共学化と私学の戦略【東福岡高校の男女共学化で出たある程度の結論】
ラグビー、サッカー、バレーボールの強豪校としられている東福岡高校は、開学以来男子校でしたが、再来年度から男女共学化するとのことです。
これで、福岡県にある男子校は、福岡市西区にある中村学園三陽高校のみとなりました。ただ、ここは中村学園大学を運営する学校法人の傘下に中村学園女子高校があり、学校法人内の男女別学の一翼を担う学校とも言えるので、純粋な男子校は、これでなくなるといえるでしょう。
私が中学生を指導していたころは、高偏差値帯の私立高校は男女別学が多く、生徒も保護者も、男子高は・・・、女子高は・・・という意見が多く出たものです。
その意味では、通う側の希望が男女共学化を促した側面がありますが、私はそうは見ていません。
女子校は、男女の学びの環境が平等でない時代に女子教育をという理想の旗を掲げて設立されている学校が多く、女子校であることにアイデンティティがある。
一方で、男子校はその意義においては、女子校よりも薄く、男子校であることを継続することが時代によって揺らいだのだろうと思います。
ただ、本音の部分ではちょっと事情が違うのではと思います。
それが、女子の方が相対的に優秀なので、女子に来てほしいというものです。
それを象徴するのが、福岡大学附属大濠高校で、この学校の男女共学化は、学校法人の戦略をも変えたともいえるからです。
大濠高校はその名の通り、福岡大学の付属校高校ですが、かつては男子校でした。また、男女共学化をする前は、割と多くの生徒が内部進学で福岡大学に進んでいました。
ところが、男女共学化してからは、その流れが変わったように思います。
最近の言葉で言うと、系列大スルーという現象です。
優秀な女子生徒の入学と中学校を復活させ中高一貫教育との併用によって、学校全体のレベルが上がると、結果として、偏差値で序列化が進んでいる現在の大学入試事情によって、付属高校と系列大学の数字的ミスマッチが起こりました。
大濠高校の生徒の場合、内部進学でなくても数字的に一般入試で福岡大学に届く生徒が多いので、福大を受ける、進学するにしても、他大学との併願を選択する例が増えたのです。
そのため、内部推薦枠が余る現象が起こり始めた。
これはこれで学校法人としては、都合が悪い。そこで出てきた戦略が、学校法人の買収です。
ソフトボール日本代表の上野由岐子さんの母校、九州女子高校を買収して、福岡大学若葉高校と改称して、高大一貫教育という方針を打ち出しています。
東福岡高校は、事実上の最後の男子校として、いろいろな模索をしていましたが、このような事例も参考にして、結局は優秀な女子生徒の確保が現実的な選択となったのではと思います。
東福岡高校は、系列の大学がないこともあり、多くの生徒が地元の西南学院大学や福岡大学を目指す生徒が多く、国立大学も九大、九工大、長崎大、佐賀大など地元の大学が主な進学先となっています。
http://www.higashifukuoka.ed.jp/assets/img/highschool/result/pdf/r5gokaku_2.pdf
このあたりのゾーンの進学実績として強化したい学校の思惑は、女子生徒の確保という選択が自然なのでしょう。
まえに、相対的に女性がやや優秀では?という記事を書きましたが、
塾の現場では、男女による能力的な差は感じないものの、コツコツと小さな努力を積み上げられる女子の方が受験で結果を出す例は、実感しています。才能に恵まれながら、地道な努力ができずに自滅というのは、大半が男子という現実も加味すると、進学実績に厚みを持たせるという点では、女子に来てもらうのは、即効性のある対応なのかもしれません。
東福岡高校の男女共学化は、それなりに影響はあるはずで、今後福岡の受験事情にどのような変化を与えるのか、興味深くみています。
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