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私の好きな国名シリーズの話(続エラリー・クイーン)


 ちょこちょこと、エラリー・クイーンを(再読も含め)読んでるのですが、ようやく国名シリーズを読み上げたので、私的なランキングを考えてみました。


 国名シリーズは、探偵エラリー・クイーンが活躍する初期のシリーズで9冊刊行されています。

1.「ローマ帽子の秘密」
2.「フランス白粉の秘密」
3.「オランダ靴の秘密」
4.「ギリシャ棺の秘密」
5.「エジプト十字架の秘密」
6.「アメリカ銃の秘密」
7.「シャム双子の秘密」
8.「チャイナ橙の秘密」
9.「スペイン岬の秘密」

 いずれも国名がタイトルに付けられていることから、国名シリーズと呼ばれていますが、決して、その国で事件が起きるわけではないので、注意が必要です。

 著者=作品内の探偵役というスタイルや、手がかりが出そろった物語の終盤で、「読者への挑戦状」が挟み込まれることが有名で、その後の論理的な本格ミステリーに大きな影響を与えたシリーズですね。


 高校時代に何作か読んでるのですが、角川や創元から新訳が発行された流れで、シリーズを読んでみました。

 どの作品も、登場人物が多いので、翻訳ものが苦手な方にはお勧めできませんが、新訳はとっても読みやすく感じました。

 とはいえ、シリーズの中盤に来ると、定型された流れに飽きてきちゃったりするんですよね~、自分にとっては6~8番あたりを読むのは、ちょっときつかったです。



 まあ、最後まで読んでみて、自分的に面白かったなっていう上位3作品を紹介します。


 まず第1位は

 「オランダ靴の秘密」

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内容紹介~
 オランダ記念病院に救急搬送された一人の患者。だが、手術台に横たえられた彼女は既に何者かによって絞殺されていた。犯行が可能だったのは手術前のたった数十分だけ――。

 

 病院という閉ざされた環境の中で起きた殺人事件を扱ったものなので、事件としては地味なんですが、とにかく最後のエラリーの推理が切れ味鋭いです。

 前半は、動機を中心に推理が難航するのですが、最後は、犯行が可能だったのは誰か、ということが焦点に... もつれた情報を整理しながら、消去法で容疑者を一人ひとり消していき、最後に残ったのは.....。

 論理的な推理ものとしては、最高に面白かったです。



 次に第2位は

「ギリシア棺の秘密」

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内容紹介~
 急逝した盲目の老富豪の遺言状が消えた。捜査の甲斐なく一向に見つからず、大学を卒業したてのエラリーは棺を掘り返すことを主張する。だがそこから出たのは第二の死体で……。


 こちらは、シリーズの中でも傑作と言われる作品です。時系列的には探偵エラリーが扱う初めての事件で、事件の不可能性では、けっこうとんでもない事件だったりして、さすがに面白いです。

 しかも、この若いエラリーの推理が、間違うこと間違うこと、仮説を立てては捨ててを繰り返しながら、、、、最後にようやく真相にたどりつきます。

 シリーズの中では厚い方に位置する本書ですが、飽きることなく読めました。他のランキングと同様に1位としたいところですが、自分にとって、この真犯人は、ちょっと反則っぽいんです。
 ですから、1位ではなく2位で......



そして第3位は

「スペイン岬の秘密」

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内容紹介~
 北大西洋に突き出したスペイン岬。その突端にあるゴッドフリー家の別荘で、殺人事件が起きた。殺されたのは、ゴドフリー氏の客人。マントにステッキといういでたちで発見されたが、マントの下は全裸だった。


 事件の様子だけ見れば変態仮面な状況なのですが、シリーズらしい論理的な推理で解き明かされていく様子が面白かったです。

 シリーズとしては最後なんですが、原点に戻った感じが好印象でした。


*****


 シリーズ第1作の「ローマ帽子の秘密」は、初クイーンとしては読みづらいのではないかと思うので、順番にこだわらなければ「ギリシア棺の秘密」をお勧めします。

 その他、シリーズ中の傑作として評価の高い作品に「エジプト十字架の秘密」があります。
 犯人を特定する中核の推理は鋭いものの、自分には、宗教性が今一つピンと来なくて3位以内には入りませんでした。途中のサスペンス的な展開は楽しいのですが、国名シリーズに求めてなかったりするので、第4位ぐらいかなっと思っています。

 また、「シャム双子の秘密」は、特殊な状況下での話なんで、好き嫌いがあると思います。私的には外連味がある作品は嫌いじゃなかったりするので第5位とします。


 と、いうことで、クイーンの国名シリーズの私的ランキングですが、このシリーズはたくさんの人物(容疑者)が登場するので読みにくさがあるのは間違いないです。
 ただ、最近の本格パズラーを読んでる人にしてみれば、その好きな作家さんが少なからず影響を受けたはずの作品たちなので、読んでみて損はないと思うのです。