【architecture】料理好きな人
アメリカ・ロサンゼルスにワッツタワー(Watts Tower)という奇妙な塔がある
私も実物は見たことがないので参考のHPから見て頂きたい
この塔は1921年から1954年までの33年間をかけてつくられた
つくったのは建設作業員であるサイモン・ロディアという男ひとりである
彼は自宅と仕事場の往復の過程で拾った鉄や石、煉瓦や小さなガラス片を集めては少しずつ手の届く範囲から積み上げていった
このワッツタワーには用途もなければ、なんの機能もない
サイモン・ロディアの作りたいという欲求の赴くままにつくりあげたものだ
設計図もなければ完成図もない
完成しているのか否かもわからない
そして33年間かけて作り続けたサイモン・ロディアは突如姿を消してしまったそうだ
このタワーが完成しているのかいないのかは彼のみぞ知るが、彼からしてもどうでも良かったのかもしれない
彼にとって、ワッツタワーはつくる喜びそのものだったのではないだろうか
人からどのように評価されるかとか、人に喜んでもらいたいという気持ちでつくったわけではないはずだ
ここからの話は私の個人的な意見なので偏見たっぷりである
ご承知願いたい
『料理好きな人』と豪語する人は2種類に分けられると思っている
ひとつは料理をすることよりも、自分が振る舞った料理を召し上がってもらい、美味しいと言ってもらったり、楽しんでもらうことで喜びを感じる人
ふたつ目は、料理をすること自体が好きで、料理をしている時間や食材を選んでいるときが好きだという人
どちらが正解とかではない
でも私は本来は料理好きな人は後者の事を言うのではないかと思う
なぜか…
前者は自分の喜びの根源が他者に委ねられている事
他者の反応次第で料理が好きになることもあれば嫌いになることもある
また自分の喜びを他人に委ねることは、喜んでくれない他者に責任をなすりつけがちのように感じる(個人的な意見)
一方後者は他人にどう言われようが料理をする事を楽しんでいるのだ
それだけで満足であり、食べてもらう相手によって気分は変わらない
たとえ喜ばれなかったとしても、その原因を自分の中から探し出し改善しようとするように思う
そもそも作り手が好きでもないものを出されるのは嫌だ
私の好みではないのだけど、こんなのどう?と言われたらあまり良い気がしない
私は建築をつくるのも建築について考えるのも好きだ
だからこの仕事をしているし、noteでも建築を知ってもらいたいと思っている
ワッツタワーのサイモン・ロディアではないが、単につくりたいという気持ちだけで出来た建築があっても良いのではないだろうか…
建築が好きだから建築家になりたい
文章を書くのが好きだからnoteを書く
好きなことは結果的に人に影響を与える
ワッツタワーのようが、機能も用途もないものであっても現在でも人々に影響を与えているように
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