医学部を女子が席巻する日(前編)
今回は、こちらのニュースから
数年前に、医学部入試における女子差別ともいえる問題が表面化しました。当然の流れとして社会問題となりました。訴訟も起こり、また合格者の男女比を国公立、私立を問わず情報を公開する流れもあり、是正が図られたようです。
入試の現場を預かる立場としては、女子が逆転したというニュースは、当然の結果であるとしか受け止められません。それどころか、医学部が恣意的に男女の格差を設けないのであれば、今後女子の比率が高まっていくと予想しています。
表題にあるように、医学部を女子が席巻する日が来ても決して不思議ではないと思っています。
このテーマについて、前編と後編に分けて書いていければと思います。
今後、医学部は、女子の割合が増えていくだろうと思う理由はシンプルです。
それは、医学部入試、ひいては受験勉強の進め方において、女子の方が男子より優位にあると感じるからです。
今回、以下のキーワードから男女差を見ていきたいと思います。
お断りしておきますが、あくまでこのような傾向があるというだけあって、成功失敗の要因において、男女問わず受験生の個性が勝っている場合も多々あります。その前提で話を進めていきます。
(1)主観と客観
受験において、主観で現実をみる場合と客観で現実を見る場合では、客観が優位に立ちます。仕事でも自分の行動を客観的に捉えられる人がいい仕事をします。
この主観、客観において、圧倒的に客観的に現実をみることができるのは、女子です。
医学部入試において、苛烈な現実を厳しいまま受け止めることができるのが女子で、余りの厳しさに自分の都合のいいように理解しがちなのが男子という傾向があります。
そのため、厳しいがゆえに、医学部受験から降りる判断ができるもの女子とも言えて、ミスマッチ受験は圧倒的に男子が多くなります。
ご家庭の事情もあるのかもしれませんが、何年浪人しても医学部は無理と判断できない受験生はほとんどが男子だと言えます。但し、男子で客観的に現実をみることができる子は、頭一つ抜きんでています。
結果、医学部受験生として戦っている女子は粒ぞろい、男子は玉石混交という感じです。そのため女子の方が合格率は高く、
その粒ぞろいの女子受験生は年々増えている印象があります。
それは、医学部受験が厳しいとアナウンスされているので、女子受験生が早めに準備をしているからだと思っています。
医学部受験が厳しくなればなるほど、客観的な現実の受けとめという点で女子の優位性をつくっているのではと思っています。
(2)長所と短所
次に長所と短所の評価の違いを感じます。
傾向として、
女子は長所を過小評価し、短所を過大評価します。
逆に
男子は、長所を過大評価し、短所を過小評価します。
これは、受験生の性質が大きく絡むところがありますが、それでも全体的な傾向としてあります。
医学部受験以外では、そこまでの問題点を感じませんが、どの科目もハイスコアを求められる医学部、特に国公立医学部では、無視できない要因となります。
この長所と短所の認識の違いが、普段の勉強のマネジメントに少しずつ影響しているのだろうと見ています。
約1年の時間の使い方の結果、女子は長所の現状維持(※注)と短所の修復を、男子は長所の伸びの鈍化と短所の放置というパターンが出がちです。特に短所の放置がやっかいで、「何とかなります」とか「〇〇の模試ではいい結果でした」とか気になる発言をしがちです。改善に時間とエネルギーを心理的にかけられず、主観的な見方がそれを後押しがちです。
※注:医学部入試において、長所を極限まで伸ばすのは難しいです。偏差値が70に近づくと現状維持でも多大な労力となります。
ただ、これにも
長所を過小評価し、短所を過大評価する男子受験生もいて、このような方は医学部になのに順当に結果を残していきます。
個人的には、上記の男女差は大きな差ではないと思っています。受験の結果を決定的に分ける要因ではなく、意識の持ち方で何とでもなると思えます。
なので、全体の傾向が分かった上で、医学部を目指す受験生、特に男子にはアドバイスをしています。
しかし、耳を傾けることができるのは、少数派です。それを阻むのが男子固有にありがちな問題でもあります。
男女差で最も厄介な問題がこれだと思っています。その点について後編で触れます。