アーティストが手がけた絵本の話
絵本って、見てるだけで楽しいんですよね~
もちろん「お話」の方も大事なんですが、”絵” 本ですから、やっぱり「絵」ですよね。
独特の色彩やタッチで描かれた絵や
とってもメルヘンな感じだったり
ちょっとマンガちっくだったり
時には、すごくクセが強いものや
異国を感じさせるものなど
ほんと個性的で、魅力的なんです!
そんなこんなで、意外と絵本好きな私だったりするんですが、子どものためと言いつつ、自分が欲しいから買った絵本もあったりするんですよね。w
そんな、自分の欲しかった絵本の中には、数は少ないんですが、いわゆる美術家さんが手がけたものがあります。
「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」2017
絵・文:アンディ・ウォーホル
例えば、60年代アメリカにおけるポップアートの中心人物だったアンディ・ウォーホルの絵本!
え、ウォーホルの絵本?!
もう、自分の子どもたちは中学生以上だったのに、思わず買っちゃいましたよ!
まあ、ウォーホルといえばイメージするシルクスクリーン作品ではなくて、絵柄のタッチとかを見ると、おそらく、アーティスト転向前の50年代の作品じゃないかと思います。
でも、アーティスト自身が手がけた絵本は希少なんで、ちょっと特別感があるんです。
本屋さんを探してみれば、美術家さんの絵が使われた絵本はそれなりにあったりするんですが、実際の美術家さんの絵を生かしながら、後から詩や文を組み合わせたものも多いんです。
「あいしてる」1999
絵:岡本太郎
文:舟崎克彦
日本を代表する美術家である岡本太郎さんの絵を生かしながら、文が付けられてる絵本です。
児童書とはいえ、けっこう絵の方は爆発してます!
大人が見ても芸術的な絵を、子どもがどう感じたのか、感想を聞くのが楽しい絵本なのです。(うちの子は怖かったみたいです。)
「Life Doesn't Frighten Me」1996
illustrations:Jean-Michel Basquiat
poem:Maya Angelou
洋書コーナーで見つけたジャン=ミシェル・バスキアの絵本です。
マヤ・アンジェロウという方の詩と、バスキアの絵を組み合わせたコラボ絵本みたいな感じです。
これは、もう子どもに関係なく、バスキア目当てで買っちゃった本ですね。
(調べていくと、この絵本の動画を発見しました)
美術家さんが手がけた絵本というと、こういう事後に編集されたものが多くて、アンディ・ウォーホルみたいに、本人が絵本制作に関わったものは、意外と少ないんです。
そういうこともあって、美術家さんが手がけた絵本を見つけると、やっぱ、すぐに買っちゃったりするんです。
ここから紹介する3冊は、思わず買っちゃった、国内の美術家さんが手がけた絵本なんですが、美術家さん自身も興味深い方々なのです。
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◎国内美術家さんが手がけた3冊の絵本
「ジャリおじさん」1994
絵・文:大竹伸朗
1冊目は1993年にリリースされた「ジャリおじさん」… もう、タイトルからして個性的だと思いませんか?
これは、現代アーティスト、大竹伸朗さんの絵本作品です。
大竹伸朗さんは、私が美術を勉強していた80年代の終わりには、すでに一線で活躍されていた、若きアーティストでした。
いろんなイメージを組み合わせていく作風で、当時はペインティングが中心だった印象です。
精力的に作品展も開催している中、絵本が出た時はビックリでした。
しかも、「ジャリおじさん」って、誰?… いや、何者?… 何で鼻からひげが生えてんの?… みたいな、謎だらけの絵本でした。
かなり奇妙な絵本なんですが、長男の時は、意外と興味を引いた絵本でした!(長女は受けつけませんでしたが…)
その後、この「ジャリおじさん」、ガチャにもなったりして、愛すべきキャラなんですよ。
「ともだちがほしかったこいぬ」1999
絵・文:奈良美智
さて、2冊目は、漫画ちっくなこどもの絵で有名な現代アーティスト、奈良美智さんの「ともだちがほしかったこいぬ」です。
もともと奈良美智さんの作品はキャラが立ってるので、絵本になっても違和感がないんですよね。
この絵本は、奈良さんが話題になり始めた頃の作品で、奈良さんのメインモチーフである「こいぬ」と「おんなのこ」が出会うという、まさに奈良美智ワールドが凝縮された作品なんです。
らしさ全開のこの本は、絵本としても完成度が高いのです。
「けばけば」2003
絵: 村上隆
文:北川悠仁
そして、3冊目は、日本のオタク文化を世界的な芸術へ昇華させた現代アーティスト、村上隆さんの「けばけば」です。
またたく間に世界的なアーティストになっていった感のある村上隆さんは、アニメやフィギュアなどのオタク・カルチャーを題材とした作品で有名です。
ルイ・ヴィトンのマルチカラーなどのコラボ商品と共に、様々なキャラクターも生み出していった村上隆さんなんですが、いろいろ物議を醸すことも多くて、話題に事欠かなかったですね~。
そんな村上隆さんの絵本は、文の方をゆずの北川悠仁さんが担当した豪華なコラボ作品でした。
色彩の妖精のような ”けばけば” が、自分の色を分け与えながら、周囲を幸せにしていくって物語なんですが、最後はちょっと切なくてですね~。
とってもいい絵本でした。
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いわゆる ”ファインアート” の現場で活躍する3人のアーティストさんの絵本を紹介しました。
こういう絵本って、本当に楽しいんですよね。
ただ、先ほど述べたように、絵本作家とイラストレーターや画家、美術家という線引きは、年々曖昧になってきてる感じがします。
最後に紹介したいのは、近年、私のお気に入りの junaida(ジュナイダ)さんという画家さんで、この方は、数々の装画も手がけていて、ファインアートとまでは言えないかもですが、素敵な絵を描く方なんです。
(以前、伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』って本のカバー画を描いていて記事にしたことがあります。)
非常に緻密な絵を描く方で、(自分のアカウント名どおり)私の好きな ”小さな世界” そのものって感じなんですよね。
何冊か絵本もあるのですが、その中でもお薦めなのは、2019年にリリースされた「の」って絵本です。
「の」2019
絵・文: junaida
「 わたし ”の” 」から始まって、「 お気に入りのコート ”の” 」と続いていくように、次々と ”の” でつながっていく世界が描かれていきます。
さて、どこまで続いていくのか、また、どんな世界を見せてくれるのか、ほんと楽しい絵本なのです。
多分、大人も楽しめる一冊だと思います。
自分の蔵書を中心に紹介させてもらいました。
きっと誰しも好きな絵本ってあると思うんですが、皆さんのお薦めがあれば、ぜひ教えてください。
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