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「地域独占企業」としての九州大学の憂鬱【入試問題の迷走からみる閉塞感打破の難しさ】

久しぶりに九大について書いてみます。

ここのところ、教材のネタ探しとして、同じ地方旧帝大としてカテゴライズされる東北大や北海道大の入試問題にあたっていますが、とても「個性的」だと感じます。

ほんまかいなと思うものの、まもなく一般入試が終わるらしい東北大の問題を見ると、九大とずいぶん違うなあと感じます。

ちょっとマニアックですが、2024年の化学の溶解度積の問題をみると、「本気か!」とさえ思います。

現象を数値計算して、確認させる「だけ」の問題ですが、妙に捻った入試問題よりはよっぽど「まとも」であるとも思います。

溶解度積は、難しいカテゴリーだから、このくらいの難易度でもありなのかなという考え方が東北大の先生にあるのでしょうか。テクニックなど不要。溶解度積の理解があれば十分解ける。これも大学の個性なのかもしれません。

また、ここ数年の九大の入試問題の価値観ではありえない問題でもあります。

九大の入試問題の「難化」について、あれこれと分不相応に頭を悩ませていることもあり、結構びっくりしました。

ただ、九大の難易度の乱高下は、同情できる部分もあります。というのも、九大は、地方旧帝大という「地域独占企業」とも言える存在だからです。

それは、結果として身分の固定化にもなっている。九州内では、絶対的な存在として君臨できる一方で、上にも行けないという閉塞感が強くあるのだろうと思うからです。

そんな現状を打破する一つの考え方として、入試問題をいじってきているのは、現実的な対応とも言えそうですが、その対策にも限りがあります。入試は結局のところ相対的な点数で決まるので、野心的な問題をつくっても、マッシロシロスケの答案が乱発される結果となり、それ以外の問題で結果が決まる。

そうなっては、ゲームチェンジの要素を現状の入試問題で見出すことが難しくなり、それが結果として、総合型選抜入試への期待となってしまうのも無理のない所かなと感じています。

それが反映しているのが芸術工学部でしょう。もともとは、九州芸術工科大学という独立した大学でしたが、2003年に九大に統合されました。そのような背景もあり、しがらみにとらわれない入試ができるのではとみています。

総合型選抜入試でも共通テストは必須で、その点は評価できるものの、デザインの実技がある学科では、センター試験時代から他学部ではありえない点数しかとれていないのに、絵が上手な子が通るという、なんとも形容のしようのない現象も起きています。

それでいいのかどうか、正直なところよくわかりません。

いろんな試みに対して、それを逐一批判的にみるのは正しい観方とは思わないものの、塾の現場では、モヤモヤ感があるのも事実です。

結果として一般入試が最大の負担となる制度で、それとは違う入試制度は、相対的に「楽な制度」となる側面がある。
そのことが「公平性」を揺るがすのではと思います。

ならば、東北大のように一般入試をやめてしまえば、公平性が担保されるという考え方も成り立つのかもしれません。
それは、正しい考え方なのかは、東北大の試みが証明するのかもしれません。



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