「人材戦略の視点」からみる福岡ソフトバンクホークスの選手育成の曲がり角【育成指名選手の辞退は必然的な流れか。必要なのは、選手の〇〇戦略?】
今シーズン、パ・リーグを圧倒的な成績で制覇した福岡ソフトバンクホークス。ところがオフに入り、揺れているようです。
無名の選手を育成選手として多数抱え、埋もれた才能を開花させるというこの戦略はプロ野球の人材管理のあり方を変えたと言ってもいいでしょう。
しかし、育成として抱える選手が多くなり、小さな火種が徐々に表面化。ここにきて選手の処遇という点で曲がり角にきた印象があります。
リチャード選手の訴えは、納得のいくところがあり、さらにホークスから現役ドラフトで移籍した選手が活躍している現実も不満の背景にあるようです。選手生命の短いスポーツ選手にとって、1年は貴重な時間。わがままと切って捨てることはできないのではと思っています。
また、春先でご紹介した仲田慶介選手も、支配下選手契約を解除され、育成契約を打診されたとのこと。この場合、制度上は一旦、自由契約選手となるのだそうで、その間隙を突いてライオンズに移籍しました。
現在、1軍に定着している2人がFA宣言をしていますが、出場機会を渇望する選手たちからすれば、ぜひいい契約を勝ち取って移籍してほしいというのが本音でしょう。
これまでホークスは、育成に力を入れる一方で、FAによって選手を獲得することでチームを強化してきました。難しいことに、チーム力強化には、FA制度は極めて有効です。
特に野手の場合、投手の球種など傾向の把握はひとつの財産なので、同一リーグで移籍することが多く、それは、結果として同一リーグの他チームの主力を引き抜くことになる。それは自チームの強化だけでなく、相手チームを弱体化というメリットが付帯します。効果が絶大であるがゆえに辞められないという事情もあると思っています。
FA移籍選手は加入すれば即戦力としての処遇となるので、育成選手を多数抱えるにも関わず、FAを活用する戦略は、育成選手からの目線では1軍への生き残り枠が少なくなるわけで、当然の帰結として、人的な目詰まりは構造上確実に発生します。
ホークスは今後この状況から発生する選手の過剰保有の問題は解決しなければ、「ホークスの育成だけは行きたくない」という選手を発生させるかもしれません。
このニュースは、未来を示唆しているとも言えそうです。
この人的な滞留問題を拗らせると人気商売であるプロ野球球団にとってネガティブなイメージとなる可能性もあります。チームが選手を飼い殺しにていると見られかねないからです。
なので、今後ホークスは出口戦略を重視せざるを得なくなるのではと思っています。どのように選手を「外に出すか」ということです。
ホークスでは、チャンスがないと判断した選手を積極的にトレードで外に出したり、FAを推奨したり(できれば大リーグが理想でしょうが)するなりの手を打たないと、選手を囲い込むだけでは機能しない段階に来たのかもしれません。
ファイターズの新庄監督は、マリーンズに移籍した建山コーチについて歓迎の姿勢を見せています。
水面下ではいろいろあるのかもしれませんが、このような姿勢が結果としてプロ野球界を活性化させるとも思います。
今後ホークスは、自チームの発展だけはなく、プロ野球界の発展も見据えて選手の育成に取り組んでほしいかなと思います。
もちろん、善意でやる必要はない。しっかりとビジネスに組み込めばよい。
そのためには、いかに選手を「売り出すか」という視点も一つの考え方ではと思います。FAだけはなく、金銭トレードも活用し、選手に付加価値をつけて送り出して、対価を受け取る戦略も今後重要になるのではと思っています。