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東洋大学の「学校推薦入試 基礎学力テスト型」が波紋を広げる理由を考える【そもそも文科省が激オコするのは、おかしくないですか?】

発表から話題をさらっていた感のあった東洋大学の新しいタイプの推薦入試。12月1日実施されたようで、朝日新聞が記事にしています。

(プレゼント機能を使っています。12月8日9:47まで上記リンクで読めます)

志願数約2万人、志願倍率が約35倍に上る人気ぶり

上記記事より

とのことで、いかにインパクトのある入試制度だったかがよくわかります。だからこそ、記事あるように反発が大きかったことは、これが不都合な真実となった面があるとも言えそうです。

この記事にあるように、東洋大学の関係者からすると、なぜウチだけが批判されるのかというのはちょっと同情できるところがあります。

東洋大側は「科目数が少なく、出題内容も基本的。一般選抜の個別学力検査とは異なり、基礎学力を確認するもの」「関西を中心に全国で実施されている試験と同様であるにもかかわらず、なぜうちだけ、という思いはある」とする。

記事より

というのも、毎年、福岡大学は、11月下旬に公募推薦(A方式推薦)を実施していますが、受験生の感覚では、誰も推薦入試だという認識ではいません。最初の一般入試という感じで臨んでいます。学力試験があるからです。

私の周辺では薬学部は一般入試が難しいこともあり、ここで合格を確保できるように頑張る受験生が多いです。

では、なぜ東洋大学の新しい推薦入試がやり玉にあがるのか。

福岡大学の場合は、大半の学部学科は、合格後の入学を確約させる「専願」入試となっています。なので、進学する意思という点で、学科試験が課せられても推薦入試と解することは可能です。

東洋大学のこの入試は、入学申込金以外の納付金が2月末まで猶予されるので、実質辞退ができる入試制度になっている。

これが「問題」となっているのでしょう。

 東洋大の新入試について、文科省大学入試室の担当者は取材に、「実施要項に反している。大学にも『検討のうえ対応を』と伝えた」と明かし、「関西などの大学にもルールを守るように働きかける」と話した。

記事より

文科省の担当者は、分かっていて、わざと「学科試験の推薦入試」であることを問題としているように感じます。

ルールがあるとすれば、むしろこっちで、専願でない推薦入試がダメだと、大ぴらには言えないので(言えない事情があるのでしょう)、学科試験がダメだと言っているように聞こえます。

この文科省の反発は、推薦入試そのものが、何のためにあるのかという点を明らかにしてしまった感があると見ています。

それは青田刈り入試であることのカモフラージュとしての推薦入試という位置づけです。

そして、学校型推薦入試と総合型選抜入試を「区別する」ことで、青田刈り枠を増やす口実にしたのではという視点です。

つまり、学科試験を課さないから、別枠入試とする意味があり、年内に定員を埋めてもよいというロジックです。

そのためには、総合型選抜入試に「箔」をつけないといけない切実な事情があったのでしょう。

私は、自分なりの結論として、文科省にしろ、旗振り役だった私大にしろ、一部の国立大にしろ、総合型選抜入試について、これが一般入試に比肩にならない、よい入試制度であるという喧伝が必要だったのかなと思っていました。

東洋大のこの入試制度に反発や危機感が出るのは、このことを傍証してしまったなとも感じています。

これは、この国らしい光景だとも感じます。ルールは明文化されず、従うべき事項は「こういうことなんでよろしく」的な空気で醸し出される。
東洋大は、その感受性が弱かったのか、竹中〇蔵先生のご威光が弱かったのか、文科省の虎の尾を踏んだのかもしれません。

そうなると、ますます総合型選抜入試って何なん?という思いは強くなってしまいます。

なぜなら、総合型選抜入試が素晴らしい未来を拓く入試制度であるならば、「東洋大は、時代遅れの遺物である学力試験をわざわざ導入してる。バカじゃないのか」となって然るべきだからです。

文科省が激オコなのは、筋が通らないところがある。

しかし、現実はそうではないようで、

都内の私大関係者からは悩みながら「追随」をほのめかす声も。都内私大の関係者は「一定の学力のある学生を奪われるので追随せざるをえない」。別の都内私大の関係者も「来年度に向けて検討中」と話した。

上記記事より

事実上、私大側の認識では、年内入試組は、学力が微妙な人たちを一定数内包していることがすでに前提となっている。本音は一定の学力のある学生が欲しいのであって、「学ぶ意欲でデコレートされた学力のない学生」ではない。あまりにあたりまえな結論なのに、これまで一体、何をやろうとしていたのか。

東洋大のこの動きは、年内入試という半ば定着の方向に動いている「新常識」に一石を投じたことになるのでしょう。これで済むとは思えません。余波は起こる雲行きかなとも思っています。

「年内入試」で受験を終わらせたいという無視できない数の「必死のパッチで一般入試を避ける受験生」を制度として作りだしたのは、紛れもなく供給側である大学の方。

このツケは結構大きく、それは大学内での教育問題として今後横たわるでしょう。年内入試組の勢力が拡大すれば、今は一生懸命「非一般入試で入学した学生のGPAは高い」という言っている主張は段々揺らぐことでしょう。

こればかりは、自業自得としか言いようがないと思いますので、それこそ自己責任で何とかするしかないのではとも思っています。



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