11PM
「11PM」のADをやっていた時の1日のスケジュールは次の様なものだった。
夜が遅くなるので、昼頃出社。夕方5時からの「技術打ち合わせ」に出る。ここでディレクターから、どのコーナーでどんな映像をどのカメラで撮るか、説明される。
「技術打ち合わせ」が終わったら、早めの腹ごしらえ。会社の向かいの中華料理店に同期のADと駆け込み、ラーメンとチャーハンを5分で食べる。若いから出来た事だ。
そして、MC、ゲストを入れ、台本に沿って打ち合わせをする。一度、打ち合わせをしている最中に、あのアイドル・河合奈保子が通って、思わず、「河合奈保子や!」と言ってしまい、周りの顰蹙を買った事もあった。
夜7時半からは、水着ギャルの事前収録。火曜イレブンは、毎週ギャルが変わるのだ。このギャルが3つの鏡をバックにポールを使って踊るコーナーのディレクターが、ADのディレクターデビューだった。
夜9時40分頃になると、リハーサルが始まるので、社屋の隣にある「ティジャ」というステーキハウスに藤本義一さんを呼びに行く。CPと藤本さんはこの店で水割りを飲みながら待っているのだ。
今の番組と違って、基本リハーサルは行ない、上手くいかなかったところは、ディレクターも入れて解決策を話し合う。
いよいよ、夜11時20分過ぎ、生本番。生放送が始まると、終わるのは早い。
終わって、夜0時半、スタジオ出口で藤本さんを制作スタッフが囲み、今日の反省と先のラインナップの確認。
5階の制作部に上がり、イレブン弁当(会社の食堂が用意してくれる冷たい弁当。ADしか食べない)を食べながら、先輩方の話に耳を傾ける。ビールを飲みながら、応接セットを囲んでである。
ディレクターになってからは、まず、制作の反省会に顔を出し、引き続き、同じ階の技術スタッフの飲み会に参加して、意見を聞くのが恒例の儀式だった。
制作部の方で話が乗ってくれば、おばあちゃんが一人でやっているお好み焼き店か(人手が無いので、ビールは勝手に出して飲んでいた)、空心町のニンニクラーメンの店に行って、チャーシューやもやしをあてに、「テレビとは何か?」を巡って熱い討論になった。時には喧嘩になる事も。
午前3時。タクシーに乗って帰宅。タクシーの中で、今日あった事を反芻し、心地良い疲れの中、冷静になっている自分がいた。
テレビをやっていて、どの時代が良かったかと聞かれたら、間違いなく、「11PM」の時代と答える事だろう。ビールを飲みながら、あれほど、「テレビ論」を語った時代は無かったのだから。