新規事業の成功率はなぜ10%未満なのか
新規事業の成功確率は10%未満、なぜそんなに成功確率が低いのでしょうか。
最大の理由は、「会社として新規事業の経験が少ない」ということに尽きます。
会社として新規事業経験が乏しければ、新規事業開発に必要な判断軸や風土、事業開発プロセスなど実質的には存在していないでしょう。そのような中では、任命された新規事業リーダーがどれだけ有能でも、孤軍奮闘は避けられず、社内政治や調整など内向き活動に過度に翻弄されます。
新規事業リーダーが社内で相談しようにも、先輩も上司も新規事業未経験なら、適切なアドバイスしようがありません。役員や部長陣などの意思決定層が新規事業未経験なら、適切に意思決定することは困難です。
大企業や歴史ある企業の中には、自社の基幹事業は20年前30年前とあまり変わらない会社も少なくありません。バブル崩壊以降、集中と選択の名の下にコスト削減と効率化に重点を置き続け、新規事業への積極的な事業投資は控えめな会社が多いそう。その結果、新規事業の気運やプロセスは消滅し、経営層や部長陣に新規事業経験者がゼロの会社もあるそうです。
毎年優秀で可能性ある人材が入社するも、新規事業の開発経験があるのは実質的に昭和時代の創業期社員だけという会社では、会社としての新規事業の経験は乏しく、新規事業の成功率は限りなくゼロに近いところからのスタートとなります。
大企業や優良企業であるほど、過去に構築された業務内容やプロセスの計画的実行や安定的運営が期待されます。前任者や先輩から業務を引き継ぎ、まずはミスなく期限内に仕事を進め、経験を積むと仕事の改善や効率化を期待されます。99%以上のサラリーマンの仕事は既に構築されている業務の実行と改善です。新しいことの創造は期待も評価もされず、サラリーマンがゼロから何かを創る経験は極めて限定的です。
「創る」ではなく「選ぶ」、「創る」ではなく「探す」
日本人は幼少期の頃から、誰かが定めたレールの上で選ぶ人生を送り、予め答えの決まっている問題を解く教育を受けています。それもあり、大半の日本人はゼロから何かを創ることは不得意です。
多くの日本人は、幼少期から大人になるまで、ゼロから「創る」場面に滅多に直面しません。中学や高校進学はどこを受験するか「選び」、専門学校や大学もどこを受験するか「選び」ます。就職活動も同じで、就活時期は世の中で決められており、どの会社を受けるか「選ぶ」。
日本の学校教育は、正しい答えが予め決まっており、正しく答えを暗記し、早く正しく答えに到達する、という優秀さを競う教育でもあります。それを10年以上も行うため、世の問題には予め正しい答えが存在し、無意識のうちにその答えを探そう・選ぼうとしてしまう人が多いです。
就職してからも、先輩社員からOJTで仕事を学び、異動時はまず前任の仕事を引き継ぎます。発注部門に所属すれば、外注業者から提案の中から「選び」ます。会社や事業部方針は、会社の上層部からおりてきます。
ゼロから「創る」必要がなく、「選ぶ」ばかりなのは、決して悪いことではなく、日本社会や勤務先企業が成熟している証拠で、大変好ましいことです。
しかし新規事業においては、ゼロから「創る」を求められます。人生においてゼロから創った経験がないのに、新規事業担当になると急にゼロから「創る」ことが求められては、戸惑うのも当然です。この点も新規事業立上げの成功率が低くなってしまう主たる理由の一つです。