二人の監督の話
朝の連続ドラマ「京一輪」(渡辺典子主演)、そして「華の宴」(五十嵐いづみ主演)、両作品には二人の監督が関わった。
円谷プロダクションで「ウルトラマンシリーズ」を手がけた真船禎監督。
そして、東映東京撮影所で「鉄道公安官」等を手がけた中津川勲監督だった。
真船禎監督は、台本の出来上がりが遅れに遅れて、収録当日早朝になった時、「こんな状況の方がやりやすいんだ」とスタジオでおっしゃっていた。
後年、偶然東京でお会いした時、その時の事を話したら、「あんな状況で監督が焦る姿を役者に見せられないだろう」と言われた。
冗談のつもりで、「僕とチーフカメラマン菊川雄士の子供が同時期に生まれました。朝ドラの撮影がハード過ぎて。人間、死にそうになると子孫を残そうとしますよね」と言った。
冗談のつもりで・・・
しかし、真船さんには冗談が全く通じず、明らかにムッとしておられた。とても真面目な方なのだ。
真船禎監督は、元々はTBSのディレクターで円谷プロダクションへ出向し、フリーの監督になられた。
今、90歳は超えておられるだろう。お元気だろうか❓
中津川勲さんの方は大酒飲みで、よる7時から飲んでも、よる10時から飲んでも、飲み終わるのは、いつでも朝7時。
しかも、どんなに飲んでも変わらず、優しい(実は怖い)笑顔を称えておられるのだ。
最初は中津川監督に誘われ、飲みについて行った助監督も一人倒れ、二人倒れ、そのうち中津川監督から誘われない様に監督を避けていた。
僕が、中津川監督の泊まっているリーガロイヤルホテル大阪に台本を届けに行った時、「今ちゃん、もう仕事は終わったんだろう。ビールでも飲もうよ」とホテルのバーに誘われた。夕方で暗くなろうとしていた。
堂島川にネオンの灯りが映し出されていた。
僕は監督とビールを酌み交わした。監督は飲み相手ができて、とっても嬉しそうだった。
みんながまだ仕事をしている時、二人で飲むビールはやはりひときわ美味しかった。
あるロケの日、中津川監督が集合場所に来ないので、ロケ隊は京都に向けて先に出発。
制作担当がホテルに監督を迎えに行った。
まだホテルの部屋で寝ていた監督は、二日酔いで気持ち悪くなり、突然、高速をすっ飛ばす車のドアを開けて吐いた。
制作担当が、「止めてください‼️監督‼️」と叫んだが、構わず吐き続けたのだった。
中津川勲監督は無事、京都の河畔のロケ地に現れた。
3カットだったカット割りは2カットになり、ロケ隊は早々にロケ地・京都を後にした。
今でも、ホテルで一緒にビールを飲んだ時の監督の楽しそうな、いたずらが見つかった子供のような顔が忘れられない。
名神高速道路に撒き散らされた中津川勲監督の「ゲロ」はどうなったのだろう❓
お酒が大好きな中津川監督。
中津川監督も奇跡的(笑)に長生きされており、多分今80代後半になられるだろう。
人と人はやっぱり「出会い」なのである。
そして、その「出会い」を作ってくれるのが「ドラマの撮影現場」なのである。