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煩わしいことに関わる重要性

オートメーションやAIがさらに進む社会において、人間に残された領域は「わずらわしい」仕事である。従って、こうした「わずらわしい」ことを効率化する際に、人任せや機械任せにしてはならない。もし、日々の生活で「わずらわしい」と感じる作業や問題を避け続ければ、それらを解決する能力や知恵を失う恐れがある。「わずらわしい」ことには、単なる手間以上の価値が潜んでいる。それは、物事を深く考える力を養い、他者との協力や対話を生む機会を提供するからである。

たとえば、人間関係の摩擦や複雑な手続きといった面倒ごとに直面することで、忍耐力や問題解決能力を磨くことができる。一方で、こうした「わずらわしさ」をすべて機械に任せた場合、効率化の恩恵を受ける一方で、人間性の本質的な部分が失われる危険性がある。たとえば、AIが対人コミュニケーションを代行するようになれば、人間同士の感情的なやり取りや共感能力が薄れ、社会全体の繋がりが希薄になる可能性も否めない。

よって、「わずらわしい」と思われることに主体的に関わり、それを乗り越える経験を積むことが、これからの社会で人間が持つべき価値を高める鍵となる。「わずらわしいこと」を嫌うのではなく、それを引き受け、自ら解決する姿勢が、個人としての成長だけでなく、社会全体の発展にもつながるのである。

特に教育分野では、子どもたちが結果を出しやすいように「理解」を補助する便利なシステムを取り入れることが求められている。しかし、過剰な指導が子どもの健全な成長を阻むという研究もある。度を超えてわかりやすく教えることで、子どもたちが物事を咀嚼して理解し、自ら身につける力が弱まる恐れがある。

従って、教育現場では、子どもたちが「わずらわしい」と感じるプロセスに敢えて取り組む環境を整えることが重要である。わからないことに向き合い、試行錯誤しながら解決策を見つける経験は、単なる知識の習得を超えた、思考力や創造力の育成につながる。たとえば、自ら調べ、考え、議論する機会を与えることで、子どもたちは主体性を持って学ぶ姿勢を身につけることができる。

一方で、わかりやすさを優先しすぎる教育は、短期的には効果を上げるかもしれないが、長期的には問題解決力や自立心を損なうリスクがある。そのため、教える側は、適切な「わずらわしさ」を残す指導法を意識すべきである。課題の一部を解き明かす手助けはしても、すべての答えを与えるのではなく、子どもたちが自ら答えを導き出すためのヒントを与えるに留めることが望ましい。

さらに、「わずらわしい」ことに挑む姿勢を教育現場で育むことは、社会全体にも良い影響を与える。未来の社会を支える子どもたちが、困難を避けず、それを乗り越える力を持つことで、より持続可能で柔軟な社会が築かれるだろう。したがって、「わずらわしさ」を単なる障害ではなく、成長の機会と捉え、それを教育や生活の中に積極的に取り入れることが、これからの時代に必要とされるのである。

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