レベッカの"ママと娘のリフレイン"
【 NOKKO の歌詞世界】
バンドブームの先駆けであり、80年代を駆け抜けた伝説のバンド "REBECCA"
レベッカといえば、結成当初の路線を変化させ大ブレイクを果たしたバンドです。
制作側との対立があって、当時のリーダー、ギターの木暮武彦さんやドラムスの小沼達也さんが脱退し、よりポップな方向へ路線変更したことが、結果としてブレイクにつながります。
「ラブ イズ Cash」1985.4
作詞:NOKKO・沢ちひろ/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
新生レベッカの最初のシングル(通算では3枚目)だった「ラブ イズ Cash」
このポップな曲は、ほぼマドンナの「マテリアルガール」なんですよね。
この頃の洋楽で主流だったマドンナやシンディ・ローパーをイメージさせるカラフルなシンセポップ路線が新生レベッカのサウンドでした。
それが単なる物まねで終わらなかったのは、間違いなく、フロントマンである "NOKKO" の存在感によるところが大きいのです。
ガーリーとセクシーワイルドが同居するルックス、小柄なボディから繰り出される伸びのあるヴォーカル、激しいけど猫のようにしなやかなダンス… と、当時のロックシーンで "NOKKO" は唯一無二の存在だったと思います。
更に、これだけ人気になったのは、そんなパフォーマンス面に加えて、"NOKKO" の描く歌詞世界があったからだと思うんですよね。
だからこそのレベッカだったのです。
今回は、そんな "NOKKO" の歌詞世界について "note" していきたいと思います。
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インストゥルメンタル曲を除いて、これまでレベッカが発表した67曲中54曲が "NOKKO" 作詞(共同作詞10曲を含む)です。
もともと"REBECCA" というバンド名は、アメリカの小説家ケイト・ダグラス・ウィギンの児童文学『少女レベッカ』から採られているということです。(ヒッチコックの『レベッカ』じゃないんですよ。)
だからなのか、"NOKKO" の描く歌詞はいつも少女が主人公なんです。… もちろん、少女といっても、子ども子どもしてるわけではなくて、大人な部分もあるんです、でも成熟してるわけではない、そんな感じなんです。
河合奈保子風に言えば、♪ 大人でもない~ 子どもでもない~ って感じで、ミドルティーンから20歳あたりを含む、いわゆる「ヤングアダルト」世代だと思ってます。
自立しているようで、まだ不安がちだったり、夢を持ってるけど現実も知ってるみたいな… そんな世代の歌なんです。
「Motor Drive」1986.5
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
「LONELY BUTTERFLY」1986.10
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
「Motor Drive」の歌詞では、夢と現実に挟まれた、なんとも言えない焦燥感、「LONELY BUTTERFLY」では、未熟な二人による恋愛が故のすれ違いなど、不安定な心情を正直に表してるのが "NOKKO" の描く歌詞の特徴なのです。
そんな正直な "NOKKO" の歌詞だからこそ、なんか刺さるフレーズが多いんですよね。
自分にとって、特に印象的なフレーズのひとつが、代表曲でもある4thシングル「フレンズ」の冒頭部分だったりします。
「フレンズ」1985.10
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
すごいですよね。
少女性が変化した瞬間が凝縮されたようなフレーズだと思いませんか?
そして、このフレーズを印象的にしてるのは、間違いなく「ママの顔」の部分だと思うんですよね。
男の子側の自分として、決して短絡的に捉えてるのではないのですが、年頃の娘にとって「ママ」との関係って何か特別なものがあるように感じます。
この「ママ」という言葉、実は、レベッカの曲では繰り返し使われているキーワードなんですよね。
調べてみると "NOKKO" 作詞曲では、この「フレンズ」を含めて7曲存在します。
■ ■「ママ」という言葉が出てくる歌たち ■ ■
一応、「フレンズ」を除く6曲をリリース順に並べています。
「結接蘭 破接蘭(KE-SE-RUN PA-SE-RUN) 」1984.11
作詞:NOKKO/作曲:木暮武彦/編曲:レベッカ
(アルバム『Nothing To Lose』収録)
初めて「ママ」という言葉が登場したのは「フレンズ」以前の曲「結接蘭 破接蘭」です。
大人にならない彼氏にイラついて、別れようとするんですが、昔、ママから教えてもらった呪文をつぶやいているうちに、もう一度やり直してみようとする歌です。
感情的になった自分をなだめてくれたのは「ママ」の思い出だったのです。
そして、「フレンズ」をはさんで、次曲からは「フレンズ」以降の曲になります。
「WHEN A WOMAN LOVES A MAN」1986.10
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
(アルバム『TIME』収録)
親たちには内緒で?、こっそり夜に恋人と抱き合ってる場面の歌なんですが、娘は思うのです。
きっと、ママにだって同じようなロマンスがあったに違いないと…
母ではなく女性としての「ママ」に思いを馳せる歌なのです。
「CHEAP HIPPIES」1986.10
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
(アルバム『TIME』収録)
冒頭のフレーズが印象的過ぎる「CHEAP HIPPIES」なんですが、この曲で登場する「ママ」は彼氏の方のママなんです。
彼のママもなかなか手強そうな感じですよね。
まあ、ピンクの網タイツはどうなんだろう~って感じは残るんですけどね。(←嫌いではない!笑)
「MOON」1987.11
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
(アルバム『Poison』からシングルカット)
この「MOON」の主題となってるのは、ずばり「ママと娘」なんです。
"NOKKO" 作詞曲の中でも、一際、ドラマ性が強くて異彩を放ってる一曲です。
これまた、印象的な出だしなんですよね。
ただ、Bメロ部分では、更に忘れ難いフレーズが登場します。
ショッキングなフレーズですよね~ 初めて聴いた時はインパクトがあり過ぎでした。
冒頭部では ”あたし” という一人称だったのが "娘" という三人称に変わるんで、急にルポルタージュっぽくなるんですよね。
その後、心を閉ざしてしまった娘は家を飛び出してしまいます。
そんな娘にママは叫ぶのです。
ほんと、"NOKKO" には珍しい物語的でドラマティックな詞なんですよね。
印象的なフレーズがこれでもかって "てんこ盛り" なんです。
この曲のタイトルでもある "MOON" はサビの部分で連呼されるんですが、"MOON=ママ" というのが定説です。
そう考えると、このサビの歌詞は、「フレンズ」の冒頭部分と響き合う感じがしますね。
「OLIVE」1987.11
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
(アルバム『Poison』収録)
友だちの "OLIVE" との二人暮らしを歌った曲です。
"NOKKO" の歌詞には、時々、友だちが登場します。
死んでしまった友だちの「STEFANIE」という曲があったり、「ラブ パッション」ではオリビアという恋敵が登場したり、「CHEAP HIPPIES」では、早々に仕事を辞めて失業保険をもらってるスーという友だちが出てきたりと、皆、外国の名前なんです。(やっぱり主人公は『少女レベッカ』ってことなんでしょうね。)
この「OLIVE」は、せっかく二人暮らしを始めたのに、オリーブが彼氏を作って出ていっちゃう歌なんです。
そんなオリーブに対して、彼女はこう思うんです。
オリーブを心配してるようでいて、実は、残される自分が不安で仕方ない感じなんです。
「Super Girl」1989.5
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
(アルバム『BLOND SAURUS』からシングルカット)
活動休止前のアルバム『BLOND SAURUS』に収録されていた「Super Girl」は、みんなそれなりのスーパーガールなんだと、決して他人を救えるわけではないけどスーパーガールなんだと歌う曲です。
そして、この曲に出てくる「ママ」は、実は友だちのことなんです。
なんと、彼氏を作って出ていったオリーブが「ママ」になってます。(失業保険で暮らしてたスーは再就職してないみたいですが…)
ついに自分たちも「ママ」になる世代になったということを感じさせるのです。
と、レベッカの「ママ」が登場する曲を並べてみましたが、なんと、好きな曲ばかりでした!
でも、こうして順を追って見ると、娘も大人に近づいていってる感じですよね。
まだ庇護下にいる風の「フレンズ」から、秘密が増えていく「WHEN A WOMAN LOVES A MAN」、家から自立していく「MOON」や「OLIVE」に、いよいよママになることが近づいてきた「Super Girl」と、少女レベッカも成長してるんです。
■ ■ 「月」という言葉が出てくる歌たち ■ ■
「MOON」という曲では "MOON=ママ" が定説だと書きましたが、それは "NOKKO" の描く歌詞世界全般に言えることじゃないかと思ったりもするんです。
実は「月」が出てくる曲もけっこうあって、「MOON」はもちろん、「蒼ざめた時間」、「蜃気楼」、「RASPBERRY DREAM」、「Nervous But Glamorous」と5曲あるんです。
その中から「MOON」と発表時期の近い2曲を紹介します。
… さて、 "月=ママ" かどうか、どうぞお試しください!
「RASPBERRY DREAM」 1986.5
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
「Nervous But Glamorous」1987.11
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
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ということで、レベッカの「ママ」関連の曲を中心に紹介してきましたが、レベッカ自体は1991年に解散します。
その後、"NOKKO" はソロを中心に活動し「人魚」や「ライブがはねたら」などの楽曲をリリースしています。
レベッカとしても何度かの再結成ライブ(2017年は全国ツアーを開催)を行っています。
ちなみに、"NOKKO" 自身、2006年に長女を出産し、「ママ」となってるんですが、娘を持つ「ママ」になって歌詞世界に変化があったか、気になったりしませんか?
では、出産後の曲を見てみましょう。
まずは、2017年の全国ツアーに合わせてリリースされたレベッカのシングル「恋に堕ちたら」について…
「恋に堕ちたら」2017.11
作詞:NOKKO/作曲:土橋安騎夫/編曲:レベッカ
あれ、あんまり変わってない感じです。
若干、落ち着いた感はありますが、やはり成熟した恋の歌ではないですね 笑
まあ、レベッカは永遠に『少女レベッカ』ということなのかもしれません。
他に「ママ」目線の歌詞はないかと探してみたんですが、1曲だけ、ソロの方で「子供」たちに向けた曲がありました。
それが2018年にリリースした配信シングル「翼」です。
平昌オリンピックのテーマソングとして制作されたんで、まあ、こういう感じになるよな~ と、思いつつも、やっぱり「ママ」目線も感じる曲なので、最後に紹介しておきます。
「翼」2018.3
作詞:NOKKO/作曲:水野良樹/編曲:松任谷正隆
※テレビ東京系平昌オリンピックテーマ
(アーティストの歌詞世界 "note" )
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