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周りが乗っかるデザインには「内発的動機」がある【クリエイティブディレクション研究所】 | Vol.04 sekigさん
SmartHRのクリエイティブディレクション研究所の活動として、SmartHRのクリエイティブディレクターsekigさんにインタビューした模様をお届けします。(※現在sekigさんはご退職されていますが、ご本人の許可を得て2024年11月時点在籍時のインタビューを載せています)
クリエイティブディレクション研究所とは?
クリエイティブディレクション(※クリエイティブによる課題解決スキル全般)にまつわるスキル・知見を収集・可視化する研究所。SmartHRのクリエイティブ組織を中心に、会社のスケールアップに向けてみんなでもっと強くなるための、ちいさくはじめた活動です。
→ 詳しい概要はこちら| SmartHR クリエイティブディレクション研究所へようこそ
プロフィール|sekigさん
大学で工業デザインを専攻後、デザイン会社で雑誌や広報誌のデザイン、またコーポレートサイトなどのアートディレクションに従事。その後デザインプロダクションにてクリエイティブディレクターとして幅広い施策の推進を行う。SmartHRでは、ブランドを扱うデザインチームの立ち上げの他、様々な施策の支援、広報や育成に携わる。
インタビュー|周りが乗っかるデザインには「内発的動機」がある
![質問シートに事前に記入していただいたsekigさんの回答の画像(インタビュー記事と同じ内容が記載されている](https://assets.st-note.com/img/1737346763-vG5zB9x4pMKCcZ82doyUHTAS.jpg?width=1200)
1.良いクリエイティブ(アート)ディレクションとは?
ーー 「最適品質」「リフレーミング(ものの見かた)」「雑に作る、わがままに作る」の3つについて、詳しく聞かせてもらえますか。
我々は物をつくって成果を出す職能なので、その質は気になると思うんですよね。でも質を上げていこうとすると際限がない。定性的なものだし、判断も難しいし、時間もやたらかかる。だからベターを常に意識することが大事だと思っています。それが「最適品質」です。
「リフレーミング」は、僕が物を作る時やデザインをする時にそういうタイプだなと思っている、キーワードです。アイデアを考える時やリサーチをする時に、物の捉え方や見方を変えるなどして仮説をずらす。そうすることで、結果的に負荷を減らしたアウトプットができる気がしています。
「雑に作る、わがままに作る」に関しては、丁寧に作ると小さく収まってしまって、デザイナーに対する周囲の期待値に応えられないと僕は思っていて。小さいことにこだわると結局大きいことはできないというか。なので、色んなことを気にしすぎずに「えい!」って作っちゃう方が、角が取れずにアウトプットが出せると思うんですよね。良いアウトカムに繋がるかは、周囲のレビューを受けてブラッシュアップが必要だと思うんだけど、その前の段階から自分で丸めちゃうと「デザイナーがいる意味なくない?」って僕は思ってるんですよ。そういうのが「雑に作る、わがままに作る」という意味です。
何かをアウトプットすることは、主体がないとできないので、みんな恐れすぎなんじゃないかなって僕は思っています。
■「俺とお前の最適」をバトらせる
![お互いの「最適」をすりあわせる様子を図式化した図。それぞれの「最適」で対立するのではなく、前提にある「価値観や職能の優先順位」を共有することを表している](https://assets.st-note.com/img/1737346972-1LZfKWeGxr2pcUNDO7mRPob9.png?width=1200)
ーー 「最適品質」は最高を目指している人だからこそ最適にこだわる、みたいなバランスなのかなと思いました。
最適はもちろん最低ラインのことではないし、最高を目指して作ったものが最適を満たしてないことももちろんあるんですよね。その意味を結構含んでいます。
あとは人によって尺度が違うので、プロジェクトやチームでは「俺とお前の最適」みたいなものをバトらせないと、その次のフェーズに行けないんじゃないかなというのはよく思います。喧嘩をするわけじゃないんだけど(笑)。 例えばエンジニアとデザイナーでは最適の基準がそもそも違うから、うまく目線を合わせないと良いものができないと思います。
ーー そういう時はどうやって目線を合わせていくんですか?
相手の仕事における価値観や、何を大事にしているかをすり合わせるようにしています。目の前のことだけを取り扱うのは一見合理的で正しそうなんだけど、細かいことで議論になって芯を捉えたアウトプットが出せないことがあると思っていて。もう少し手前の価値観の部分をすり合わせておかないと、良いサイクルで進まないんじゃないかなと思います。
■ 無理のないアウトプットで、アウトカムを得る
ーー リフレーミングについて、“仮説をずらすと負荷なくアウトプットできる”という話がありましたが、そう思うきっかけがあったんでしょうか?
デザイナーあるあるで、アウトカムを狙っているはずなのにアウトプットの話から始まってしまうことがよくあると思うんですよ。具体的に言うと「フライヤー作ってください」とか「バナー画像を作ってください」のように、アウトプットの形が決まった状態で依頼が来ることがよくありますよね。
でも、依頼とは別のアウトプットの方が成果が良かったり、時間やコストがかからなかったりすることがあると思うんです。アウトプットでアウトカムを得るという観点では、本来はアウトプットを司る我々(制作側)が考えるべき部分だと感じています。
過去の経験で話すと、「なるほどデザイン」という書籍の装丁をやらせていただいたときの考え方も、1つのリフレーミングかなと思っています。「なるほどデザイン」は、Amazonなどの電子書店でアイコンになるように作ったんです。書籍は物理的なモノなので、普通は“本屋さんで平置きされた時にどう見えるか”や“手に取るとどう見えるか”という観点で情報設計をして作っていきます。でも当時からみんなAmazonで書籍を買うようになっていて、デザイナーの中でも特に若いデザイナーに向けて作るということを考えると、本屋にはあまり行かないという話になったんですよね。もちろん本屋でも目立ってもらわないと困るんだけど、パッとSNSとかAmazonの中に出てきた時に、アイコン的に見えるものにしたくてレイアウトを決めました。
■ プロジェクトの中でのキャラ作り
![「つまんなくなくないですか?笑」と言える関係性の大切さ。表現とコミュニケーション両方の良い意味での雑さが結果につながる](https://assets.st-note.com/img/1737347034-OKp4in38IGvf9sLBHjaoDeJ2.png?width=1200)
ーー 「雑に作る、わがままに作る」についても大切だと思いますが、これは意識すればできるようになりますか?
これは人によって実践の仕方が違うんじゃないかなと思います。僕のこの言葉の使い方にちょっと違和感がある人も絶対いると思いますし。僕の感覚でお話しすると、打ち合わせの場で「え〜これなんかつまんなくないっすか?(テヘペロ)」って言えなくなったら終わりだなと思っています。言い方は人それぞれだと思うんですけど「こっちのほうが良くないですか?」とか「これやっちゃいません?」みたいな話はしたほうがいいと思っていて。そのへんが「雑」って言葉にも繋がってますね。
ーー 打ち合わせでのそういう発言は関係値ができていないと難しいと思うんですが、どうやればうまくできるようになるんでしょうか?
僕が意識してるのはプロジェクトの作り方です。プロジェクトの中での自分のキャラを作るのは大事だと思っています。例えば前職の頃は、打ち合わせの時にスーツを着た営業の人に一緒に来てもらって、「僕が変なことを言ってもこの人が締めますんで」って感じにしていたり。そこまで極端じゃないにしても、そういう役割分担は大事だと思っています。事前に「こいつは何か言うな」みたいな温度を作っておくと、攻撃性を帯びないというか。“もっと良くしたいから言ってる”というのが伝わるキャラ作りは意識しています。
2.クリエイティブ(アート)ディレクションする上で大事にしていること
■ 廊下で歩いている時間が、一番クリエイティブ
![](https://assets.st-note.com/img/1737353428-GU2nt10wHAT7fYWl8OpxB5MJ.png?width=1200)
僕がクリエイティブディレクションをやる時は、基本的にアウトプットのことよりも“アウトプットを生み出すチーム”のことを気にしています。プロジェクトは人が構成しているので、べき論やアジェンダだけを話すのは、実は効率的ではないと考えています。
さっき言ったような「誰がどういう期待値でそこにいて、何をしたいと思っているか」とか「共通の目的はすり合っているか」を分かっている状態にするのはすごく大事だと思っています。それがすり合ってると、建設的に議論ができるんですよね。
![モチベーションのすり合わせについて図式化した図。案件の中に「CD(クリエイティブディレクター)」と「制作者」がいて、CDから制作者に「アジェンダを伝える」だけでなく、余白の時間をつくって「お互いのモチベーションをすり合わせる」ことが描かれている。](https://assets.st-note.com/img/1737347178-3KLalRVpkfvdHBqAYeFS8QwD.png?width=1200)
ーー それはクライアントとのすり合わせですか?それとも制作チーム内でしょうか?
SmartHRは事業会社だからその構図はないけど、前職などで言うと制作チーム側ですね。だから役割や期待値をはっきりさせるために、プロジェクトの体制図を書くのは、すごく大事にしています。
ーー すり合わせはどういう風にやっていますか?
余白の時間をいっぱい設計するとかですかね。僕は会議室と会議室の間の廊下で歩いている時間が一番クリエイティブだと思ってるので。
![社内のSlackでハドルミーティング(音声によるコミュニケーション機能)が行われている様子。](https://assets.st-note.com/img/1737359412-dPR4XoM7kJ58tSlsGn6vBpD9.png?width=1200)
ーー 人のモチベーションを引き出すには、聞いたら出てくるというわけでもないですよね。あえて余白の時間をつくって本音を共有していくというのは、本質的だなと感じました。それが廊下の人も喫煙所の人もいますよね。
そうそう。お茶しよーとかね!
■ 人と社会をつなげて考えたときに、自分がどうしたいか
クリエイティブディレクターは1つのセクションの責任者になることも多いので、「デザインの観点ではこうです」って言わないといけない。これはとても重要なことです。答えのないものについての判断をするときは根拠が必要ですが、いかんせんデザインは定性的なものなので、根拠はあってないようなものだと思っています。そうなると最終的には「人」だと思うんですよね。
つまり自分の考えを出さないと周りは共感も否定もできない。「自分は社会に対して、こうした方がいいと思ってるから、この事業ではこういうことをやるべきだと思います」という風に人と社会をつなげていく。その視点がないと、つまらないと思います。
![「クリエイティブ(定性的)の説得力・アウトプットの最大化」についての図。“これが正しい”“こうすべき”という考え方よりも、“自分は社会に対して「こうしたほうが良い」と思う(個人→社会への想い)という考え方のほうが、より共感をつくれたり人がついてくる、ということが表されている](https://assets.st-note.com/img/1737347304-ELzHnR0eGo1NafMFPK4gb7Yx.png?width=1200)
ーー 案件の中で正しいかどうかだけでなく、“自分と社会全体”で考えていくということですね。 そこに自分の想いが入っているからこそ、共感して人が動いたり納得したりするんだと思います。
そうですね。
■ 地獄への道は善意で舗装されている
ーー 「ご飯を食べられる:理想と現実」とはどういう意味ですか?
リソースの話とも繋がるんですが、ご飯食べれてないデザイナーが多いと思っていて。つまり自分で自分の給料分の稼ぎが作れてないデザイナーが多い。それでは、社会人として足りないと思うんですよね。プロジェクトの中でも、現実的な進行や工数を考えてない動き方というのは、クリエイティブじゃないなって思います。
ーー プロとして利益も意識してのデザインじゃないと意味ないということですね。
デスマーチってあるじゃないですか。昔ある知人が「地獄への道は善意で舗装されている」ということを言ってくれたことがありました。たしかに今どきデスマーチになる時って、優しさから来ていることが多いと思うんですよ。何か言われた時に気になっても少し見逃してあげたり、そういう「まあいっか」が積み重なるうちに運が悪いと過酷な状況に陥る。
なので、そういうリソースとかは大事という話です。難しいけど気をつけてやれると一番いいですよね。
3.スキルアッププログラムで伝えたいこと(込めた思い・なぜそれぞれ課題選んだか・大事にしてること)
![スキルアップ・アクティビティの基本モデル。導入・実践・振り返りの3stepに分かれている](https://assets.st-note.com/img/1737347359-WU1SJtfg9xwdGDEuHFMhB43c.png?width=1200)
■ もっと周囲の人を利用してほしい
ーー 最近の取り組みとして、クリエイティブ職の社員に向けて「スキルアッププログラム」をやっていますよね。スキルアッププログラムに対する思いや、題材の選び方について聞かせてください。
スキルアッププログラムに限らず思ってることとしては周囲の人を利用してほしいという思いがあります。“利用”と言うと日本語的に良くない印象に聞こえるかもしれないですが、“持ちつ持たれつ”みたいなことだと思うんですよね。
ーー 今までの経験の中で「もっと利用してほしい」と思うことがあったんでしょうか?
やっぱり自分のキャリアの長さもあるかもしれないですね。いろいろなことをある程度やったことがあるので、他の人がちょっとしたことでつまずいていると、「もったいない」と思っちゃう。なので「こういうときどうしてた?」とか聞いてもらえると、利用してもらえて嬉しいなと思います。
あとは、お互い助け合うとお互いにとってポジティブなので、関係性が広がるんですよね。そうすることで別のコミュニティの人と繋がることもできるし。
ーー 「不安を認めてあげて、広い世界を見よう」とか「難しく考えるな、いいからやれ」という言葉は、つまずいている人たちに向けた言葉ですかね?
そうですね。いろんなことが不安だと思うけど、僕も含めてみんな不安なのでそれは全然良い。でもそこで外の世界を知らないままだと、不安だけが大きくなっちゃうと思うんですよね。だから部屋の外に出たり、違う職種の友達を作ったりする方が良いと思います。そうすると物差しが一つじゃなくなってくるので、その方がヘルシーだし面白い。縮こまって考えていると、自分も楽しくなくなるし成果も出づらい。だから 「やっちゃいなよ!」 という感じです。
他の人から見ると僕もマッチョに見えるかもしれないけど、僕もいろんな失敗をしたので、みんなに対して「大丈夫だから、ゆっくりやっていこうね」と思っています。
![インタビュー中のsekigさん](https://assets.st-note.com/img/1737357970-BKbSYHxUW1dVaEfMwX7mgIR3.png?width=1200)
■ 「なぜそうしたいのか」を伝えないと、周りが乗っかれない
ーー 今回のプログラムを作る上で大事にしていることはありますか?例えばみんなが参加しやすいようにとか、よりスキルを伸ばせるように工夫したこととか。
Tipsではなく背景のところでお答えすると、僕は内発的動機がすごく大事だと思っていて。アウトプットする人が「なぜそうしたいのか」を周囲が理解できないと、良いも悪いも乗っかれないんですよ。だから自分自身で「今どうしたいのか」と「課題や状況」をすり合わせることをやって欲しいなと、僕は思っています。周囲のことももちろんなんですけど、自分自身のことも見てあげて欲しいという思いがあって、今回のプログラムも色々工夫していました。
ーー 私もプログラムに参加しましたが、本当に課題がシンプルでしたよね。業務とは違う視点で考えられるようになっていて、「このシンプルな課題で自分が表現したいことが見つかるかな…」と思いながらも、手を動かしているうちに表現したいことが出てくる。それを体感できて面白かったです。
そうですね。「自分がどうしたいか」に気づくことや、周囲に伝えることの大切さに気づいてもらえるように課題を設定していました。
![ワークショップの一例、「3 Line Drawing」のタイトル文字。](https://assets.st-note.com/img/1737347544-cjOmZSYGhr4v5AH27gIoq9Ms.png?width=1200)
![「3 Line Drawing」の内容。](https://assets.st-note.com/img/1737347544-Yes568F2OG04ctuhjzo7Z3MJ.png?width=1200)
■ デザイナーが最初のフィルターになる
ーー 内発的動機が大事だと思うようになったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
いくつかあるんですが、2つ紹介します。
1つは受託時代に、あるクライアント企業のクリエイティブコンサルをやっていて、その企業のトップの方と一緒に仕事をしました。その時に僕が、いろいろ気にしてごちゃごちゃ言ってたんですよね。そしたら「そういうのはこっちでやるから。で、できることあるの?ないの?それって面白いの?面白くないの?」って聞かれたんですよ。その時に立場を勘違いしてたなと思いました。
何を求められてるかを理解して「これをやるべきです」って提言できないと、僕がいる意味がないなと思ったんです。だからそれ以降「こういう理由で、"僕は"このようにした方がいいと思います」という言い方をするようになりました。
ーー 面白いエピソードですね。それに気づく前のsekigさんは、「この会社は今こうだから、こういうのがいいと思う」みたいなことを話していたということですよね。そしたら、「そうじゃない」と言われた?
そう。プロセスとかステークホルダーがどうとか。そう言うと「それはやるかやらないか決めてから考えればいいことでしょ」と言われました。
ーー もちろんシーンによって違うとは思いつつ、最終的にどうしたいかの筋が必要ですよね。我々は経営者じゃないし、クリエイターだからこそ「この方が面白い」という視点から考える立場というのはあるかもしれないですね。
2つ目は、もっと若い頃に書籍の装丁に携わったときです。
編集者さんから「僕はデザイナーには最初の読者であってほしいんだよね」と言われました。つまりは何らかのメッセージやコンテンツを届けるときに、デザイナーやデザイン機能が最初のフィルターだと思うんですよ。だから、そこに何もないのは無責任だと僕は思ったんですよね。人によって自分の主張が強い人もいれば、周囲から汲み取る人もいたり、何もないのは良くないと思ったんですよね。「で、どう思っている?」というのを問われている。それがアウトプットになるし、不定形のものを形にする仕事なんじゃないかなって思った出来事でした。
ーー 言われたままをやっても形にはなるけど、やっぱり有象無象になっちゃう。そこにデザイナーの意思が入ることでより良いものにジャンプするような気もしますし、その意識は忘れないようにしたいですね。
そうですね。難しい顔してるデザイナーってつまんなそうじゃないですか。難しいっていうのは表情の話じゃないんだけど、僕はデザイナーがつまんなさそうにしてたらなんかやだなって思っちゃいます(笑)。
ーー それは大事ですね。もちろん仕事だから大変なことはあるんだけど、自分の意志を入れることで、自分ごと化して楽しむということですかね。
その通りです!人によって性格が違うので、真剣な顔が信頼に繋がる人もいると思うし、常にニコニコしてほしいという意味ではないんですけど。表情は人それぞれでも、本人のモチベーションが高い状態が周囲に伝わっていることが大切ということですね。
![インタビュー中のsekigさん](https://assets.st-note.com/img/1737358017-i3fSDxy85huAZqtUYz2e6RTp.png?width=1200)
4.普段使っている考え方・ツール・影響された本や人などありますか?
■ デザインは最終成果物ではなく、中間成果物。
ーー 「技術・人・社会を繋ぐこと」というのはどういう想いで書きましたか?
さっきも社会の話をしましたが、我々はデザイナーである前に一市民だと思うんですよね。自分が社会の中にいるひとりであることを忘れると、良いデザインができない気がするんですよ。そもそもデザインは社会を向いているものだと僕は思っているのと、もともと学生の頃に工業デザインの勉強してたところから、その考えが来てるというのがありますね。
ーー だから技術や社会が根底にあるんですね。
補足すると、印刷物は工場を通ることで完成しますよね。デジタルプロダクトやウェブサイトなども同様にエンジニアリングを通るので、工場ではないけど製造は通っているんですよ。つまり、デザインって最終成果物ではなく中間成果物を作っているんですよね。設計図だったり、モックだったり。デザインしたものって必ず何らかの製造工程を通らないと社会に出ない。だから「人・技術・社会」の意識が大事だと思っています。
■ デザイナーはSFを読め!
ーー その他、質問シートに書いてくださった、影響を受けた考えなどについて、いくつか話していただけますか?
「Adobeのパレット」の話をさせていただくと、僕はデザイン科の出身ではあるんですがAdobeのツールは独学で勉強したんです。Adobeのソフトにはパレットが並んでいて、色調整などが出来るんですが、あれって全部パラメータなんですよね。今思えば、機能がわからないなりにあれを触っていたことで、造形や構成の変数がいっぱいあるというのを体感してたのかなと思います。
![Adobeソフトで表示されるカラーパレット。R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のバーが表示されており、カーソルを動かすことで色が調節できるようになっている。](https://assets.st-note.com/img/1737347752-vEKwWjRacuIHL4CSn1kdYGzU.png)
何かを学ぶって、すごく高尚なものという感じがあると思うんですけど、自分が編集できるものがどこにどれくらいあるのかという、編集点を多く知っている・見つけ出せることが大事だと思っていて。それを増やすのが技術を知ることだと思うんです。
![](https://assets.st-note.com/img/1737353490-iM7yZrHalhQRLKSozUntVcCD.png?width=1200)
あと「デザイナーはSFを読め」。僕は若い時は本の虫だったんですけど、SFは読んだことがなくて。なんかスペースオペラとか、どっかーんみたいなイメージで興味なくて(笑)、何もわかってなかったんですよ。
でもある友人が「世の中の大抵のことはSF作家がすでに思考実験をしている」と言っていて。例えば車がこうなったらどういう社会になるんだろう、みたいな世の中に起こりえることはもうひとしきり考えてると。そういう先駆者がいるんだから、その実装の一部を担っているデザイナーがSFを読まないのは損でしかない、みたいなことを言ってたんですよね。
それを聞いて、いくつか読んだら確かにすごく面白くて。「もしもこうだったら」とか「何か一つの点が違ったら」というのを、いろんな人が考えてるんですよ。それを知らずに、それこそ車輪の再発明というか、小さいことをやっているともったいないなって思ったんですよね。なのでSFはおすすめです。
インタビューこぼれ話
今回はインタビュー時に観覧ゲストが数人来てくれていたので、ゲストからの質問にも答えていただきました。
■ デザイナー以外の職種の人と仕事をする上で、工夫していたことはありますか?
意識していることは3点あります。
まず1つ目は “ウォークスルーをしない”。アウトプットを説明するときに、上から下まで順番に見た目について話していく説明をしないということです。例えば、「ここは赤色で、ここは左に寄せて…」みたいな。そうではなく「なぜこうなのか、何を狙っているのか」という説明をするように心がけています。
2つ目は、“ひたすら話を振る”。とにかくみんなで会話をしないと、共に作ることができないので、「どう思います?」って話を振るようにしていますね。別に何もなくても良くて、エビデンスのない話こそしてもらった方がいいと思っています。
3つ目は “「自分にはこう見えている」を共有する”。これはこれまで話した内容と同じです。
ーー それらを意識するようになったのはなぜですか?また、もしこの3つがない状態だとどうなっちゃうんでしょうか?
みんながつまんなそうな顔になると思います。過去の経験なんですが、完璧なプロセスを踏んでいるはずなのに、だんだんみんながつまんなそうになっていく状況があったんですよね。間違ったことはしてないので誰も止めないんだけど、なんかみんなつまんなそうになっていって、それがすごく嫌でした。
ーー 士気が下がる・熱量が下がってくる感じですかね?
そうです。それだと結局アウトカムにも繋がらないと思うんですよね。なのでみんなが楽しいかどうかは、いつも気にしています。
■ sekigさんの考えや意見には芯があると感じているのですが、それはどうやって培われたんでしょうか?また、いつもどのようにインプットをしていますか?
僕は正直環境が良かったので、あらゆる先輩や後輩や同世代の人たちに育ててもらったと思っています。人に刺激されることで、自分がどう思っているのかを考えるし、言わなきゃいけないっていう焦りも生まれる。
あと情報は発信されているところに集まるというのを、本当に体感していて。1社目で社内の評価が伸びなかった時期に、先輩に「社内でごちゃごちゃやってないで、社外の評価をもらってくればいいじゃん」って言われたんですよ。そこから社外で登壇とかをするようにしたら、色んな友達ができて、「自分は何ができてどこが足りないのか」が分かるようになったんですよね。
あと別の分野の知り合いができると、その人が言っていることを見たり聞いたりしているだけでなんとなく情報の脈ができてくる。そうしていくうちに、勝手に情報が流れてくる状態になっていった気がします。