「朝の連続ドラマ」撮影の裏側
台本に「京都・清水寺」のシーンが出てきた。早速、「製作部」がロケ交渉に行く。
1週間通い詰めても、撮影許可は下りない。
人を替えて、「AP」が清水寺に通う事になった。
通い始めて10日ほど経っただろうか、清水寺が根負けして、実景だけなら2カットまでOKと言ってくれた。
昔、「東映」が「清水の舞台」の上で派手にチャンバラをやって、いたる所に傷をつける出来事があったという。
それ以来、撮影には貸していないのだそうだ。
僕たち「ロケ隊」は有り難く、実景を撮り、僕たち撮影隊は南下した。
小ぶりだが、「同じ様な舞台」のある奈良・長谷寺で「清水の舞台の上の芝居」を撮る為だ。
カメラを下からアオリ気味にして、「空バック」で撮影すると、清水寺の実景とよく馴染み、良いシーンが完成した。
こんなことも。
「屋敷の中」はスタジオに建てた「セット」で撮影し、「屋敷の表」の出入りは京都・亀岡の大きな農家の表を使って撮影した。
亀岡は、京都の時代劇「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」などのロケ地がいっぱい。
舗装されていない道や雑木林などの自然がたくさん残っているからだ。
千里中央にあるスタジオから亀岡まで1時間半。
屋敷・表のシーンを1日かけて、まとめて撮る。
冬などは雪が降り積もる亀岡。そんな時はスタッフ総出で雪掻きをした事も。
この当時、「携帯電話」はまだ無いから、亀岡のロケ地から会社に電話するのには苦労した。
「製作部」の車に乗っけて貰い、近くの喫茶店まで行く。
ピンク電話で「着信払い」の番号にかけて、自分の名前を交換手に言う。会社に電話を繋げて貰うのだ。
しかし、一回だけ、この「着信払い」を「会社側」に断られた事がある。
その時はありったけの10円玉を電話機の上において、出来るだけ早口で用件を喋った。
今は「携帯電話」があり、便利ではあるが、ロケ中に会社や俳優さんの事務所から直接電話がかかってくるのも、精神衛生上良くないと思うのは僕だけだろうか・・・