衆議院議員補欠選挙長崎4区の結果について【政治シロウトの九州人がわかる範囲で解説します】
昨日、長崎4区衆議院議員補欠選挙が行われました。
結果は、自民党公認の金子容三さんが当選となりました。
この選挙、地方の事情と全国的な傾向が絡み合い、このような結果となったと私は理解しています。
高知・徳島の参議院補欠選挙が、野党候補がゼロ打ちで勝ったこともあり、リベラル界隈では、いろんなことを言う人がいますが、情報不足もあり、正しい分析ではないと感じることもあり、私のような人間が書くのもどうかなと思いましたが、書いてみます。
書きたいことは3つです。
長崎4区の有権者は、
・いわゆる「世襲議員」を選んだ。
・政治への意識が低い
と
・野党は有力な対立候補を立てられていない。
について、批判が正確でないと思うのでその点を書きます。
(1)金子容三さんは、厳密な世襲議員ではない。
まず、当選した金子容三さんの祖父・岩三氏、父・原二郎氏は、それぞれ農水大臣を務めたこともあり、形式上は世襲議員になりますが、金子容三さんは、世間が批判している世襲議員のパターンにあてはまらないと思っています。
一般的には世襲議員は、大学を卒業後、腰掛的に大企業で働いたり、海外の大学に留学した後、父親の秘書となり、政治家見習いのような修行を経て、地盤を受け継いでいくパターンが一般的です(岸田首相、安倍元首相などもこのパターンです)。
しかし、金子容三さんは、このような経歴ではありません。
そして、世襲議員は、地盤(選挙区)、看板(知名度)、カバン(選挙資金)を受け継ぎますが、
カバンはともかく、地盤、看板については、長崎4区の選挙という点に限れば、微妙だったと思います。
そもそも、父親の原二郎氏が長崎4区の衆議院選挙を戦っていたのは、1996年が最後。その後、長崎県知事、参議院議員へと転じているので、30年ちかくの空白で、地盤は消滅していたとみることも可能ですし、原二郎氏が引退するときにも、参議院議員候補の後継指名はされていない。
金子家の政治家としての系譜は途絶えたと思っていた有権者も多かったのではと思います。
なので、世襲議員が当選するパターンが踏襲されたというのは、微妙ではと思います。
(2)立憲民主党の末次精一さんは、叩き上げの政治家
一方、敗れた末次精一さんは、京都大学を卒業後、大手製鉄会社勤務を経て、小沢一郎さんの下で政治を学んだ人です。県議から、国政に挑んだ生粋の小沢チルドレンです。
そもそも長崎4区には、選挙区事情から自民党から民主党へ転じた宮島大典氏(現佐世保市長)がいて、末次さんは野党系候補としては2番手で泡沫候補という苦しい時期がありました。
宮島さんが国政挑戦を降りたこと、立憲民主党が誕生した(小沢さんが入党した)ことで、ようやくチャンスを得た。前回の選挙では数百票差での僅差の敗戦であったものの、比例復活で国会議員のバッチを得た。
末次さんは、まだ地方が政治家を育てる風土がまだ残っていることを象徴する候補でもあったのです。
長崎4区の有権者が安易に世襲議員を選んでいる指摘は、どうなのかなと思います。
(3)今の政治環境を反映した結果では?
今回の選挙は、佐世保市、佐々町(佐世保市のベットタウン)を都市部、その他を地方部と分けると、金子さんが地方部でリードし、末次さんが都市部で巻き返せなかったというのが結果を決したようです。
今回は地方部>都市部となった結果となりましたが、
状況によっては、都市部>地方部となることもありうる。
このような結果をもたらした最大の要因は、都市部の有権者の6割が棄権していることではと思います。
有権者の半分以上の票が眠っている。これは、もちろん有権者の意識の問題ですが、それを覚醒させるための、政治の努力、とりわけ野党の努力が求められると思っています。
そのことが与党への刺激となり、何より政策決定のプレッシャーになる。
世論調査で伸び悩む岸田政権の批判票の受け皿として、立憲民主党がその役割を担っていないことが、
自民党に票を入れたくないなら、選挙に行かない
ということになっているのではと思います。
これは、地方の事情というより、全国的な傾向ではと思います。
私は、自民党の政治にあれこれ言うよりも、オルタナティブとなる政策に明確な違いのある対立政党を育てることが大事かなと思っています。
特に消費税について、自民党と同じスタンスであれば、大きな社会的変化は無理で、このまま垂直降下する運命にあると思っています。
消費税のスタンスでいうと、立憲民主党に変化を促すか、消費税について明確な旗を立てている共産党やれいわ新選組を育てるしかないのではと思います。
凋落するスピードと消費税へのスタンスを変化させるためのスピードとどっちが早いのかが政治の方向性を決めるのかなと感じています。