灯台のぼる記 #11 今津灯台
もう1ヶ月ほど前のことになりますが、兵庫県西宮市にある「今津灯台」の内部公開に行ってきました。
この今津灯台、酒造会社が所有する民営の灯台。
建立は1810年(文化7年)だそうで、現役の灯台としては日本最古、らしいです。
色々とレア度が高いですね。
つくりは簡素な木造で、灯台というよりも常夜燈みたいな感じです。
高さは6.7m(基礎部を含む)。
江戸時代の建立当初には、皿に油を張って火を点けていたのだとか。
なお、灯器自体は2013年(平成25年)にLED化されています。
そんな灯台好きの心をくすぐる今津灯台なんですが…
写真のように、目の前にでっかい水門が建ちました。
兵庫県が策定した防災インフラ整備計画によるもので、2016年ごろから工事が進められていたのだとか。
このままでは灯台の光が水門に遮られて見えません。
そこで、今津灯台を海側に移設する計画が進められています。
移設となれば当然ながら、いったん解体されることになります。
所有者の大関酒造と西宮市が話し合って、この解体を前に初めての内部公開を行うことにしたのだそう。
と、ここまでが公開に至るまでの経緯のお話。
旧堺燈台は年2回程度の一般公開にかかわらず待ち時間ほぼゼロだったので、今回もすんなり入れるだろうと油断しておりましたところ…
行列ができていました。
小さな灯台で一度に中に入れる人数が少ないことと、灯台の内部でガイドの方が丁寧に解説をしてくださるために待ち時間が長くなっていたみたいです。
40分ほど並んで、中へ。
といっても灯ろう部分にのぼれるわけではないので、中から内部構造を見上げて見学する、という感じですね。
内部には梯子かかかっています。
この灯台が作られた当時は油を燃やして灯りにしていたので、火を絶やさぬよう見張りがここを上り下りしていたのでしょうか。
灯台の外装は木を並べてかぶせているだけらしく、強風が吹けば飛んで行ってしまいます。
それを防ぐために、四隅に石を配置して、柱と石とを固定してありました。
その石の上には、お賽銭が…。
案内のスタッフさんいわく、「いつの時代に置かれたものか分からない」そう。
こんなところでも歴史を感じます。
後世の耐震補強などによる改修をのぞき、構造は建立当時のものを踏襲しているようです。
柱と柱が組まれた部分も、釘を使わずに仕上げられているとのこと。
見学は3分ほどで終了。
もっと見ていたいという気持ちもありつつ、まぁこれ以上いても見るものがないよなぁ、という思いも芽生えつつ。
ただ、これだけ簡素なつくりの灯台が時代を超えて残っているというのは素直に驚くべきことですし、そこに歴史的価値を見出して補修を続けてきた酒造会社の方々の努力にも頭が下がる思いです。
そんなわけで、今回は今津灯台の公開レポでした。
次回の「のぼる記」は、8月に訪れたまま放置している出雲日御碕灯台について書く予定です。
2023.1.11
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