107歳、青木のおばさんの死

先週、母の叔母が107歳で天寿を全うした。

大正・昭和・平成・令和と激動の四つの時代を生き抜いて来られたのだ。

亡くなられたのは、僕から見れば、母方の祖父の妹になる。

祖父は昭和の時代に亡くなっているから、妹の方がかなり長生きした事になる。

「青木のおばさん」

母は叔母の事をそう呼んで、とっても慕っていた。

叔母は、施設に入るまで、岡山の瀬戸という所に住んでおり、母と僕が車で立ち寄ると、いつも、畑から取り立ての大根などの野菜をくれた。

いつも、その顔には温かい笑顔があった。

叔母が生まれたのは、多分1917年。大正6年である。

第一次世界大戦、ロシア革命・ソビエト連邦の誕生。

アーネスト・ボーグナイン(アメリカの俳優)、山田五十鈴(女優)、沢村栄治(プロ野球選手)、芦田伸介(俳優)、柴田錬三郎(作家)、ジョン・F・ケネディ(アメリカ大統領)、浜口庫之助(作曲家)、トニー谷(コメディアン)、インディラ・ガンディー(インド首相)が生まれた年でもある。

両親は明治生まれだったのだろう。そのまた両親は江戸時代の生まれかも知れない。

1945年、昭和20年8月15日、終戦。

叔母は28歳。ひもじい生活をしていたと想像する。

そして、日本の高度成長期。子供達を育て、畑を耕し、苦労も幸せも感じながら、普通の人として生きて来たのだろう。

そして、2024年4月、天国の兄の下へ召された。

僕は子供の頃、水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」の中で、こんなシーンを読んだ記憶がある。

大きな洞窟の中に、たくさんのろうそくが立っている。

細く長いものも有れば、太く短いものも有る。無数のろうそく。

漫画の登場人物が語る。

「人生、こんな風に、短命だったが太く生きた人もいれば、長寿で細く生きた人もいる。それをこのろうそくは表しているのだ」

どっちが良い悪いと言う訳では無い。

一歳に満たないで人生を終わる人もいれば、叔母の様に107歳まで生きた人もいる。

でも、どちらの人生にも「幸福な時間」があり、「悲しい慟哭したくなる様な時間」もある。

それは「人生の長さ」によって、変わってくる訳では無いと僕は思う。

「人間」は交通事故等によって、突然「死」を迎える場合もある。

僕たちは、「いつ死ぬか分からない」から、「生きている実感」があるはずだ。

「生きる目標を見失った」「生きている意味が分からない」という風に感じている人々は、今の世の中多いのでは。

そんな時、「死」を見つめれば、「生」の意味を感じ取れるのでは無いだろうか?

107歳の「青木のおばさん」の死に接し、そんな事を考えた。

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