに近くでサバンナの動物を見る事は出来ない。
最高!「バルーンサファリ」。
しかし、「バルーンサファリ」をする事で、動物たちが驚き、ケニアから隣国タンザニアへ大移動。ケニアで見られる動物が激減しているらしい。
人間中心でものを考えてはいけない。
気球がヘナヘナヘナと縮んで地面に舞い降り、ぶら下がっているカゴが横向きに倒れる。僕らも一緒に倒れた。
僕が行った翌年、この「バルーンサファリ」に参加していた日本人が事故で亡くなった。
この気球の着陸時に事故は起きたのかも知れない。
サバンナにブルーシートが敷かれる。シートの四隅にはマサイ族の戦士が立つ。朝なので、動物が活発に動いている。ライオンなどの猛獣から僕ら観光客が襲われない為だ。
ブルーシートの上では気球のバーナーを使って、朝食の準備が手際良く進められている。
メニューは「焼いたソーセージ」と「スクランブルエッグ」。
「美味しい!」
と一口食べて絶叫してしまう程の味。
マサイ族に守られているとはいえ、いつ猛獣が襲って来るか分からないサバンナのど真ん中。一生忘れられない味となった。
そんな僕らに朝日が燦燦と照り付け、キリマンジャロが笑顔を見せてくれている様に僕には思えた。