第2回 都内自治体向け連携ワークショップを開催しました。
皆さん、こんにちは。つながる東京推進課です。昨年8月でもご紹介しました都内自治体向け連携ワークショップの今年度第2回目を、令和6年1月12日(金)にTOKYO UPGRADE SQUAREで開催しました。
現在、社会的に大きな課題や心配事は能登半島地震のことだと思います。
お正月、大きな地震に見舞われて、被災地の方々は大変な思いをされていることと思います。心よりお見舞いを申し上げます。
被災地には、全国から救援、救助に多数の方が駆けつけ、東京都からも多くの職員を派遣しています。現地では被災者の方はもちろんですが、救援等で活動する上でも通信が途絶えているということが、大きな課題となっています。通信が社会のインフラとして重要になっている現状では、やはり通信は多様な手段で冗長化し、こうした災害に備えていくことが大事なことだと改めて感じています。
〇開催にあたって
私たちは、つながる東京推進課ということで、「いつでも、誰でも、どこでも、何があっても」 つながる東京を目指しています。
多様な通信手段を、その特性に応じた適材適所で使っていくことで、つながる東京を実現することを方針としています。そのために、都内区市町村の皆さんと協力し、連携していきたいと考えております。
冒頭述べたように、災害の対策ももちろん大事ですが、災害時に有効に活用するためには、日頃から生活の中で使っていくことも大事だと考えています。
日常の中でどう活用していくのか、新しい技術を使った活用事例から考えていくために、今回は総務省地域情報化アドバイザーの方から情報通信を活用した地域社会DXの事例について、またスタートアップ企業の方に通信を活用したサービス・製品をご紹介いただくことにしました。
〇情報通信を使ったサービス導入について
(1)情報通信による地域社会DXの事例紹介
今回は、総務省地域情報化アドバイザーをお招きし、通信を使った先進的な取組をされている自治体のサービス導入事例についてお話をいただきました。
・先進自治体の事例紹介
長野県伊那市は県南に位置し、人口約6万5千人、東京から、約3時間の場所に位置しています。
最近では県外から恵まれた自然環境を求めて移住される方も多いようで、元々の住民だけでなく、そうした移住してきた方達にとっても住みやすい街づくりを目指しています。
高齢化社会が進み、全国どこでも共通した地域課題となっているのは、「交通、買い物、医療」の分野ですが、これらの課題解決に向け伊那市では、5年前から取り組んでいます。
・空の交通「ドローン」も活用しています
物流ドライバー不足などから現在、無人ドローン物流の法律が整備され全国でサービスが開始されています。伊那市では令和2年8月から事業化されており、約10kmほどの中山間地の南アルプスの長谷地区、高遠町地区の間で、11時までに注文すれば、ドローン使って即日配送ができる買い物支援の仕組みを構築しています。
各家庭からの注文は、ケーブルテレビのデータ放送を使っています。山の中ではテレビの電波も届かないところがあるため、各家庭にケーブルテレビが普及しているからです。現在、約500品目の買い物ができるようになっています。
先ほどのタクシー予約をはじめ、遠隔医療予約や安心見守りサービス等も同様にケーブルテレビを使って展開しています。まだまだ広域に実装されるにはクリアしなければいけない課題の多いドローンですが、ここでは現在飛距離が短いということ、それから通信を使うため上空ですと電波が届かないといった課題があり、整備が必要とお話されておりました。
・最後に、医療課題に関して
医療に関しては、医師不足、通院困難が挙げられます。そこで伊那市では、医療MaaSオンライン診療に令和3年から取り組んでいます。
固定した診療所を作るのではなく、動く診療所ができればいいなという発想から現在の実装に至っています。また、通信環境を整え、医師と患者だけでなく周辺の福祉や介護の人たちと情報連携できる仕組みを作り、地域包括のプラットフォームとしても活躍しています。
また、高齢者だけでなく妊婦さん向けにもサービスを提供されており、車の中で病院にいる先生や助産師さんと診療できる仕組みがありますが、今よりスムーズなやり取りをするためには5Gのネットワークが必要だといいます。
30年ほど前、電話回線時代、地域の人たちが求める「つながる」を実現するため、どうせやるなら当時最先端だったADSLを導入しようと決意をされ、そこからは常に最新の技術にチャレンジすることで、今もなお、市民のQOL向上に努めています。
全国自治体のトップランナーである伊那市の事例は、同じ課題を抱える区市町村職員にも興味深かったように感じました。伊那市内では、ドローンも実際に飛んでいてモバイルクリニックも動いているため、私も実際に行って見てみたいと思いました。
(2)スタートアップ企業による5G活用に向けて
続いては、東京都の次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業の開発プロモーターである株式会社キャンパスクリエイト様の取組についてお話しいただきました。
キャンパスクリエイト様は、電気通信大学内に所在する産学官連携を主に行っている企業です。10年ほど前から自治体の産業振興にも携わっていて、5Gを活用してどういったビジネスを生み出していったら良いのか、というお話をしていただきました。
5Gはビジネスを広げる基幹インフラであり、スタートアップ企業によって生み出されるサービスは、地域産業の活性化、地域課題の解決につながっていきます。
取組事例の紹介を通じて、5Gインフラ普及の意義、産業振興の効果を各自治体に検討いただく一助になればとの想いで、いくつかスタートアップ企業のサービス事例をご紹介いただきました。
今回はご紹介いただいたいくつかあるうちの一つ、テレプレゼンスシステム「窓」のサービス展開しているMUSVI株式会社様を実際にお招きし、ご登壇いただきました。
MUSVI株式会社様は20年近くソニー株式会社で窓を研究開発されてきた方を中心にソニー出身者が集まって令和4年に作られたスタートアップ企業となります。
新型コロナとの長い闘いを乗り越えた今、働く環境やサービス提供する場所の在り方が変わりつつあると思います。リモートワークやフリーアドレスも定着している状況の中、リアルとデジタルのどちらがよいか、ということではなく、リアルとバーチャルを組み合わせ、「窓」のようなプロダクトを遠隔コミュニケーションに活用していくことを提案されています。
・テレプレゼンスシステム「窓」とは
「窓」は、距離の制約を超えて、人と人、人と空間をつなぎ、あたかも、同じ空間にいるかのような自然なコミュニケーションを実現することを目指しています。
臨場感「目の前に立っているような対話」と、気配「同じ場所にいるようなつながり」を感じられるよう開発されました。
同時に会話してもハウリングすることなく、リアルに近い形でコミュニケーションが取れるとのことで、実際に実機を会場にお持ちいただき体験させていただきました。
現在、民間企業だけでなく自治体での活用事例が増えているということですが、離れた場所でもシームレスにつながる一体感を実現しているところが、この製品の魅力です。遠隔医療や教育といった場所ではもちろん、遠くにいても普段の様子が伝わるということで危機管理の現場でも採用されているとのことでした。
「窓」の活用にあたっても、5Gのネットワークを使うことで、より安定的に活用でき、本来の目的が達成できると考えます。
区市町村の皆さんも、熱心に体験し、活発な質疑がされました。また、離島間のコミュニケーションにも有効そうだとのご感想もいただきました。
〇おわりに
都内全域に5Gの電波を行き渡らせるのが私たち、つながる東京推進課の最終的な目標です。基地局の整備は通信事業者の仕事ですが、行政の視点で必要なところから5Gの基地局の整備を、通信事業者に要請していく立場にあると考えています。通信を活用した地域課題解決に向けて、本日の地域DXの事例や、スタートアップ企業の取組事例等が参考になればと思います。そうした先進的な取組を基にデジタルを使ったサービスの相承に努め、つながる東京実現のため、自治体の公有財産を使って高周波数帯5Gアンテナ基地局設置していくということについても各自治体に持ち帰って検討いただきたいと考えております。
地域課題解決のために都内62自治体とより一層連携し、一体となって取り組んでいきたいと思います。
〇おまけ
登壇者との懇談会の様子