文豪の物語を伊坂幸太郎が書くとこうなる(伊坂幸太郎マジック②)
何でしょう、これまでは、比較的コンスタントに新作を発表してくれていた伊坂幸太郎さんなのですが、昨年4月の『逆ソクラテス』以来、新作の話が聞こえてこないのです💦
ちょっと幸太郎不足を感じてきたため、再読でもしようかと思って手に取ったのは『バイバイ、ブラックバード』でした。
星野一彦の最後の願いは、何者かに〈あのバス〉で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。
そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気「上品」──これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。
ふたりのなんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー 。
まあ、伊坂幸太郎さんのキャリア前半の作品は、けっこう再読してるし、この本は、最近、本屋で新装版(貼ってあるのは新装版です。)を見かけて、もしや続編!みたいに勘違いしたからなのですが……
続編と勘違いしたのも仕方ないと思うんですよね。
この『バイバイ、ブラックバード』は終わり方が、ちょっとスッキリしないんですよね。
あらすじにあるように、物語は5人の恋人に「グッド・バイ」していく様子が各章で描かれるのですが、いつもの伊坂さんのように、複雑な構成ではなく、伏線も控えめなこの作品は、とにかく読みやすいので、スイ~っと読んでしまえます。
まあ、主人公は5股をかけてるわけなのですが、能天気で打算のない人物なので、あまり嫌味なく、フィクションとして楽しめると思います。
10年ぶりぐらいの再読だったのですが、やっぱり、スイ~っと...
読みやすいし、面白かったのです。
ただ、難しい話でなくとも、謎はあって
なぜ、主人公は<あのバス>で連れていかれるのか?
主人公を連れていこうとする組織とは?
監視役の粗暴な大女、繭美とは?
などなど、謎は謎のままの部分が、けっこうあったりするんですよね。
終わり方がスッキリしないと書きましたが、再読してみても、新しい解釈を発見するわけでもなく、やっぱりスッキリしないのは同じでしたw
でも、おかげで、幸太郎不足は、ちょっと解消されたのでした!
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実は、この作品には元ネタがあって、あの太宰治の『グッド・バイ』を踏襲した構成になっているのです。
『グッド・バイ』は『バイバイ、ブラックバード』と物語の構図は同じで、主人公が愛人たちに「グッド・バイ」していく物語なのです。
『バイバイ、ブラックバード』では、ちゃんと全員にお別れできるのですが、『グッド・バイ』は序盤で未完となったままなので、結末は無いんです。
なので、『バイバイ、ブラックバード』は、伊坂流の『グッド・バイ』でもあるんですよね。
でも、太宰治は、こんな物語は書かないよな~、いや書けないよな~なんて思ったりもしたのでした。
※ 太宰治の『グッド・バイ』が気になった人はこちら
→ <青空文庫>
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