夏の日の「銀河鉄道999」
お盆が過ぎると夏休みも終盤ですね。
私にはこの時期になると思い出す映画があって、それが劇場版「銀河鉄道999」なんです。
その理由というのは、この「銀河鉄道999」は、初めて一人で映画館に行って観た映画だからなんですよね。
多分、私と同世代の方にとって、初めて映画館に行った記憶は、親と一緒の「東映まんがまつり」や「東宝チャンピオンまつり」じゃないかと思います。
次に、子どもだけで観るようになるんですが、それが私の場合は小4の時の「スター・ウォーズ」なんです。
ただ、その時は受付まで母親と一緒で、中に一人で入って、終わって出てきたら母親が迎えに来てるって感じだったのです。
そして、小5の夏休み、ついに、初めて一人でバスに乗り映画を観に行ったのですが、それがこの映画だったわけです。
そんなささやかな冒険もあって、この「銀河鉄道999」は、私にとって、特別な記憶となってるのです。
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「銀河鉄道999-The Galaxy Express-」
※1979年8月4日公開
監督:りんたろう(監修:市川崑)
企画・原作・構成:松本零士
ご存知、松本零士さん原作アニメです。
主人公の少年:星野鉄郎が、謎の女性:メーテルとともに銀河鉄道999号に乗って星々を旅する物語です。
1979年8月に公開された劇場版「銀河鉄道999」なんですが、すごい人気でした。
「宇宙戦艦ヤマト」以降、その制作に関わった松本零士さんが注目され、かなりの松本ブームも来てたんですよね。
そのきっかけのひとつだったのが「銀河鉄道999」でした。
「銀河鉄道999」は、小学生の間でマンガもアニメも大人気で、少年キングで連載されていた原作マンガは1977年から1981年にわたって連載され、TV版アニメは1978年から1981年の足掛け2年半にわたり全113話が放映されました。
注目して欲しいのは、劇場版「銀河鉄道999」は、原作もTV版も途中の時点での公開だったことなんです。
■ 劇場版のスペシャリティ
◎旅の終わりまで描かれていたこと
原作も連載中だった時点での劇場版なんですが、この劇場版では終着駅まで描かれていたことが話題になりました。
その中で、物語の芯の部分にある「メーテルの謎」や「機械の身体をただでくれる惑星の謎」などが解き明かされていくわけなんで、かなり攻めた映画化だったのではと思います。
ゆっくり旅していく原作の雰囲気とは違って、なんかダイジェスト版のように急ぎ足ではあるんですが、それでも一つの映画として完結しているのです。
◎松本零士ワールドのオールスターキャスト
劇場版は、原作とは違う999世界に振り切って描かれていて、他の作品のメインキャラクターである ”キャプテン・ハーロック” や ”クイーン・エメラルダス” が鉄郎を助けて大活躍します!
特に、機械化母星における艦隊戦は壮絶にかっこ良いです!
鉄郎のために戦いに向かうハーロックの「男なら、危険をかえりみず、死ぬと分かっていても戦わなくてはならない時がある。負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある。」 というセリフに痺れました。(くぅ~!)
また、鉄郎の譲り受ける "戦士の銃" や帽子の持ち主だった ”トチロー” も生きてる姿で登場します。(TVアニメ版では写真のみ)
宇宙海賊キャプテン・ハーロックの駆るアルカディア号のメインコンピューターについて、マンガではハーロックの死んだ親友の人格を持っている設定なんですが、なんと、その経緯が、この「銀河鉄道999」で描かれているのです。
■ 機械の身体を通じた生命へのメッセージ
この劇場版「銀河鉄道999」の軸は、母の仇を討つ星野鉄郎の復讐譚となっています。
鉄郎は機械の身体を手に入れ、機械化人の中でも支配層に位置する機械伯爵に復讐しようとしているのです。
作品世界では、永遠の命を手にする機械の身体に出来るのは富裕層のみで、生身の身体の人間は社会の下層に位置しています。
そのため、生身の人間は機械化人から虐げられながら過ごしている設定なのですが、機械化人にもいろんな人物がいて、その交流の中で鉄郎の ”機械の身体” に対する心情も変化していくのです。
映画の中では "クレア" と "リューズ" という印象的な機械化人の女性が登場してきます。
999号でウェイトレスをしている "クレア" はクリスタルガラス製の身体を持つ機械化人なんですが、生身の身体を買い戻したいと思って働いているのです。
鉄郎に好意を寄せているんですが、最後は鉄郎をかばって犠牲になっていきます。
"リューズ" は機械伯爵の恋人なんですが、鉄郎の身の上を知ったことから、機械伯爵の手助けに逡巡し、結果、鉄郎の復讐の手助けをすることになるのです。
ただ、機械伯爵が倒された後は、自ら殉じていく健気な女性なのです。
途中で流れる "リューズ" の歌がしみるんですよね。
「やさしくしないで」
歌:かおりくみこ
作詞:中原葉子/作曲:中村泰士/編曲:青木望
酒場では、人間も機械化人も一緒に聴き入ってるんです。
そして、機械伯爵への復讐を果たした鉄郎は、大切な思いに気が付き、こう言います。
少年だった自分の心にも強く響いた言葉でした。
限りある命だからこそ… 大人になった今でも大事だと思うことです。
そんなことを教えてくれたのが、この映画だったのです。
■ ゴダイゴの歌と城達也のナレーション
さて、魅力的な登場人物や、物語の主題とともに、この映画を一際印象的にしているのが、ゴダイゴによる主題歌と城達也さんによるナレーションなんです。
◎オープニングから旅の始まり
物語の冒頭部分に城達也さんのナレーションが入ります。
ナレーションの後、地球を背景にタイトルがクレジットされるんですが、この画の美しいこと!
これから始まる物語にワクワクなのです。
そして、鉄郎とメーテルの出会いが描かれ、いよいよ999号に乗って旅立つのです。
「テイキング・オフ!」
作詞:奈良橋陽子・山川啓介
作曲:タケカワユキヒデ/編曲:ミッキー吉野
999号が発車するシーンでは、ゴダイゴの「テイキング・オフ!」が使われているんですが、旅立ちの場面にピッタリの歌詞なんですよね。
◎旅の終り~エンディング
さて、旅立ちの場面以上に印象的だったのがエンディングなんですよね。
映画館で観た人なんかは、このエンディングに泣かされたんじゃないかと思います。(←自分だろ)
あの、メーテルと鉄郎の別れの場面…
もう会えないことを鉄郎に告げ、キスをするメーテル…
「私はあなたの思い出の中だけにいる女」
「私はあなたの少年の日の心の中にいた、青春の幻影」
と言い残して列車に乗り込んでいくメーテル…
動き出す列車
一度は立ち止まるものの再び追いかける鉄郎…
走る鉄郎に気づいて窓を開けるメーテル
やがて、離れていく二人…
そして、城達也さんのナレーション…
飛び立っていく銀河鉄道999号の最後の汽笛の後に、ゴダイゴの主題歌が流れ始めます。(この一連の流れはほんと胸熱なんです!)
「銀河鉄道999」
作詞:奈良橋陽子・山川啓介
作曲:タケカワユキヒデ/編曲:ミッキー吉野
■ 天才アニメーターの仕事
最後に、エンドロールのスタッフを見ていると、原画に金田伊功さんの名前があることに気が付きます。
天才アニメーターと呼ばれ、爆発シーンなどのスペクタクルな炎や爆煙の動き、独特のディフォルメを伴う人物の動き(通称「金田パース」)など、その独自の感性とアイディアで、日本のアニメーションの質を大きく高めた人物と言われています。
その金田伊功さんが手がけたことで有名なシーンが、この劇場版「銀河鉄道999」のクライマックスにおける機械化母星の崩壊シーンです。
様々なフォロワーを生み、日本アニメ界に多大な影響を与えた金田伊功さんの仕事が見ることが出来るのも、この映画の醍醐味のひとつなのです。
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正直、まだまだ語りたいことがあるんですが、少年だった自分にとって、愛すべき作品だったことが伝われば幸いなのです。
この映画版には、2年後に公開された「さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅」という続編があります。
まあ、世の中のアニメブームは「機動戦士ガンダム」に移りゆく時代だったこともあるんですが、自分の中では続編は不要に感じました。
決して嫌いなわけではないんですが、この劇場版「銀河鉄道999」のエンディングが美しすぎて、あまり二人の再会は描いてほしくなかったんですよね… きっと。
さて、劇場版が公開された後も、TV版は続き、全113話が放映されました。
映画とは違って、原作に準拠した内容なんで、二人の旅の続きを見るのであれば、このTV版の方が相応しいと思ってました。
そのTV版の第1話を「東映」が公開してくれているので、興味のある方はご覧ください!
TV版「銀河鉄道999」 第1話:出発のバラード
https://www.youtube.com/watch?v=d0iwi6sZ5LE
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