僕は病院が好きだ‼️
僕は、「病院」が好きだ。「注射」も好きだ。「点滴」も好きだ。
幼稚園に入る前、高熱を出して、斜視になり、両眼を手術した。結果、斜視は治り、病院の廊下で元気に遊べるまでになった。
僕は、少しでも、「熱」が出ると大騒ぎする子供だった。小児科に行き、お医者さんに診てもらうと、薬をもらわなくても、帰り道はるんるんスキップしていた。
大人になって、A型肝炎と胆嚢ポリープ摘出手術で入院。
南米で、A型肝炎の菌に感染。γーGTPが1600を超え、顔に黄疸が出た。毎日、朝夕、肝臓の機能を良くする為の「点滴」を3週間した。
当時、読売新聞夕刊の山田太一の連載小説を読むのを楽しみにしていた。午後2時半に病院の一階ロビーに行くと、新聞自販機にはまだ配達されていない。午後4時頃に行くと、売り切れ。タイミングを測るのが難しかった。でも、こんな小さな事が大きな楽しみになった。
何故、入院が楽しいかと言うと、規則正しい生活を送る事ができ、なおかつ、「薬」「注射」「点滴」で、日々健康になっていく様な気がするから。
それと、一般のサラリーマンが働いている時に、ベッドで読書や昼寝が出来る事。
新幹線で駅弁を食べながら、ラッシュ時の山手線・京浜東北線の車内を見ている感じだろうか。
つまり、非日常の世界へ逃げ込んでいるという事。「病気」という名目で。
胆嚢ポリープ摘出手術。予定では3時間程の手術だったが、脂肪肝が邪魔して、8時間もかかった。僕は、「3.2.1.麻酔がかかりますよ」と言われてすぐ、「今村さん、起きて!手術終わりましたよ」8時間が一瞬で終わった。妊娠中の妻と母は、時間がかかっている事に不安になりながら、手術室の前の廊下で待っていたのだから、本当に心配をかけたと思う。
そんなある日、僕のところに、東京でドラマをやっている先輩プロデューサーから花が届いた。大阪で一緒に「朝ドラ」を作った人だった。「今村も早く東京へ来て、一緒にドラマをやろう」という言葉が花には添えられていた。
その時、先輩がやっていた連続ドラマが、石田ひかり主演の「悪女(わる)」である。確か、放送開始が午後10時からで、病院の消灯時間を過ぎていたので、カーテンを閉めてイヤホンで観た。ドラマを観ながら、先輩の気持ちを感じて、僕の目から涙が溢れ出ていた。