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引ったくりの犯人は頭のいい慈鳥(じちょう)10分間の恐怖。
家から車で30分の所に我が家のお墓がある。
お盆やお彼岸、命日の前には必ず掃除に行く。
山を削って作った墓所は見晴らしは良いが、
とにかく坂、坂、坂。
駐車場に車を止めて、その坂道を荷物片手に手摺り伝いに登って行く。
フーフー言いながら我が家のお墓に到着した頃には、
一仕事終わったかのような脱力感。
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水分補給して掃除する前に休憩することにした。
辺りは何もなく、自然豊かで静かだ。
しかしこの日はヤケにカァカァと鳴き声がする。
見上げると、やはりカラスが2羽飛んでいる。
かなり高い場所の木から木へと飛び交っていたから、
私は一向に気にしなかった。
休憩も終わり、屈んで墓地の雑草を抜き始めた。
何やら視線を感じる…
ふと顔を上げてみたら、カラスと目が合った。
![](https://assets.st-note.com/img/1725572658-HCum0qpcMIXyWD9ZnJOvg8V4.jpg?width=1200)
『んっ?』
![](https://assets.st-note.com/img/1725573895-2mfiIDFvQgo7Tbu6OzwZyNGa.jpg?width=1200)
『えぇーーーーーーっ!!!』
カラスが墓石の上に止まり私を凝視していた。
いつの間にやって来たのか…
全く気づかなかった。
墓石は6柱、その内3柱に3羽…
完璧にロックオンされた。
1メートルの至近距離でカラスと見つめ合った経験は生まれて初めて。
カラスの大きさ、黒さ、口ばしのツヤ、爪の鋭さ。
![](https://assets.st-note.com/img/1725573867-k0TzVjNGvqymI7W3F2f4SbPw.jpg?width=1200)
もぉ〜怖くて動けない。
『な、な、何の用?』
震えながら声を出した。
払いどけたい気もしたが、
下手に騒ぐと攻撃されかねない。
1対3 襲われたら間違いなく大怪我だ。
カラスは微動だにせず、ジーっと私を見てる。
今まで墓掃除に、カラスが寄って来たことなんかないのに。
今日は何?
しかも3羽も…
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『た、た、食べるものなんか持って来てないよ。』
『さっさとあっち行けぇ〜っ!』
『そ、そ、掃除の邪魔するなって。』
視線に耐えきれず口走ってみたものの怖い。
この状況どうなって行くの?
不安が襲って来る。
知らんふりして雑草抜いてみる?
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いやいやぁ…ムリムリムリムリ…
目を逸らした途端、襲いかかって来るかも〜。
3羽は家族?親子?兄弟?
ただの仲間?
墓所を縄張りにしてるグループ?
もう変な事ばかり頭に浮かぶ…
今日のターゲットがもしや私ってこと?
それは不可解過ぎる。
右手にホウキを握りしめ、
ゆっくりゆっくりカラスを刺激しないように立ち上がった。
と、その瞬間…
バァサァ〜!っと羽根の音がした。
1羽が私の足元目掛けて飛んで来たかと思いきや、
空に向かって飛んで行った。
残りの2羽も1羽の後に続いて大空へ…
秒の出来事に何が起こったのか…
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素早過ぎて一瞬の現実を記憶してない。
『えっ!ビニール袋?』
足元に置いていたビニール袋がない!
![](https://assets.st-note.com/img/1725612770-GfHlhU6eWkEnd1t0RTvqzLXO.jpg?width=1200)
ひったくられた!
大空を飛ぶカラス3羽を見つめながら…
記憶を巻き戻しつつ、
しばらくして、状況を理解した。
カラスは駐車場から荷物片手に歩く私を、空から監視していたのだ。
私は確かに白いスーパーの袋を持っていた。
中身は雑巾と花切りバサミとゴム手袋だが、
食料が入ってると
カラスはそう思ったに違いない。
カァカァと鳴いて仲間に知らせていたんだ。
『食べモノみ〜つけたっ!』ってなわけだ。
あ〜怖かった、怖かった、
動悸がおさまらない。
花切りバサミを取られた事は悔しい!
けれど襲われずに済んだことは幸いだ。
しかしカラスの羽色は見事な黒だった。
なんかちょっと羨ましい…
掃除もそこそこに、その日はサッサと墓地を後にした。
ーーカラスの別名は慈鳥(じちょう)ーー
カラスにはカラスの子供が成長すると、その親に餌を運んで養うことから、「烏に反哺の孝あり」と言われ、慈鳥と言う別名を持つ。