5分で学ぶフォントの歴史500年|時代背景とタイポグラフィ
スマートキャンプデザインブログです。
今回は、タイポグラフィの歴史について、スマートキャンプ八尋(やひろ)が解説します。
タイポグラフィとは
現在では、印刷技術、文字のデザインやその配列など、文字(タイプ)のデザイン全体を表す言葉になっています。
元の意味としては、活版印刷術や、印刷のために活字を組み合わせて使用することを指しました。
タイポグラフィの誕生
歴史上初めてタイポグラフィが誕生したのは15世紀のことです。ヨーロッパでは手書きによって本が生産されており、多くの時間を要していました。
そのような時代背景の中、ドイツ人で活版印刷術の発明家である、ヨハネス・グーテンベルクによって「ブラックレター(Black Letter)」というタイプフェイスが作り出されました。
しかしこのタイプは、当時の手書きの文字を参考に作られているため、縦線が太く印刷するとつぶれてしまうことがありました。
字がつぶれて黒く見えてしまうこのタイプフェイスは視認性も低いことも問題としてあげられました。
欧文書体の基本的な歴史と知識から学ぶこと サンセリフ体編
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セリフ体
世界初のタイプフェイスであるブラックレターでしたが、その字の性質から長く読むのには向いていませんでした。
また、宗教色が強くキリスト教の権威を感じさせるとして、人文学者たちが使用を避けていたこともあり、新しいタイプフェイスが求められました。
そこで登場したのが「ローマン体」です。
ブラックレターが発明された時代より昔の、ローマやギリシア時代に使用されていた手書きの文字を参考にして作られました。
ブラックレターに比べて文字の線が細くなり、まっすぐな線と適度な余白からなるシンプルなデザインで構成されています。
ローマン体はその視認性の高さからたちまちヨーロッパ全土に広がり、人気を博しました。
また、このローマン体の特徴として「セリフ」と呼ばれるものがあります。
その後、ルネサンス期のイタリアでは、セリフ体を斜めにした「イタリック体」が発明されます。
サンセリフ体
19世紀に入ると、産業革命の影響を受けて様々なタイプフェイス(書体)が考え出されました。
その中でも縦横の幅の差がなくセリフが太い「エジプシャン体」が成功を収めました。
その後、エジプシャン体の変形として、ウィリアムス・キャズロン四世によってセリフのない「サンセリフ体」が生み出されました。
この時代は凝ったデザインが流行していたため、初めこそ人気が出なかったものの、19世紀半ばより商業用のタイプフェイスとして広く使用されることとなりました。
サンセリフ体はその後様々なタイプフェイスが氾濫して、無秩序に使用されていました。しかし、イギリスでJohnston Underground(ジョンストン・アンダーグランド)やGill Sans(ギル・サン)が登場するとこれらが多く使われるようになりました。
一方ドイツでは、バウハウスの影響で、幾何学的でアーティスティックなタイプフェイスが多く作られました。
様々なタイプの誕生
「Helvetica(ヘルベチカ)」
世界でもっとも有名である「Helvetica(ヘルベチカ)」という書体は1957年に登場しました。
まだ金型活版印刷が主流であった当時、スイス出身のタイプフェイスデザイナーのマックス・ミーディンガーは書体メーカーのハース社から、新しいタイプフェイスの開発を依頼されました。
新しいと言ってもオリジナルのタイプフェイスではなく、ドイツのAkzidenz-Grotesk(アクチデンツ・グロテスク)のコピーを作って欲しいと依頼しました。
しかし、せっかくならコピーではなく新しく完璧なタイプフェイスを作りたいと考えたマックス・ミーディンガーは、同僚のエデュアード・ホフマンと一緒に開発をすることにしました。
こうしてできたのが「Helvetica(ヘルベチカ)」というわけです。
この書体はその美しさから様々なデザイナーに評価され、世界中で使用される書体となりました。
世界中の企業のロゴにも使用されており、日本の企業では「TOYOTA」や「MUJI」が使用していることでも有名です。
「Futura(フーツラ)」
「Futura(フーツラ)」とはミュンヘンのブック・デザイナーのパウル・レナーによって作り出された、幾何学的な円や直線で構成されたタイプフェイスです。
バウハウスの教義を信じている彼は、エアバー教授の書体をより良いものにするため、新たなタイプフェイスを開発しました。
そうして作られたこの「Futura(フーツラ)」という書体は、全体のウェイトやコントラストが均一で幾何学的形態を用いていることから、統一感のあるデザイン性の高い書体として人気が出ました。
数々のデザイナーに好まれ、様々なロゴやキャッチフレーズに使用されています。
また、「Futura(フーツラ)」最大の功績は、1969年に人類初の月面着陸を行ったアポロ11号が月に残した銘板に使用されたことでも有名です。
歴史を知り、新しいデザインに生かす
企業のロゴ、広告、ポスター、Webサイトなど、あらゆるデザインに欠かせないのがタイポグラフィーです。
今回、タイポグラフィーのデザインに関しての歴史をご紹介していく中で、時代背景とともに変化するタイプフェイスの多様性を知ることができたと思います。
もっとも身近であり、もっとも触れやすいデザインであるタイポグラフィー。様々な観点から触れて見て、より良いタイプフェイスを探してみてください。
スマートキャンプのデザインブログとは
WRITER : Yu Yahiro ( SMARTCAMP / Designer Internship )
EDITOR : Yuta Morishige ( SMARTCAMP / Designer / @MorishigeYuta )
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