新市場型破壊的イノベーション:9大成功事例

「新市場型破壊的イノベーション」は、クリステンセン教授が、名著「イノベーションのジレンマ」で提示した「破壊的イノベーション」の2類型のうちの一つです。
「新市場型破壊的イノベーション」の平成時代の9大成功事例を説明します。
※個人的には「新市場型破壊的イノベーション」と呼ぶより、「新市場創出型イノベーション」と呼ぶ方がしっくりきますが、書籍での呼び方に合わせて「新市場創出型イノベーション」と書きます。

■「新市場型破壊的イノベーション」とは

新市場創出型イノベーションは、既存優良企業の既存主流顧客向けの商品に競合するのではなく、既存商品は買えない or 買わないユーザー層(既存主流顧客以外のユーザー層)に対して、既存と異なる新しい価値を提案することで、市場そのものを新たに創出しようとするビジネスイノベーションです。
クリステンセン教授の書籍「ジョブ理論」でいう「無消費状態」のユーザー向けに、既存と異なる価値軸の新しい商品やサービスを提供するものです。
チャン・キム教授の名著「ブルーオーシャン戦略」で狙うタイプのイノベーションでもあります。
新市場型破壊的イノベーションは、既存では無消費状態=市場がなく、往往にして企業の本流からは無視される領域のため、大企業の中で取り組みを進めるのが、極めて難しいものです。(だから、イノベーターズジレンマですね)

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■新市場型破壊的イノベーション 9大成功事例

昭和の新市場型破壊的イノベーションの代名詞といえば、ソニーのウォークマンと、任天堂のファミコンではないでしょうか。日本ここにありを、世界に示した新市場型破壊的イノベーションです。
一方で、平成の新市場型破壊的イノベーションは、何といってもiPhoneです。iPhone/スマホの登場により世界は大きく変わりました。
日本は失われた30年で、世界に負け続けたとも言われます。

そういう中で、平成時代に新市場型破壊的イノベーションを成功させた会社・プロダクトはいくつもあります。

①ドコモ「iモード」

携帯電話の契約者が急激に伸びた1999年に、世界で初めての携帯インターネットとして登場したiモード。ほんの数年のうちに、世界でも珍しい携帯インターネット市場をゼロから創り出しました。
後にAppleやGoogleがスマホのアプリエコシステム構築にあたり、iモードを参考にしたのは有名な話です。

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②任天堂「wii」

Wii発売前のゲーム機市場はプレステの独壇場で、当時任天堂は、ゲーム市場が漸減している理由は、ゲーム複雑化に伴うゲーム離れにあると考えました。
そこでゲーム人口の拡大を狙い、女性や高齢者など旧来ゲームをしないユーザー層を取り込むべく、従来の概念を覆すWiiリモコン+ヌンチャク型のコントローラのゲーム機を開発・投入しました。

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③ユニクロ「エアリズム&ヒートテック」

デザインや素材、価格といったアパレル業界の既存価値軸に、「機能性の高さ」という新機軸を持ち込んだヒートテックやエアリズム。
製版一体SPAモデルに加え、素材メーカーとの提携により素材開発まで行い、他社にないプロダクトで新市場を創りました。ヒートテックの累積販売枚数は、2017年に10億枚を突破。

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④ホンダ「ホンダジェット」

以前のビジネスジェットは、超富裕層がユーザーで、贅沢な仕様で燃費など考慮されないものでした。
1986年から若手社員5名で航空機研究に着手。バブル後にプロジェクトは解体するも、航空業界ではタブーとされていた「翼の上にエンジンのあるジェット機」を考案。経営会議で役員を必死に説得し、リサーチ研究としてプロジェクトは存続しました。

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2000年頃に超小型ジェットブームが到来し、多くのベンチャーや企業が参入。その後、生き残って事業化に至ったのは、ホンダジェットのみ。
2015年から運用開始となった小型ビジネスジェット機ホンダジェットは、小型ジェット機分野での販売数は2017年から4年連続で世界トップに立っています。
https://www.honda.co.jp/topics/2020/04-hondajet/

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ソニー「AIBO」

1999年に発売された、犬型のエンタテイメントロボットのAIBO。人の役に立つロボットではなく、多様な感情表現や成長機能を持つ人とコミュニケーションを取るロボット市場を創りました。
15万台を販売するも、経営問題により7年で事業は終了。新市場創出の難しさを感じさせるものでした。
その10年後の2017年に新生aiboが復活。ヒトとロボットが家族になる世界の実現を目指すコミュニケーションロボットです。

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⑥サイバーエージェント「ABEMA」

サイバーエージェント社の「ABEMA」は、生放送含む24チャンネル番組を、スマホで24時間無料視聴できるインターネットテレビ局です。Youtubeのような動画CGMとも、Netflixのようなサブスク動画サービスとも違う、ユーザーが無料でいつでも見られるインターネットテレビ局。
市場を創るために、毎年200億円を投資し、同社の藤田社長がABEMA事業責任者として立上げを推進。2016年4月にAbemaTV開始後、当初目標としていた週間アクティブユーザー数1000万人を2019年6月に突破し、その後も成長を続けています。

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⑦リクルート「受験サプリ」

大学受験の5教科8科目の全講義を月額980円で視聴できるオンライン学習サービス「受験サプリ」は、経済的・地理的理由による教育機会格差に取り組んだサービス(現在はスタディサプリに名称変更)。
地方在住の学生や経済的な余裕が少ない家庭にも熱狂的に支持され、サービス開始から3年ほどで、大学受験生の2人に1人は使っている、と言われるほど一気に受験生に広まりました。また自社本流事業の販路を活かし、学校での利用も広めました。

⑧ナイアンティック「ポケモンGO」

ナイアンティック社が任天堂の協力を取り付けて開始したポケモンGOも、過去にない新市場を切り開いたゲームです。
インターネット情報とリアル世界を、ゲームという娯楽性のあるもので接着し、人々を外に連れ出すことに成功したARアプリ。

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⑨ストライプインターナショナル「メチャカリ」

アパレル企業のビジネスは、洋服を自社で企画製造し、販売する。アパレル大手のストライプインターナショナル社もそのビジネスを展開しています。
その中で「服を利用する権利」であるサブスクサービス「メチャカリ」を提供します。
事業企画当初は、既存客とのカニバライズを懸念する社内の声が大きかった中で、いざサービスを開始すると、過半数はもともと同社の服を着ない人がメチャカリユーザーの過半数を占めることに。
「服をいろいろ利用する」という新しい市場を切り開きました。

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