【超重要】速くなりたいハードル選手のためのハードルドリル大全
超基礎から、各レベルにステップアップする際に必要な、実力に見合った具体的な練習を網羅的に紹介します。
みなさんこんにちは。SmartDashです。 SmartDashでは、陸上短距離種目を中心に今日から誰でも使える競技力向上ノウハウを中心に投稿しています。 指導者のいない環境で、全国大会に出場した選手たちが運営しています。 自分たちなりに考えた科学的で再現性の高い練習を掲載しています。 このアカウントの管理人たちの実績 100m 10.77 200m 21.79 110mH 14.05
▷執筆者の実績
競技実績 110mハードル歴10年 自己ベスト14’05 、13’82( 風あり+2.3)
指導実績:小学生低学年から小学生高学年への初心者児童指導
中学生、高校生への専門的な指導
大学生へのより専門的な指導
また、大学在籍時には関東ハードル選抜合宿二年連続選出され、日本トップアスリート達と一緒に練習をこなし、高度な走りや考え方を学びながら共有した経験があります。子供などの初心者から、体が発達中の中高生、プロレベルの大学生アスリリートなど、幅広い層との練習や指導経験を通して培われたノウハウや考え方をこの記事では紹介していきます。また論文等をわかりやすいように引用しながら科学的裏付けをしながら解説していきます。
まずはじめに質問です。
これに明確に答えられた方はこの記事を読む必要はありません。
ハードル走で速くゴールに到達するためには何が最も必要でしょう。
”ハードル走は走力が全て”だと思っている方は、ぜひこの記事を読んでください。間違いなく今よりももっと速くなれます。走力もたしかに大事な要件の一つですが、ハードル走を速くゴールするためには、それ以上に大事な要件があります。
それはハードリングかな?と思った方。
少し大雑把です。
じゃあ踏み切りか着地かな?
それも大雑把です。
じゃあ一体何であるかと。
いちばん大事なことをまずはじめに伝えてしまいます。
”スピードを殺さずに踏切、着地する”
これが最も大事かつハードル走を行う上で目指すべき基本的かつ永続的な課題です。ハードルの技術向上は、ここに集約されます。これができて次にインターバル等の走力が必要要件になります。
1997年に発表された北大阪体育大学の伊藤 章と海道天売高等学校の富樫 勝の合同研究による論文(参照1)では、
”ハードル走速度と有意な相関が認められた測定項目は, 踏切動作と着地動作に多く見られ, ハードリングの重要性を示唆するとともに, ハードル走速度の高い選手は踏切においてはスプリントに近い動作と筋活動を, 着地においては一部スプリントを強調したハードル特有の動作と筋活動を行っていたことが明らかとなった.”
と述べています。
この論文でわかることは、要は、ハードル走の速度は、踏切と着地動作が要であり、いかにスプリントに近い水平方向への速度を減らさずハードリンクを行えるか。ということを言っています。
走る人のレベルにより必要要件がもう一つ増えたりするのですが、それは話の都合上、中盤から後半で紹介します。
この記事を読むべき人
*走る人・指導する人のような短距離ハードルに関わるほとんどの人に読んでいただけるようになっています。
・小学生高学年など学校でハードルを跳び始めた児童を指導する方
・初級者(16秒〜15秒台)やハードルを初めたばかりの選手
・中級者(14秒後半〜14秒前半)を目指す選手
・ 上級者(目安14〜13秒)を目指す選手
・上記のレベルの選手に指導する方
1.ハードル走って?
陸上競技のハードル走は、等間隔に設置された一定の高さのハードルを10台(小学生の授業では5台)越えながら、定められた距離をできるだけ速く走る競技です。ハードル間の距離が一定であるため、スタートから一台目のハードルを飛ぶまでに7歩、8歩、間9回のインターバルでは4歩、10台目からゴールまでの区間は7歩で走るという特長があります。
また、主にこの記事では110m,100m,50mハードルのような短距離ハードル(以下スプリントハードル)に焦点を当てた解説や紹介を行っていきます。なので400mハードルなど110mより長い距離の競技に関する解説は特にありませんのでご了承ください。
全てのスプリントハードル走では、競技力の高低に関わらず、すべての選手がハードルの踏切で鉛直速度(上方向)の増加とともに、水平速度(進行方向)が減少し、ハードル間のインターバル走で水平速度を回復するというサイクルをもち、このサイクルを9回繰り返しながらゴールに向かうという競技です。
2. ハードル走の必要要件とは!
ハードル走を速く走り抜けゴールするために必要な大要件は、以下の2つです。
(1)”スピードを殺さずに踏切、着地する”
(2) ”インターバルのピッチ”
序盤で、ハードル走を速くゴールに到達するために必要な要件は、スピードを殺さずに踏切と述べました。まず、どの選手もスピードを殺さないまま踏切、着地を練習するべきで、その後に間の走力をあげるようなインターバル間のピッチトレーニングを行うべきです。
例えば、初心者〜中級者のようなそもそも踏み切りから着地で減速してしまうハードリングに問題のある選手は、1番のみに集中するべきです。
ある程度ハードリンクでの減速がなく、インターバルへの走りにスムーズに移行できるような上級者になって初めて、2番の”インターバルのピッチ”が必要になってきます。というのも、踏み切りと着地で減速がなくスムーズに走りに移れる選手は、次のハードルまでの距離が少しづつ近づきインターバル間が短く狭くなるため、ここで初めて、狭くなったインターバル間をハードルにぶつかる前に走り切るために、速いピッチが必要になります。逆に走力があるけど、踏み切り時に高く跳びすぎて着地時に腰が潰れ走りの勢いが潰れれば、そこまで走りで生み出したスピードはなくなり、加速減速を繰り返す極めて非効率な走りになります。
3.ハードルドリルのやる目的
それはズバリ、『ハードルをベストコンディションで飛ぶための体つくり』
ここでいう体作りは、俗にいう筋肉をつけるや体幹を鍛えるなどの話ではなく、
ハードルを跳ぶ際に使う体の重要部位に刺激を入れ、ベストな動きが出せるように仕上げていく工程になるので、ステーキでいう塩胡椒かけたり、揉んでおいたり、おいしく仕上げるための下準備だと思ってください。
ハードルドリルにおいての下準備は、抜き足をあげる中臀筋や踏切の要である大臀筋など、
ハードリングを行うために必要な体の部位に刺激を入れることで『神経伝達』をより早くするということです。
”神経伝達をより速くする” というのは、
”頭で思った通りの動き” を ”体で再現すること”
のスピードを上げていくことを指します。
熱い鉄板を触ったときにとっさに手を離す”反射の動き”、あの筋肉の反射スピードを
ハードリングの神経伝達でも出来るようになることを目指して、
ハードルドリルで刺激を入れていきましょう!
ハードルドリルをやる目的が「ベストコンディションを作るため」ということがわかれば、
ハードルのベストコンディションとは何かを考える必要があります。
大別すると、ハードルを跳ぶためのベストコンディションに必要な要素は、
・踏切
・抜き足兼着地
・間の刻み
これらの要素を達成するためには、実はさらに根底にある『反発』『伸展』などの理論の理解と習得が必要になるのですが、より深い話になるため、そちらはまた別の記事で紹介しているので下記のリンクよりご覧ください。
この記事では、ハードルドリル必須の三要素(踏切、抜き足兼着地、間の刻み)にのみ言及します。
それでは、ハードルをベストコンディションで飛ぶために必要な、踏切・抜き足・着地のハードルドリルを一緒に見ていきましょう!
4.初心者がやるべきこと
ここで言う初心者はハードルを全く跳んだことがない人から、何度か跳んだことがあるけどコツがよくわからない人です。
(1)まず何も考えずに跳ぶ
跳んだことがない人や、久しぶりにハードルを跳ぶ人はまず現場の自分の問題点を知ること、また感覚を掴むためにまずまず1回(5台程)跳びましょう。話はそれからです。
(2)抜き足と手の動き等最低限のハードリングを身につける
ハードリングには、足と手それぞれに役割があります。
足のハードリング:踏み切り後に、横に倒して持ってくる『抜き足』と踏切時に前方に蹴り出す『リード足』の2つがあります。初心者は特に踏切後、抜き足の膝がへその高さより下がってしまう、体の前に持ってこれず足が後ろに残ってしまうことが大半のため、改善は『抜き足』のみに努めリード足は特に意識する必要はありません。しいていうなら、踏切時の勢いをつけるために、リード足では、ハードルを跳んだ先に障子があると思って、つま先が下がらないよう気をつけながら障子をリード足で突き破るように意識するくらいでしょう。リード足の改善はハードルに対して恐怖心を持っていて、踏切時に縮こまった状態でリード足が出ている場合のみ意識するようにしましょう。
『抜き足』の形の作り方は、
1. まずかかとを合わせつま先を進行方向に揃え真っ直ぐ立ちます。
2. 抜き足側の足を外に開きます(約90度外側を向くように)
3. 膝をへそと同じ高さあたりまで上げます。このとき膝が開かないようにします。目安は、かかとがお尻から離れないくらい膝を閉じておきます。
4. この状態で上半身を腰から前傾させます
この形を踏切後に、ハードル上で作ります。
簡単に整理すると、開く 上げる 倒すの3ステップです。
初心者には、抜き足を開いたまま膝を上げるて横にする抜き足は、非常に難しい動作ですが、体を前傾することで高く横に開くことができます。
踏切後、抜き足を持ってくる流れとして、
1. 踏切後、地面から足が離れる
2. 抜き足の形をつくる(ハードル上で横にする上記で説明したもの)
3. 自分の胸めがけて膝を当てるように高さをキープしつつ前に持ってくる
ハードルの抜き足を後ろから前に持ってくる中で横に倒してハードルを避ける動きも大事ですが、膝の高さを胸の位置まで高く持ってくることが次の走りにつなげる上でとても重要になります。横にする形・膝の高さこのふたつだけでは常にチェックするようにしましょう。
手のハードリング:抜き足と同じ側にある手を掻いてもってくる『抜き手』と踏み切り時に大きく後ろに振る『引き手』
『抜き手』は、抜き足を踏切後、地面から前方に持ってくる際、横に倒して、胸めがけて膝を高く前方に持ってくると述べました。その際、前方に持ってくる膝に手が当たらないようにスペースを空けてあげる動きが必要になります。『抜き手』は踏切時、進行方向に向けて出します。その後平泳ぎするように手を掻いて元の位置に戻してきます。
『引き手』は、初めのうちは特に意識する必要はありません。
体が後ろに引っ張られない程度に大きく降ることだけに努めましょう。
これらのハードリングは初心者にはとても難しく最終的に複合的・連続的な動きの中でできるようにする必要があります。なのでまずは、全部を一緒にやろうとせず、立位でその場で個々に覚えていきましょう。『抜き足』『抜き手』の動かし方がそれぞれわかったところで歩きながらハードルを使い、動きの連動性を確認しましょう。
(3)踏み切り動作を繰り返す
抜き足等の形ができた後は、実際に踏切をして前に進む感覚を掴みましょう。『抜き足』と『踏切足』は同じ足のため、同時に行おうとするとどっちつかずになります。なのでまずはそれぞれの動きを別々に理解し、実践してから、つなぎ合わせるようにしてみましょう。そのためここでに踏切動作をする際は、一度抜き足の形等はやらずに、踏切だけを行うようにしましょう。(後ろに残すような形になります)
▷初心者に有効なドリル:踏切ジャンプドリル
タッチジャンプ
→ラインを引き、引いてあるとこから抜き足側の足で、高く前にジャンプして、2mほど前方に立ってる人の手や目印ををタッチする。なるべくタッチする目標物はその人の手がぎりぎり届く高い場所が望ましい。体を前にすすめる踏切をするだけでも、とても難しい動作であるため、一度抜き足の形は切り捨て、ここでは踏切動作のみを行いましょう。形としては、
(1)踏切後の足は地面を押し続けて後ろに残す
(2)体が頂点に達したときに後ろに残していた踏切足を前に持ってくる
ぎりぎりまで踏切足を後ろに残すくらい地面を押し込む動作をすることによって、しっかり踏切時に活動する大殿筋(お尻の裏側の筋肉)を使うことができ、より力強く踏切ることができます。
目的:高く前に踏み切らせる事ができる
回数:一人3回程を行う
実際にハードルを置いて踏切と抜き足を合わせてやってみよう。
踏切足で地面を押して後ろに残す意識を持つのは体が頂点に来るあたりまでです。頂点に来たらすぐに踏切足を抜き足に変えて横の形で膝の高さまで持ってきます。最後にハードルを超えたら、抜き足の膝を胸の前まで持ってきて高い位置をキープしたま足を体の前まで持ってきましょう。
ここからは、主にハードル走経験者や選手の方向けの内容になります。
5. 初級者(目安16秒台〜15秒の選手)がひたすら身につけるべきこと
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