自分たちの仕事を「みんなで楽しむツール」に変える。
藤井農園|大阪府羽曳野市
初めて感じた「楽しい!」っていう感覚。それが発想の原点。
うちの農園では、農業体験に力を入れていて、かれこれ9年くらい続けています。もともとはジャガイモの収穫体験から始めたんですが、最近はいろんな野菜を植えてそれを収穫してもらってるんですけど、単なる体験というよりも、ボランティアで“がっつりと働いてもらう”に近いです。
例えばトマトだと、ハウスで2500本くらい苗を植えるんですね。そういう「作業自体は誰でもできるけど人手がほしい」っていうときに集まってもらって、一気にやってしまうっていうやり方です。
参加してくれる人は普段できない作業が体験できるってことで、結構喜んで来てくれます。もちろん僕たちも助かりますしね。こういう体験企画を年間でだいたい10回くらいやってて、藤井農園の特徴のひとつになっています。
僕は大学を卒業してから8年間サラリーマンをしていて、その後実家を継ぐかたちで就農したんですけど、就農してからジャガイモ掘りをやった。これがね、土の中からコロコロ芋が出てきて「おぉ!宝探しみたいだ!!」って思って楽しかったんです。ところが掘っても掘っても終わらない状況になってくると、やっぱりしんどさとか大変さも出てくるんですね笑。
でも自分が最初に感じた“楽しい”っていう感覚も確かにある。それなら仕事として必死にやるんじゃなくて、遊びとしてやってもらったらどうなんだろう?それって意外と楽しんでもらえるんじゃないかな?って思ったんです。
誰かに楽しんでもらいながら、僕たちもジャガイモが掘りあがる。もしそれをイベントにしたら、それってお互いにとって結構良いんじゃないか??って思ってスタートしてみました。そしたら家族連れの方たちも来てくださって、僕たちも何日も時間をかけていた作業が一日で終わって!これはやってみて良かったと思いました。
他にも、慣れてくると仕事になってしまうけど、実は楽しいものってあると思うんです。例えば「初めてのトラクター」。
農業をやってなければ、そして更に広い面積の農地がなければ、トラクターに乗る機会ってなかなかないと思うんですね。だからそういうのに乗れるっていうのは結構ワクワクすると思うんです。
こうやって見てみると、仕事としてやっていると分からないけど、一般の人から見ると楽しめるものって実はあると思うんですよ。
そういう目で自分の仕事を見ていく。
僕の親も「こんなしんどいことをやりに、誰が集まるんって思ってたけど、みんな良く来てくれるなあ」とか言っていて笑、それは自分たちが“仕事としてやらなくてはならない”って思うからしんどいと思うんだけども、そうでない人から見ると、非日常だし、多少しんどくっても良い経験になるんじゃないかなっていうふうに思います。
そういうところから、いろんな企画を考えています。
僕たちの日常を、誰かの非日常に。デタラメに楽しむことを一緒に体験したい。
2021年に「じゃがいもフェス」っていうのを開催しました。通称じゃがフェスです。
農業体験の付加価値を高めたいなぁって思ったのがきっかけなんですけど、今僕が一番力を入れてやっていきたいと思っているもので、このとき「世界にひとつだけのデタラメなポテチをあなたと作りたい!」というクラウドファンディングもやりました。
どんなものかと言うと、消費者の方に畑に来てもらって土づくりをして、畝たてしてマルチを張って、芋を植えて、収穫する、というジャガイモを栽培する過程全体に関わってもらう。
そうやってつくったジャガイモで、自分たちのオリジナルポテトチップスをつくろう!っていう「栽培から製品化の流れそのものを体験イベントにしてしまう」っていうものです。
普通に芋を掘って持って帰るのも楽しいし良いんですけど、こうやって製品になるところまでを体験するっているのは、“もうひとつ先の価値”が生まれるんじゃないかなって思ったんですね。
全部で4日、畑に来てもらうプログラムなんですが、
1日目はみんなで畑に堆肥を撒く。トラクターにも乗ってもらって「畑を耕す」体験をしてもらいました。
2日目は畝たてです。肥料を撒いて、管理機で畝たてをして、マルチを張ります。3日目は芋を埋める、4日目は芋掘りです。
こうやって農作業をしてもらいながら毎回、普段できないような非日常体験をしてもらいました。
例えば、畑でバームクーヘンを焼いたり、コーヒーを手焙煎したり、焼き芋をしたりね!
作業に来た人たちに、どうしたら畑にいることを楽しんでもらえるかなっていうふうに考えています。
それと参加者の方に「やりきった!」と思ってもらえるようにしています。
僕たちとしても「今日の作業ではここまでやろう」っている目標もあるので、参加者さんの様子を見ながら手持無沙汰にならないように、作業が終わってそうだったら、次の依頼をしたりして「その一日頑張ったぞ!」っていう達成感を味わってもらえるよう、気を配ってます。
できあがったポテトチップスのパッケージには参加者さんの写真を入れたり、4日間の作業動画が見られるQRをつけていろんな人に見てもらえるようにしました。
参加してくれた人には良い思い出にもなるし、こんなふうにしてポテトチップスが出来上がったんだよってことが、いろんな人に見て、知ってもらえることを意識しました。
根っこは農への思いとチャレンジ精神。農家としての日々の積み重ねが、その先の道を拓く。
実を言うと、子どものころは農業が大嫌いでした笑。
自分がやりたいと思ってやってるんじゃなく、やらされてるっていう感じが強かった。それに嫌々やってるから作業もうまくできなくて、すぐ叱られるんですよ笑。だから農業はやりたくないなあってずっと思ってたんですけど、社会人になって仕事として見てみると、農業ってこれからすごく可能性があるんじゃないかなって思い始めたんです。
販売先も、元々は市場に出荷するのが普通だったけど、徐々に直売所やネット通販が出てきて、自分たちで値付けして自由に販売ができるようになってきた。そういう変化が面白いなって思って農業を見るようになりました。
あと、最近はコロナもあって開催できてないんですが、新規就農の人や、周りの年齢の近いイチジク農家の人たちと一緒に月1回ミーティングをしてました。1~2か月先の予定を共有しながら、手伝ってほしい、手伝えるよっていうふうに労働力や農機具、ノウハウを共有して、グループとして協力しながら成長していけたら良いなという感じですね。
あとはイチジクの栽培法の勉強会。元々大阪府の普及員をされた方がいて、イチジクの栽培にすごく詳しい方なんですけど、その方にお願いして教えていただいてます。実際に畑で、今の時期はこういうことに気をつけないといけないとか、木を見ながら「こういう問題があるな」っていうことを教えてもらったりします。
農作業体験で農園に人が来てくださるのは、それだけで十分ありがたいし助かるので、今まで通りやっていこうと思ってます。
ただ、じゃがフェスをやって思ったことはがあって、実は来てくれた人がうちの野菜をもっと買ってくれるかなと思ったんですけど、主力のイチジクの販売にはあまりつながらなかったんですね笑。なので、今後イチジクの体験ももっと考えていきたいなと思っています。
最近はホームページとかインスタを見て体験に来てくださる方も増えました。新規で来られる方は特にそうですね。
リピート率は7~8割くらいです。
農体験を通して非日常を味わうこと、自分たちだけでは作れないものが製品として出来上がる体験をするっていうことは、とても面白いと感じますし、また畑に来たい、体験したいと思って農園足を運んでもらうことが重なっていく「機会」を、これからも考えていきたいと思います。
援農インフォメーション
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