夏からの時間旅行(3)
読書は、旅をすることに似ている。作者の目や手を通して紡がれる、よく考えられた世界を、思考を頼りに巡り歩く。最初のページをめくってから、奥書をあとに本を閉じるまでの、ひとときの非日常体験─
ハインライン→ウェルズと海外の時間旅行小説を堪能したあとは、日本の作品へ。
筒井康隆著の『時をかける少女』。そして、石山 透 著『続・時をかける少女』。タイトルを聞いて想起する作品が世代により別れるほどに、これまで数多映像化された“時かけ”。その原作小説と、続編である。なお、筒井の方は、角川つばさ文庫版。続編は、復刊ドットコムの再販版を手に取った。
オリジナル時かけ小説は、端々に心理学の類型論などを匂わせるような表現が散見され、改めて読み返すと少し恥ずかしさを覚える。けれど、これが連載されていた時代や、掲載誌のターゲットを思えば、そんなもの?と思ってみたり。なお、児童書レーベルのつばさ文庫刊のためか、時かけ以外にシュールで不思議な短編が数編(『時の女神』、『姉弟』、『きつね』)同時収録されており、それも含めて楽しめた。
続時かけは、最初のテレビドラマ版(『タイム・トラベラー』)の脚本を手掛けた作者のオリジナルストーリー。同タイトルドラマのノヴェライズ作品でもあるとか。作風がとてもファンタジックで、荒唐無稽とも言える自由な展開。主人公に与えられた任務が報われなかったり、最後が(打ち切りか?)とも思える巻きの終幕。結構衝撃。けれど、ベースが少年ドラマシリーズと思えば、アリか。1970年代の勢いを感じさせ、面白かった。
これでひとまず、今回の時間旅行物の読書の旅は終わる。ハインラインと続時かけは、出てくる未来の年が、いまや過去になってしまったことが感慨深い。描かれている風景の、現実とのギャップはさておき、ハインラインは明るい希望を。続時かけは、少し否定的?な描きかたをしているのが対照的だった。自分はハインラインに賛同。いろいろあっても、未来の時代が素敵であってほしいと想う。