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EV電池のレアメタル9割回収事業:資源の海外流出防止に向けた新技術2024年10月7日(朝刊)




1. EV電池からレアメタルを9割回収する技術の実用化

日本の火力発電大手であるJERAは、電気自動車(EV)の中古電池からコバルトやニッケルなどの希少金属(レアメタル)を約9割回収できる技術を実用化する見通しを発表しました。EVのバッテリー生産には、携帯電話数千台分に相当する大量のレアメタルが使用されており、その回収は資源の再利用だけでなく、経済安全保障の強化にも繋がる重要な取り組みです。

従来の技術では、EV電池の回収率は約6割に留まり、素材の劣化が課題とされていました。しかし、JERAが開発した新しい技術では、高電圧をかけることで衝撃波を発生させ、熱処理を伴わずに希少金属を効果的に分離することが可能になり、これにより二酸化炭素(CO2)の排出量も削減されます。


2. 日本国内のリサイクル拠点と経済安全保障への影響

日本国内におけるEVの普及が進む中、寿命を迎えたリチウムイオン電池の廃棄量は今後急増する見込みです。2030年には、廃棄されるEV電池が現在の7倍にあたる年間約15万台分に達する予測があり、この問題への対策として国内にリサイクル工場の設置が急務とされています。

JERAは2030年代前半に国内専用工場を稼働させる計画で、リサイクルの促進を目指しています。加えて、欧州などの厳しいリサイクル規制がある市場での事業展開も視野に入れています。これにより、日本は希少金属の自給率を高め、中国などからの輸入依存を減らし、経済安全保障を強化する方針です。


3. EV電池リサイクル市場の拡大予測

日本総合研究所の試算によれば、2050年までにEVバッテリーの再利用とリサイクル市場は国内で約2兆4000億円に達する可能性があると予想されています。しかし、現状ではこの分野の制度化が遅れており、市場の成長ポテンシャルが失われる危険性が指摘されています。

一方で、住友金属鉱山やJX金属などの大手企業もリサイクル技術の開発に取り組んでおり、希少金属の回収率を9割に引き上げる新技術の実用化を進めています。こうした技術の進展が、市場の拡大と持続可能な経済の実現に貢献すると期待されています。


4. 世界におけるレアメタルのリサイクル動向

レアメタルリサイクルは、日本だけでなく欧州や米国でも注目されています。欧州連合(EU)は、EV電池の再資源化に関する厳しい目標を設定し、再利用率の向上を図っています。また、米国では、電池に含まれる鉱物の一定割合を国内や自由貿易協定(FTA)締結国から調達することがEV購入時の税額控除の条件とされています。

特に、リチウムやコバルトなどの重要鉱物は中国が世界の供給シェアの大半を占めており、輸入国は自国でのリサイクル技術の強化を急いでいます。JERAをはじめとする日本企業がリサイクル技術を発展させることは、世界的な競争力の強化にもつながります。


5. 経済ニュース:外貨準備高の増加と米国債の影響

2024年9月末時点の日本の外貨準備高は、1兆2548億ドル(約186兆円)と、前月末比で1.5%増加しました。これは、米国債の金利低下により米国債の時価評価額が上昇したことが一因です。外国債券や証券の保有額が増え、対ドルでのユーロ相場の上昇も影響を与えました。

また、9月末の金相場の上昇により、日本が保有する金の時価評価額も上昇しました。外貨準備高の増加は、経済の安定性を高める要因の一つとして注目されています。


6. 今日のまとめ

JERAによるEV電池のレアメタル9割回収技術は、日本における希少金属の自給率向上に向けた重要な一歩です。国内でのリサイクル拠点の整備や、経済安全保障の観点からも、この技術の実用化は大きな意味を持ちます。今後、EVバッテリーの廃棄量が増加する中で、再利用とリサイクルの市場が拡大する見込みです。

また、世界的にレアメタルのリサイクルに関する競争が激化する中で、日本が先進的な技術を実用化することは、国際市場での優位性を確保するための重要な取り組みとなるでしょう。

一方で、経済面では外貨準備高の増加が見られ、米国債の金利低下やユーロの上昇が影響しています。

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