ドラマの「制作進行」
「制作進行」は地図の上に半透明な紙を載せ、地図の必要な部分のみトレースする。分かりやすいロケ地図を作る為だ。ロケ地までの道に、目印になるガソリンスタンドなどの施設を書き込み、完成させる。まだ、カーナビが無かった頃の話。
「ロケスケジュール表」をキャスト・スタッフ分コピーして、各セクションに配るのも、「制作進行」の大切な仕事。
「ロケバス」「技術車」「照明車」「美術車」「俳優さんの車」等、ロケ隊には車が多い。どの1台が道に迷っても撮影ができなくなる。
それゆえ、「制作進行」はロケハン(ロケの下見)の時、どんなに疲れていても、寝る事はできない。目を見張って、移動する道を憶えなければいけないからだ。
彼が作るロケ地図の出来で、いかにロケ隊が効率良く移動できるかが決まる。
ロケ当日の「制作進行」の仕事。早朝、ロケ出発の前、夏なら氷入りの麦茶を作り、冬場はポットに熱いコーヒーを仕込む。
ロケ現場に着くと、全車両をいちばん作業がしやすい場所に誘導。
現場では、飲み物やお菓子、救急箱等を載せたワゴンを転がし、キャスト・スタッフの「憩いの場」を作るのも大事な仕事。弁当屋が配達してくれた弁当を受け取り、俳優さんの控え室やロケバス、各部署に手際良く配っていく。
この弁当を発注するのも大切な仕事。
複数の弁当屋のメニューを取り寄せ、よく吟味して選ぶ。弁当はロケ現場での数少ない楽しみだからである。
「制作進行」は基本、現場にいて何でもする。車止めをしたり、セミの鳴き声を止めたり(季節の設定が夏と違う場合)、移動撮影用のレールを運んだり。
冬の極寒のロケでは使い捨てカイロを配ったり、暖を取る為、ガンガンと呼ばれる大きな空き缶に火を起こしたりと、現場に必要な事を感じ、すぐ反応しなければならないのだ。
この時、「制作担当」「制作主任」は、まだ決まっていないロケ地を探しにロケ現場を空けている事が多い。
「制作進行」はロケが終わっても仕事は終わらない。
各部署の車両の高速代や駐車代の精算、ゴミ捨て、ポットの洗浄などなど。
さらに翌日のロケの地図を書いて、スタッフルームで数時間仮眠したら、ロケに突入という感じ?
あるドラマで「制作進行」が若い女性だった事があった。
夏、炎天下の井の頭公園や八王子でのロケ。
男でもアタマがボーッとなってしまう茹だる様な暑さの撮影現場だった。
しかし、彼女はどんなにしんどくても素敵な笑顔を見せてくれた。
その笑顔にスタッフは癒され、元気をもらった。
そして、彼女はそのドラマのカメラマンと結婚した。お幸せに!とみんなに言われながら。
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