濡れたTシャツ
「濡れたTシャツ」。
「11PM」のコーナーの名前である。
若い女性がTシャツだけを着て、海岸を歩いたり、海に飛び込んでTシャツを濡らしたり。プールサイドのシャワーをTシャツ姿で浴びたり。
見事な企画である。全裸の女性より「エロ」を感じる。
僕は高校生の頃、深夜、親が寝静まった後、イヤホンを付けて、「11PM」のエロいシーンを観ていた。
インターネットもHDDレコーダーも無い時代、「エロ」は生放送の深夜番組でしか見る事が出来なかった。
当時のイヤホンは短く、テレビの画面の近くに顔を寄せて観た。
親が起きて来そうな気配がすると、急いでチャンネルを回した。
関西地区では「11PM」が10チャンネル、放送の終了した「NHK教育テレビ」が12チャンネル。
急いで回した、いちばん近いチャンネルが12なので、画面は何も映っておらず、「砂嵐状態」。
イヤホンも思いっきり引っ張ってちぎれそうだ。
親が寝室から出て来た時、何も映っていないテレビを見ている高校生の息子を見て、かなり不審に思った事だろう。
それくらい、思春期の僕は「エロ」を欲していた。他の男子と同じ様に。
やがて、就職が決まり、僕は「11PM」のスタッフになった。
人気コーナー「秘湯の旅」では女性2人がトップレスで「温泉の効能」を毎週喋る。
スタジオからの生放送で「ストリップ」をやった事もあった。
この回は、プロ野球中継の影響で30分遅れで24:00前から放送された。深夜である。
しかし、視聴率はびっくりする程、高かった。
「高校生時代の僕」同様、「エロ」を「11PM」に求めている男性がいかに多かった事だろう。
少し時代は遡るが、僕が高校に入った頃、映画「エマニエル夫人」が公開された。
高校の同級生が映画館の切符売り場で「学割1名」と言って、入場を断られた話には笑ったが、この映画の宣伝は巧かった。
「エロい映画」を全く前に押し出さず、「ファッショナブル」な映画として、ポスター含めて宣伝したのだ。
その「ファッショナブル」で「エロ」を前に出さない宣伝が、女性層に人気になり、「エマニエル夫人」は大ヒットを記録した。
テレビドラマ「失楽園」(1997年)。主演は古谷一行と川島なお美。
「テレビドラマでここまでエロスを追求しても良いのか？」
世間では大きな話題となり、最高視聴率は27.3%に達した。
母が言った。
「『失楽園』って、下品ね。あんなドラマを観る人の気が知れないわ‼️」と。
しかし、実家のテレビは、毎週月曜よる10時、必ず読売テレビ「失楽園」に合わせられていた。
やはり、あれだけの高視聴率番組、女性視聴者が観ていないと成り立たない。
実は女性も「エロ」が好きなんだ。きっと。
男性は直接的に「エロ」に接触していくが、女性は、オブラートに包んで、「エロ」に接していくのでは無いだろうか？
この「コンプライアンス遵守」の世の中、地上波テレビでは「エロ」を前面に押し出した番組は壊滅的に減った。
ほとんどゼロになったと言っても過言では無い。
その分、インターネットや配信、SNSで「エロ」は脈々と流れ続けているのである。
SNSでは「素人女性の裸」が堂々と流れている現実。
ここまで書いて来て思った事。
男の子は「思春期」に親に隠れて「何か後ろめたい事」をした方が良い。
それが健全な育ち方だとも。