イケメン彼女~遠征編前編~
「一年生も二人、ついて行っていいって!」
そう、先輩が参加する遠征についていく権利がかかった今世紀最大のじゃんけん(大会)があったのだ。
そんな貴重なじゃんけん(大会)であったが、なんの変哲もない講義が終わって人がわんさか通る、なんとも適当な環境の中で行われた。
あんまり気合を入れすぎるのを見られても恥ずかしかったので、顔だけは平常心を保ちながら出した手は、見事その権利を勝ち取った。
それだけではない。
「ホテルの部屋割り、決めるね~」
部屋…
そうか、部屋も、一緒になれるカモシレナイ。
いや、でもそこまではさすがに…ねぇ?(笑)
正直、期待して離れてショックを受ける方が嫌だったので、心の底からこのことは考えないでおこう、と思っていた。
しかし、神様と言うのは本当に存在するのだろう。
そう確信せざるを得ないほど驚いた。
なんと先輩と部屋が一緒になったのだ。
心の中でおたけびを上げた←
このあと死ぬんじゃないかっていうくらい、運を使い切ったような気がする…
ホテルに着き同じ部屋の別の先輩と先に部屋に入り、荷物の整理をした。
先輩はバイトがあるから、あとから来るらしい。
実はこの同じ部屋の先輩もすごくいいキャラをしていて大好きだった。
うるさく騒いだりするわけではなく、気遣いも抜群にできて、それでいて頭の良さから来るセンスの塊で、ものすごくユーモアがあって…話をしていて本当に楽しかった。
お風呂に入って先輩が来るまでの間、その面白い先輩と話をしていると、胸の大きさとかそういう話になった。
私は様々な経験から、自分には恋愛感情で人から好かれる魅力は一切ないと、本気でそう思っていた。
その壁は今でもまだ残っているほどで、かなり大きなものだった。
しかし、この時の先輩はなぜだかわからないけど、(もしかしたらいやらしい意味だったかもしれないけれど(笑))、私のことを、女の子らしくてかわいい、一年生でかわいいとすごく褒めてくれて、それが私にとってすごく心地よかったのである。
女の子らしくてかわいいなんて、自分で思ったことはなかったと思う。
いや、思わないように、期待しないようにしていたのかもしれない。
でも、ユーモアあふれる先輩が、何気なく、でも本心で言ってくれる言葉は、素直に嬉しかった。
私も誰かにかわいいとか思われてるんだって、トラウマが少し拭われた気がした。
胸の話が面白くなってきて、触ってみますか?と言ってみた。
「え!!いいの!?」
先輩、めっちゃうれしそうだったの、覚えてる(笑)
「いいですよ全然!」
何だろう…そういうことをしたいという気持ちは正直全くなかった。
ただ、この先輩がくれた嬉しい言葉の数々に、本心で応えたかった。
服の上からであったが、挨拶をして?両胸にそっと手を当てられた。
性的ものは何も感じず、こんな自分をかわいいと言ってくれる先輩の期待に応えられているという事実に、嬉しい気持ちでいっぱいだった。
おおぅ…と限界オタクのような声を出しながら、先輩は手を離した。
こういう所も、気が遣える先輩だから、わざとしたのだと思う。
先輩は、しばらく私の胸の感触に感動して?悦っていた。
変態的な欲がゼロのまま、私はただその空間にいることが楽しかった。
そうこうしているうちに先輩がバイトから帰ってきた。
「なにしてたの~?(笑)」
先輩は何をしていたか知らないのにばれた気がして、へへっと笑ってしまった。
隣を見るとさっきまで悦っていた先輩がもじもじしていた。
なんかこの空間、好きだわ(笑)
自分は一番後輩で、なんの責任もない。
先輩はみんなよくできた人で、一年生ってだけでなんでも許してくれる。
じゃんけん大会で権利を勝ち取ったものの、なんの力にもなれていなかったと思うが、それでもそんな私を咎めることはせずに興味を持っていろんな話をしてくれた。
バイトから帰ってきた先輩は疲れているからか、部屋のお風呂でいいやと言いながら、早々とお風呂場に入っていった。
脱いだ服を外に出すときにちらりと見えた腕があまりにもきれいで、思わずちょっと背を反らせて中を見ようとしてしまった当時の自分が恥ずかしい。
先輩がお風呂から上がって、誰がどのベッドにするか決めた。
ぼふっとふとんにダイブした先輩を見て、嬉しくなった。
電気を消してからも、先輩同士でしゃべっている内容が面白すぎて、気づいたら笑っていた。
布団の暖かさ、先輩が作ってくれた空間の居心地の良さも相まって、気が付くと眠りについていた。
明日は試合。
先輩、勝てたらいいのにな。
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