TMC

僕が「ダウンタウンDX」(読売テレビ制作日本テレビ系・1993年〜)の「宣伝」をやっている時代、「TMC」にはよく通った。

「TMC」とは「東京メディアシティ」というスタジオの事。場所は小田急線の「祖師ヶ谷大蔵駅」から歩いて10分位の場所にある。

元々、戦後、「戦車以外は何でも来た」と言われた「東宝争議」(東宝経営者と労働組合の争い)の際、争議に嫌気が差した俳優・監督などのスタッフが「東宝」を辞めて作ったのが、「新東宝」と言われている。

今は「日大商学部」の敷地になっているが、その敷地は「新東宝」が売却したものであり、全盛期には「オープンセット」もあり、現在の「東宝撮影所」と隣り合わせであったらしい。

僕が「TMC」に通い始めた時には「オープンセット」の残骸がまだ残っていた。

「新東宝」が作った映画は累計数百本とも言われている。自社の映画配給網が弱かった「新東宝」は1962年、事実上倒産。

数年後、「阪急グループ」(今の「阪急阪神グループ」)「TBS」「フジテレビ」を母体とする「国際放映」という会社になり、主に「テレビドラマ」(フィルム撮影)の製作を目的としてスタジオが機能する事に。

ここで撮影されていたのが、「太陽にほえろ」(日本テレビ系)、「ケンちゃんシリーズ」(TBS系)、「コメットさん・九重佑三子版、大場久美子版共)」(TBS系)などなど。

凄い時は、朝ロケバスが20台以上も「国際放映」の前に並んだそうである。

その後、VTR収録用に改装されて、「フジテレビA1・A2スタジオ」「レモンスタジオL1・L2(関西テレビ)」「TBS K1・K2スタジオ」そして、「東海テレビ」が「昼の帯ドラマ」で使っていた「TMC-1スタジオ」、7つのスタジオになった。

僕が「TMC」に通っていた頃、10年前の話である。

ちなみに初期の「警部補 古畑任三郎」(フジテレビ系)もここで撮影されている。

「TMC」の一階には「今昔庵」という喫茶店が有り、そこのマスター・天然パーマの福田さんが「名物おじさん」だった。

福田さんの許可無しに席に座ろうものなら、激怒された。少し変わった人だった。

彼は「TMC」で撮影される各局のドラマや番組にも多数出演していた。

ここの「ミックスジュース」が美味しくて、あの味は忘れられない。

「今昔庵」で「宣伝リリースの原稿打合せ」を何度やった事だろう。

ある日、「ダウンタウンDX」を撮っている時、隣のスタジオでは、「ドリフ大爆笑」(フジテレビ系)の「オープニング」と「エンディング」(『ド・ド・ドリフの大爆笑♪』から始まる歌」を歌いながら、無気力にザ・ドリフターズがカメラに向かって踊るシーン)を撮っており、ダウンタウンの浜田雅功さんが「ザ・ドリフターズ」の志村けんさんと話す光景も見られた。

また、木村拓哉さんが楽しそうに浜田さんと「今昔庵」で話し込むシーンもあった。二人はTBSの遊川和彦さん脚本「人生は上々だ」という連続ドラマで共演した仲である。

現在、「K1・K2スタジオ」が「TBS」(赤坂に新たにスタジオを建設)から「NHK」に、「A1・A2スタジオ」が「フジテレビ」(「湾岸スタジオ」を新設)から「国際放映」に管理が移っている。

「秘密のケンミンSHOW 極」(読売テレビ制作日本テレビ系全国ネット・2007年〜)も現在は「TMC」で録られている。

それでも、芸能人が多く住む世田谷区のど真ん中にある「TMC」(「砧スタジオ」とも呼ぶ・世田谷区砧)では「関西テレビのドラマ」「在京・在阪局のバラエティー番組」の収録が日々行われている。

旧知の俳優さんやドラマの監督、一緒にドラマをやったスタッフに会えるので、2週間に1回、「TMC」に行くのを僕は楽しみにしていた。

もちろん、一般の人は「夢の工場」である「TMC」には入れない。

「今昔庵」のマスター福田さん、心臓が悪くて入院していた事もある。お元気にされているか、心配だ。今でもどこかで喫茶店をやられているのだろうか?

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