思い出のアカデミー賞(第62回アカデミー賞)
The 62th Academy Awards
毎年、「ゴールデングローブ賞」が発表されると話題となり始めるのが、今回で95回目を迎える「アカデミー賞」です。
まあ、「アカデミー賞」は "カンヌ" や "ヴェネツィア" などの国際映画祭とは異なり、基本、アメリカ映画であったり、アメリカで公開された作品を対象とした賞です。
選考でもアメリカの世相を反映した映画が選ばれることも多いんで、私にとっては、作品賞よりもノミネート作品の方に推しがあることもしばしばなのです。
多分、私にとって「アカデミー賞」は、必ずしも相性のいい賞ではないんですよね。
ただ、最も歴史のある映画賞であり、抜群の知名度を持ってるんで、ポスターとかに "アカデミー賞受賞作品" とか添えられていると、やっぱ気になって観ちゃう時もあるんです。
そんな距離感の私なんですが、実は、記憶に残ってる「アカデミー賞」があります。
それが1990年3月26日に開催された「第62回アカデミー賞」なんですが、この年の作品賞って、何だったか思い出せます?
パッと答えられる人はそうそういないでしょうが、その時のノミネート作品を眺めてみたらいかがでしょう.. どれが作品賞だったか思い出せますか?
ノミネート作品を見ても、作品賞がどれだったか分からない場合もあるかもしれません。
そんな方のために、今回は、「第62回アカデミー賞」について "note" していきます。
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なんで「第62回アカデミー賞」が記憶に残ってるかと言うと、ノミネートされた5作品とも観に行ったからなんです。
そんなことか… ってぐらいなんですが、「アカデミー賞」関係の映画は、ノミネートが5作品だった時代でも、大体、1~2作品程度ぐらいしか観なかった私なんです。
多くても3作品なのに、なぜか、この時だけ全部なんですよね。
まあ、縁があったってことで思い出深いのです。
「第62回アカデミー賞」の頃、私は20代の大学生で、自分の趣味においては "読書" や "音楽" よりも "映画" を優先していた時代です。
年間300本近くの映画やビデオを観ていて、毎週のように映画館に通っていたんです。
けっこう「アカデミー賞」作品も観てるんですが、好みの作品ばかりじゃなかったりするんですよね。
当時は、近年のように「アカデミー賞」の賞レースの予想や受賞の様子が大きく取り上げられたりすることはなく、日本に関係のあるものでなければ、結果も大きなニュースになることも無かったような気がします。
配給の関係で「アカデミー賞」後に公開される映画も多かったので、この時も賞を挟んで5作品を観ています。
「7月4日に生まれて」1990.2
監督:オリバー・ストーン
出演:トム・クルーズ
最初に公開されたのは社会派ドラマ「7月4日に生まれて」です。
1986年に公開された「プラトーン」で<第59回アカデミー賞作品賞>を受賞しているオリバー・ストーン監督が、トム・クルーズを主役に据えて、再び戦争を主題にした作品です。
「トップガン」や「カクテル」で人気絶頂だったトム・クルーズが社会派のオリバー・ストーン監督の映画に出演ということで話題になって、「アカデミー賞」とは無関係に観に行きました。
トム・クルーズが、戦争で障害を負った主人公を演じるため、実際に1年間車椅子に乗って生活したことも話題となりました。
テーマが重く、決してエンターテイメントではなかったんですが、今回の「アカデミー賞」はこれで決まり!っと、その時は思ったんですよね。
が…
結果としては<監督賞>のみの受賞でした。
「いまを生きる」1990.3
監督:ピーター・ウィアー
出演:ロビン・ウィリアムズ
2本目は、ピーター・ウィアーの「いまを生きる」
これ、いい映画なんですよね~。
規律ある伝統校に赴任した型破りな教師と生徒たちの交流を描いた映画で、コメディアンとして活躍していたロビン・ウィリアムズが、演技派として活躍し始めるきっかけとなった作品です。(と、私は思っています。)
ロビン・ウィリアムズ演じる先生って、いきなり教科書を破り捨てさせたりするんですが、けっこう真を突いたいいこと言うんですよね~。
20代の自分にはけっこう刺さるセリフが多かったのです。
ただ、この映画を観た時は、まだ「アカデミー賞」の結果を知らない時期でしたが、「7月4日に生まれて」の力強さは越えてないと感じてました。(でも、いい映画なんです。ほんと)
結果として<脚本賞>を受賞しています。
納得です。
「フィールド・オブ・ドリームス」1990.3
監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演:ケビン・コスナー
デ・パルマの「アンタッチャブル」が大好きで、一時期、ケビン・コスナーを追いかけてたんですよね~
その流れで観に行ったわけなんですが、これもいい映画なんです。
良くも悪くもアメリカンなファンタジー溢れるドラマでした。
いわゆる "コク" や "アク" の部分は薄い感じなので、賞レースは厳しいと思ってたんですが、「アカデミー賞」では無冠でした。
でも、日本アカデミー賞の最優秀外国語作品賞を受賞したり、日本ではヒットした記憶があります。
「マイ・レフトフット」1990.4
監督:ジム・シェリダン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ブレンダ・フリッカー
そして、脳性麻痺により不自由な身体ながら、家族の愛に守られ、かろうじて動く左足を使って画家として大成したクリスティ・ブラウンの伝記映画「マイ・レフトフット」…
当時の自分の趣向とは違ったタイプの映画だったのですが、『11PM』で今野雄二さんが激推ししてたので観に行ったという… 時代ですね。
映画の方は、ほんとすごい映画でした。
ダニエル・デイ=ルイスが主演なんですが、そこには「存在の耐えられない軽さ」や「イングリッシュマンinニューヨーク」のダニエル・デイ=ルイスではなく、まさに画家クリスティ・ブラウンがいるような感じなんです。ダニエル・デイ=ルイスを感じさせないんですよね~、すごかった。
この時、既に「アカデミー賞」の結果は知っていたのですが、何度泣いたか分からないぐらい泣かされてしまって、この作品こそ「アカデミー賞」に相応しいと思わせてくれた作品でした。
結果として、ダニエル・デイ=ルイスが<主演男優賞>、母親役を演じたブレンダ・フリッカーが<助演女優賞>を受賞しました。
そして、<作品賞>を受賞したのが、ノミネート作品の中では最後に公開された「ドライビング Miss デイジー」です。
「ドライビング Miss デイジー」1990.5
監督:ブルース・ベレスフォード
出演:ジェシカ・タンディ、モーガン・フリーマン
これまで紹介した4作を抑えて<作品賞>となった「ドライビング Miss デイジー」なんですが、自分の中では「マイ・レフトフット」のインパクトが強すぎて、それを超える作品なのかどうかを確かめるために観に行ったようなものです。
…結論から言うと、ノミネート作品の中では地味な感じなんですが、やっぱりいい映画でした。はい。
40年代から70年代のアメリカ南部を舞台にして、老婦人と運転手の交流を描く物語です。
老婦人の方はユダヤ系、運転手の方はアフリカ系ということもあって、あの時代の南部ですから、当然、人種差別も描かれているのですが、重くなり過ぎないよう、ハートフルなストーリーになっています。
驚くべきは運転手役を演じたモーガン・フリーマン。
おそらく、自分がモーガン・フリーマンを認識した最初の映画だと思うのですが、今回の記事にあたって予告編を観てみたら、なんかあんまり変わってないんですよね、30年以上前からあんな感じなんです。
さすがのフリーマンなのです。
また、老婦人役のジェシカ・タンディもいいし、その息子役のダン・エイクロイドもいい感じなんですよね。
「7月4日に生まれて」や「マイ・レフトフット」のような強いドラマ性はないんですが、観終わった後に心が温かくなる、しみじみいい映画だったのです。
<作品賞>と併せて、主演のジェシカ・タンディが最高齢記録の80歳で<主演女優賞>を受賞しました。
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以上の5作品です。
私的には、やはり「マイ・レフトフット」が一番だったのですが、他の作品も素晴らしい作品だったと思います。
ちなみに、この年の<外国語映画賞>は「ニュー・シネマ・パラダイス」だったんですよ。(そろいすぎですよね 笑)
「アカデミー賞」のような権威的な賞には、いろんな捉え方が生じるのですが、良い映画と出会うきっかけになってることも間違いないんですよね。
自分の中で「第62回アカデミー賞」が記憶に残ってる理由が皆さんに伝われば幸いなのです。
さて、もうひとつ、この「第62回アカデミー賞」を忘れられないものにしてる理由が、この時、黒澤明監督に『名誉賞』が贈られてるんです。
日本でも大きなニュースとなりました。(作品賞などの影が薄いのはそのせいかもしれませんね)
ジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグがプレゼンターなんて、黒澤監督が偉大過ぎて、日本の映画ファンとして誇らしい一瞬でしたね。
「まだ、映画というものがわかってない。」
という黒澤監督のスピーチも”らしい”ものでした。
いろいろある「アカデミー賞」なんですが、さて、今年はどんな作品と出会えるのか…
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