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レポート「ホスト歌会」2025年1月―2025年歌会はじめ

Smappa!Groupでは、毎月1回「ホスト歌会」をホストクラブAWAKEで開催しています。お題は「自由」または「その月の『NHK短歌』のお題」。歌会までに各自で短歌を詠み、提出。提出された歌は、名前を伏せて投票が行われ、歌会当日に開票!  ドキドキ。昇格制度もあるので、みんな上を目指して切磋琢磨しています。

ホスト歌会には、俵万智さん、野口あや子さん、小佐野 彈さん、上坂あゆ美さん、國兼秀二さんなどスペシャルな先生方にもご参画いただいていて(ありがとうございます!)、投票はもちろん、歌会当日も会場やオンラインで、愛の鞭で容赦なく?! 講評いただいています。

ここでは、毎月のホスト歌会の様子をお届けします!
今回は2025年1月16日に開催された2025年はじめてのホスト歌会について。
■テーマ:自由
■NHK短歌お題:物語、青空
ホストあるあるから、大晦日や正月にちなんだ歌も!
では、早速、31文字に込められたホストの想い、ホストの今を覗いてみましょう。


新人コーナー

今回は、「短歌研究」編集長の國兼秀二さんにオンラインでご参加いただいたとともに、『歌集 月は綺麗で死んでもいいわ』(新潮社)を上梓したSHUNも先生枠で参加。

はじめは新人たちが詠んだ歌を講評していきます。新人は一人5首まで提出でき、今回は全部で49首集まりました。では、高得点を獲得した上位三席の歌とそれぞれの歌に寄せられた感想をみていきましょう!

一席 予定なしNGばかりで居場所なく氷ぶら下げ彷徨う亡霊 蒼楽

9票を集め、堂々と一席に輝きました!
この歌に票をいれたみなさんからは「饒舌な表現が好き」「情景が良く浮かぶ」「日々、現場で見る光景に親近感」など、ホストあるあるとして共感をよびました。先生枠のSHUNからも「ホストならではの光景であること。観察したかのように綺麗な描写が良かった」と一票。
その一方で、國兼さんからは「外の人に伝わりにくいかもしれないね」というご指摘をいただきました。さらに、体言止めの使い方についての意見交換も勃発! 体言止めはかっこいいけれど、もっと良い言い回しがあったのではないかと模索が続きます。初っ端からアツいです…ホスト歌会!

蒼楽 SMAPPA!HANS AXEL VON FERSEN


二席 普通じゃない関係だけどささやかに街並みみたく笑いあいたい  奏

続いては5票を獲得したこちらの歌。詠み手の奏は特待生に昇格です! おめでとうございます! お客様とは普通の恋人ではないかもしれないけれど、普通とか普通じゃないとか関係なく、日常のように笑いあえていたらいいなという気持ちを込めて「街並み」という言葉を使ったと、奏。そんな「街並み」の部分がみなさんの心をつかんだようです。

オンラインでご参加いただいた麻布競馬場さんは、「『街並みみたく』がとても刺さって、いろんな解釈ができる。言い切らない美学と余白の広がりが美しい。今回一番いいなと思った」と高評価をいただきました。
他にも「人情味あふれる感じが良い」「『ささやか』と『街並みみたく』がうまくかかって、いろんな光景を俯瞰的に見ることができて良い」などの感想が飛び交い、國兼さんも「うまいねえ」とうなずきます。

同率三席 映画より小説よりも人生が物語だと言える生き様 空条承太郎

4票を集めて三席! はじめて5首詠んだという承太郎。「NHK短歌」のお題「物語」を入れこんで、自分の願望をストレートに詠んだとのこと。そのストレートさが響き、「わかる、こういう風に生きたい!」と共感した人が投票をしたようです。31文字で共感を呼んでしまうところに、短歌の魅力を感じます。

同率三席 あけおめを無意味なラインの口実に久方ぶりに連絡を待つ 武尊

「ホストじゃなくても、『あけおめ』は気になる人に連絡できる一言かも」「無意味だと思わないけど、ホストやりがちなやつ」「わかりみがある」などなど、うなずく人続出。國兼さんからは「『久方ぶりに連絡を待つ』の一言で連絡ほしいなという気持ちがちゃんと出ているのが、いいね」と、あるあるを離れて、言葉の選び方の良さに気づかせてくださいました。

同率三席 ロング缶踏みつぶしたらシン・ゴジラ才能ある人生選ぶの MIOKO

まだまだ続きます同率三席!ホスト歌会に初参加してくれたモデル・役者、アーティストとして活躍するMIOKOさんによる歌です。MIOKOさん曰はく、「孤独」と「才能」について語り合った友人と自分を重ね合わせた一首とのこと。
「『ロング缶踏みつぶしたらシン・ゴジラ』って、なんか、いい感じの表現。何とも言えない表現がぐっときた」「上の句と下の句が繋がっていないのに、それがなんかいい」と、みなさんの「なんかいい!」をかっさらっていました。

麻布競馬場さんからは、「下の句が最高に良い。パンチが効いてる。字余りになることを恐れず『の』をつけたのが超良い」と評していただきました。國兼さんは、「意味不明に聞こえるけど、いい感じ。ゴジラが入るから歌舞伎町らしいけど、なぜ下の句に繋がるのかわからない。だけど、そのわからなさがいいんだよね。わからないままでいいんだよね」と、まさに短歌の楽しみ方の醍醐味を考えさせる一言をいただきました。

詠むも自由、読むも自由!



特待生コーナー

新人コーナーだけで随分ボリューミーになってしまいましたが…続きまして特待生コーナー! 特待生になるとぐっとレベルがあがります。何でしょう…特待生になるといぶし銀のようなオーラが漂っているような…。

特待生は一人3首まで提出ができます。今回は25首が集まりました。では上位三席とそれぞれの感想をみていきましょう。

一席 振られると予感はしていた大晦日十三月を一人で過ごす 大崎愛海

10票を集めてぶっちぎりの一席です!
「1月は年が変わって気持ちを新たにする年だと思うが、13月にすることで、まだ引きずってる感じがとても伝わる」「一人だけ年を越せなかったことがよくわかる」「みんな1月1日を生きてるのに、この人だけ13月というパラレルワールドを生きているみたい」と、「13月」という表現にみなさん惹かれていました。國兼さんからも「13月という少ない字数で、多くのことを言っているのが素晴らしい」と評価いただきました。

右京の「振られる側はもちろんだけど、振った側もエネルギーがいると思う。この歌からは振った側も13月を過ごしてるのかなと想像できるのがいい」と、相手のことも想像した感想には、会場から「おお~」と歓声が沸き、詠み手の愛海からもいいことを言ってくれたと喜びの声が出ました。

ホスト歌会に参加していると、詠む力だけでなく、読む力/感想を言語化して伝える力もついてきますね。


大崎愛海 


二席 君のこと嫌いになった訳じゃない女の子って最後は無なの 建人

さてさて、どんどんいきます。次は8票を獲得したこちら! 健人は二段に昇格です!おめでとうございます。
「ホストあるある。嫌いって言ってもらえるうちはまだ興味を持ってもらえていると思うけど、無になったらもう完全におしまい。そんなホストあるあるをバッチリ決めていた」「無はおしまいです」と、みんな頷きます。

國兼さんは「凄いこと言うな~と驚いたけど、ホストあるあるだというみんなの感想を聞いて、みんながちょっと虚無に近いものを抱えて生きてるんだなって感じた」と、短歌を通じてホストの気持ち、生き方の一端を感じていただきました。

三席 雨の日に傘を開いて会いに来るたったそれでも愛だと思う 大崎愛海

7票を獲得。「シンプルに雨の日にお店に来てくれるお客様はありがたいという気持ちを詠んだ。雨が降っていても、楽しみに会いに来てくれるお客様がいらっしゃることの幸せと感謝の歌」と愛海。お客様を一番に考えているSmappa!Groupのみんなに突き刺さり票を集めました。

Smappa!Group代表の手塚は「簡易な言葉で物語を伝えることは難しい。これは行動もシンプル。だけど、傘をさして会いに来てくれる、そんなひと手間の愛とそれに対する喜びに至る想像力を掻き立ててとても良い。ホストとお客様の関係だけでなくても当てはめることができる」と一推し!



さて、新人/特待生、それぞれで上位に輝いた歌を見てきましたが、実際のホスト歌会では、この後に、ほかの歌についても感想を伝えあい…2時間たっぷり短歌の世界に浸ります。

今回は、歌会の様子の写真を撮るのをまんまと忘れていた中の人です。。。
2月の歌会は写真もお届けできるように、カメラマンとしてもがんばります(と自分に言い聞かせる)。

2月の歌会レポートもお楽しみに!

ホスト歌会―特待生番付表

2025年1月時点での特待生の番付表です。みんなの昇格をお楽しみに!



ホスト歌会とは…

はじまりは2018年の夏。Smappa!Group代表の手塚マキが「歌舞伎町ブックセンター」(2025年2月現休業中)で開催した、歌人・小佐野彈さんの『メタリック』(短歌研究社)の刊行記念イベントで、即興でホストたちに短歌を詠ませて、その場で講評いただいたことがきっかけ。それから毎月、歌会を開催して、あっという間に7年目です。

「お客様が嬉しいとき、悲しいとき、その気持ちをちゃんと酌んであげることができる人間になってほしい。感性の幅を広げる教育をしたい(97頁『ホスト万招集 文庫スペシャル』講談社文庫)」と、若い世代のホストに教養を培ってほしいと願い、教育をしている手塚。

さらに、「お客様のちょっとした一言や、さり気ない一言、LINEの短い文章の裏側にある背景やお客様の気持ちを読み取ることがホストの仕事だと思っています。―中略ーどれだけの気持ちが込められているかを読み取ることができる彼らなら、短歌を作ったり読んだりすることを楽しむんじゃないか、向いているんじゃないかと思いました(98頁 同上)」という、手塚のホストの性格や「らしさ」「魅力」をより惹きだしたいという想いも重なって、「ホスト歌会」は誕生しました。


ホスト歌会をあなたの傍らに


ネットプリント折本『ホスト万葉集 「歌舞伎町は豪雨なんです晴れてても」』

毎回、歌会後に、厳選した歌を集めた折本『ホスト万葉集 「歌舞伎町は豪雨なんです晴れてても」』をネットプリントできます。切れ込みを入れて点線を折ると本ができあがります。都度、公式Xでご案内しているのでぜひフォローしてください。お気に入りの歌がある方は夜な夜な愛でたり、声に出して読んだり、ポケットにねじ込んでいざという時に取り出したり?!  …ぜひ楽しんでください。


本で楽しむ「ホスト歌会」が本になりました
『ホスト万葉集 文庫スペシャル』(講談社文庫)
著:手塚マキと歌舞伎町ホスト80人 from Smappa!Group
編:俵万智、野口あや子、小佐野 彈


SHUN『歌集 月は綺麗で死んでもいいわ』(新潮社)



その他、関連情報
幻冬舎プラスで連載中:SHUN「歌舞伎町で待っている君を」



「欲望だらけの世を、言葉でつかまえる」増島拓哉×SHUN(歌人・ホスト・寿司職人)『路、爆ぜる』刊行記念対談




Smappa!Groupは、歌舞伎町で生きる歓びと文化の創造を目指し、ホストクラブ、書店、飲食店、ヘアメイクサロン、アートギャラリー、介護サービスなどさまざまな事業を展開しています。Smappa!Groupは、一緒に働く仲間を募集しています。お気軽にお問い合わせください。


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